ウナギのDNAから作るぬるぬるスライムで未来の新素材を技術に開発
ウナギといえばかば焼きやうな丼などにして食べたい夏の風物詩ですが、「ヌタウナギ」が体から放出する粘液(スライム)は、クモの糸のように繊維として素晴らしいポテンシャルを秘めている、として一部から注目を浴びています。
DNA From This Ugly Fish Is Being Used to Synthesize Bulletproof Slime | Motherboard
http://motherboard.vice.com/read/dna-from-this-ugly-fish-is-being-used-to-synthesize-bulletproof-slime
海外では「スライムウナギ」とも呼ばれるヌタウナギですが、これが体内で作り出すスライムは、生分解性プラスチックや、現在のものよりもはるかに軽量な防弾衣類を作り出すことができるかもしれない、として大きな注目を浴びています。ヌタウナギには頭骨がありますが脊椎骨はなく、科学者の間ではこれを脊椎動物に分類すべきなのかどうかで議論が分かれるくらいにあやふやな生物です。そんなヌタウナギは約3億年前から生きている生物で、「生きた化石」と呼ばれる生物の一体でもあります。
ヌタウナギとコレが体内から放出するスライムがどんなものなのかは以下のムービーを見れば分かります。
Hagfish Slime - YouTube
これがヌタウナギ。目が退化して皮膚に埋もれてしまっているので外見は目がないように見えます。
水の一部が白く濁っていますが、これがヌタウナギの放出するスライムです。体の側面に放出孔が無数に並んでいる、とのこと。
これを手でつかむと……
危険を察知してスライムを噴出。まだ水中の映像なのでわかりにくいですが、ヌタウナギの体の周りをよくよく見てみると透明の液体のようなものに覆われていることが分かります。
そして水から引き上げると手にはスライムがべっとり。
ムービーはスローモーションで再生されているわけではなく、手についている透明の液体のようなものはすべてぬるぬるのスライムです。
今度はスライム部分だけをつかもうと頑張っています。
スライムが伸び~る。
これがヌタウナギの放出するスライム。かなりの粘度であろうことがムービーからもよく伝わってきます。
さらに、ヌタウナギがこのスライムを使って外敵を撃退している様子が以下の記事から見られます。
ぬるぬるの粘液スライム攻撃で深海魚ヌタウナギがサメを撃退するムービー - GIGAZINE
ヌタウナギが危険を察知すると体側に放出するスライムには、人間の髪の毛の100倍以上も細い小さな繊維が含まれており、この繊維は同サイズのナイロン繊維やケブラー繊維よりも丈夫です。また、ヌタウナギの放出するスライムに含まれる繊維は、クモの糸とよく似た特性を複数もっており、さらには遺伝学的に見ればクモの糸よりも非常にシンプルなので、DNAからこの繊維を合成するのはクモの糸を生成するよりもはるかに簡単なようです。
ヌタウナギのDNAをバクテリアに注入し、ヌタウナギの繊維を生産させる研究を行っているBenthic LabsのRussel Banta氏は、「ヌタウナギが地球に現れてから3億年の年月がありながら、ヌタウナギはこれまでに大きな変化をしていません。我々はこれは進化が止まったからであると考えています。そして、すでに進化が止まっている故か、バクテリアからクモの糸を採取するよりも、ヌタウナギのスライムに含まれる繊維を採取する方がはるかに楽です」と語ります。
Banta氏たちの研究では、まずヌタウナギのタンパク質(スライムの原料)に関するDNAを抽出。これをプラスミドに入れて、さらにバクテリアの中にこの溶液を投入します。すると、バクテリアがヌタウナギの生成するスライムに入っている繊維の一部を生成してくれる、というわけです。Banta氏は同じような方法でクモの糸をバクテリアに生産させようとしたわけですが、これはうまくいかず、その原因が「クモのDNAの複雑さ」にあるのでは、と考えているそうです。
ヌタウナギのスライムのポテンシャルを見初めたのはBanta氏ではありません。2014年の初めにNature Communicationsにて公開された論文で、とある研究者がヌタウナギの体内でスライムがどうやって生成されているかを発表しました。この論文を見た際のことを、「この論文は研究所内でヌタウナギのスライムに含まれる繊維を作り出すための重要なブレイクスルーになった」とBanta氏は語っています。
なお、バクテリアが生成するのはヌタウナギの放出するスライムの中にある繊維の一部で、Benthic Labsでは繊維を再現するために必要なその他の物質の調査が進められている、とのことです。
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