サイエンス

老化を司るのは視床下部神経幹細胞、老化を早めたり遅くすることに成功

By jesse orrico

生物の老化を司る脳細胞を発見した興味深い論文が公表されています。

Brain Cells Found to Control Aging | Albert Einstein College of Medicine
http://www.einstein.yu.edu/news/releases/1259/brain-cells-found-to-control-aging/

Brain cells found to control aging -- ScienceDaily
https://www.sciencedaily.com/releases/2017/07/170726132107.htm


視床下部は、成長・発達・再生および代謝を含む人体にとって重要な要素を調節する部位として知られています。2013年、アルベルト・アインシュタイン医学校の研究者たちは学術誌のNature上で、視床下部が体全体の老化を調節するという驚くべき発見を発表しました。そして新たに、アルベルト・アインシュタイン医学校の科学者たちは視床下部のどの細胞が老化をコントロールしているのかを発見しました。新しい研究結果によると、老化を制御しているのは新しい脳のニューロンを形成することで知られている成人の神経幹細胞の小さな集団です。

「我々の研究結果から、視床下部の神経幹細胞の数は、動物の一生の中で自然に減少していくことがわかっているのですが、この減少こそが老化を加速させていることがわかりました」「また、この減少現象は不可逆ではないことも発見しています。この現象は幹細胞または幹細胞が生成する分子を補充することで、身体全体で起きるさまざまな老化現象を遅くしたり逆転させたりすることが可能です」と語るのは、アルベルト・アインシュタイン医学校で分子薬理学の教授を務めるDongsheng Cai博士。


視床下部の神経幹細胞と老化の関係について研究を進めている科学者たちは、健康なマウスの幹細胞の数の変化を調査しました。視床下部神経幹細胞の数は、マウスが生まれて10か月の時点で減少しはじめており、これはマウスにおける老化の兆候が現れ始める数か月前の時期だそうです。さらに、「マウスが2歳くらいになり老化を始めると、視床下部神経幹細胞のほとんどがなくなってしまいます」とCai博士は語っています。

次に、研究者たちは視床下部神経幹細胞の進行性喪失が実際に老化を引き起こしているのかどうかを調べるために、中年のマウスで視床下部神経幹細胞を破壊するという実験を行っています。この実験の結果についてCai博士は、「視床下部神経幹細胞の破壊により、比較対象の健全なマウスと比べ、被験体となったマウスの老化は大幅に加速し、通常よりも早く死んでしまった」と語ります。

さらに、研究者たちは視床下部神経幹細胞を追加する実験を行っています。実験では、中年の視床下部神経幹細胞が破壊されてしまったマウスの脳に、視床下部神経幹細胞を新しく注入しており、その結果、老化が遅くなるもしくは逆転、つまりは若返るという効果が確認されています。

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Cai博士は視床下部神経幹細胞がmiRNAと呼ばれる分子を放出することで抗老化作用を発揮すると考えています。miRNAはタンパク質合成に関与しているわけではありませんが、代わりに遺伝子発現の調節において重要な役割を果たすとのこと。miRNAはエキソソームと呼ばれる小さな粒子の中にパッケージングされており、視床下部神経幹細胞はマウスの脳脊髄液に放出されます。

研究者たちは視床下部神経幹細胞からmiRNA含有エキソソームを抽出し、視床下部神経幹細胞が破壊されてしまった中年のマウスと健康な中年のマウスの両方に脳脊髄液を注入しました。この処置は動物の筋肉の持久力、協調、社会的行動および認知能力の変化などの指標からみても老化を有意に遅らせることに成功していたそうです。

研究者たちはmiRNAの中のどういった要素が老化を遅らせる働きをしているのかを調査しています。

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in サイエンス,   生き物, Posted by logu_ii

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