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宇宙から無限に金属鉱物を得る「アステロイドマイニング」とは?


我々のPCやスマートフォンに必要な「レアメタル」を産出する鉱業は大気汚染や水質汚染などの多大な被害をもたらしています。そんな鉱業に置き換わると考えられる、小惑星(アステロイド)からレアメタルを抽出する「アステロイドマイニング」について、科学系YouTubeチャンネルのKurzgesagtがアニメーションムービーで解説しています。

Unlimited Resources From Space – Asteroid Mining - YouTube


過去数十年で、PCやスマートフォンは人類にとって最も影響力のある存在となりました。


そんなPCやスマートフォンには、テルビウムネオジムタンタルといったレアメタルが使われています。


しかし、レアメタルを産出する鉱業は、大気汚染や水質汚染を招き、景観を破壊するというだけでなく、シアン化物や硫酸などの危険な化学物質を排出し、生物多様性や労働者にも害を与えます。


さらに、レアメタルなどの資源は輸出規制などによって「政治的な取引材料」として扱われるという問題もあります。


そんな地球上における鉱業問題の解決策こそが、宇宙に多数存在するアステロイドを採掘するという「アステロイドマイニング」です。


アステロイドの大きさは、最小で1メートルほどですが、スイスがすっぽりと入るほどの面積を誇るベスタのように巨大なものも存在します。


ほとんどのアステロイドは、メインベルトエッジワース・カイパーベルト木星のトロヤ群などのアステロイドベルトを構成しており、その他のアステロイドは惑星を周回しています。


このアステロイドに内在する資源について、宇宙開発の発展とともに注目が集まっています。


これは、比較的小さなアステロイドでもプラチナのような高価な金属を含んでいる場合があることが理由です。


火星と木星の間を公転しているプシケに至っては、鉄・ニッケル・金・プラチナなど、世界の産業が長年にわたって欲している金属を豊富に含んでおり、プシケが含む金属の総価格は数千兆ドル(およそ数十円)に達すると目されています。


しかし、アステロイド中に高価な金属が豊富に存在したとしても、莫大な採掘費用がかかってしまうならば地球上の鉱業と置き換えることはできません。


アステロイドマイニングでは、人類にとって有用な鉱物資源を含んでいるアステロイドを地球のそばまで移動させてからバラバラにしてから各資源を得ます。しかし、この手法には技術的課題が多数残されています。


課題の1つは、宇宙空間の移動にかかるコストです。1kgの物体を低軌道に飛ばすのにかかる燃料費だけでも数千ドル(およそ数十万円)と、宇宙に行くコストは大変高額で、アステロイドマイニングの実現にはスペーストラベルのコストを下げる必要があります。


スペーストラベルのコストを下げる方法として有望視されているのが、化学燃料を使うロケットエンジンに代わる、電気エネルギーを用いる電気推進です。電気推進技術はすでに実用化されており、JAXAの小惑星探査機「はやぶさ2」はイオンエンジンを搭載しています。


電気推進は宇宙に到達できるほどの出力はありませんが、宇宙空間に到達してからは低コストの燃料で長距離を移動できるという特性があるため、アステロイドマイニングにおける課題のひとつを解決することが可能です。


すでにアステロイドから資源のサンプルを採るというプロジェクトは行われているため、人類にとって都合の良い「地球に近い」「有用な鉱物資源を豊富に含んでいる」「サイズが適切」という条件を満たすアステロイドを見定めることは可能です。


目標のアステロイドに接近した宇宙採掘船が最初に行わなくてはならないのが、「アステロイドの自転を止める」ということ。アステロイドが自転していると輸送に影響が出るため、レーザーで一部を蒸発させて力学的エネルギーを与えるか、スラスターで固定して自転を止める必要があります。


アステロイドの自転を止めた後は、地球の軌道に戻りやすい位置に達するまで待機します。


地球の軌道に戻る際には、「月の重力」が重要。月の近傍を通過すれば月の重力を活用して、コストなしで軌道を大きく変化させることが可能です。


地球の近傍まで達してから、アステロイドをバラバラにする作業に入ります。宇宙空間における採掘は、巨大な鏡によって集められた太陽光で岩石を過熱し、岩石部分をグラインダーで砂利とちりに変えるというもので、地球の採掘とは全く異なります。


岩石部分から抽出した金属資源は、再利用可能なロケットなどを使うか、宇宙採掘船に搭載された3Dプリンターで金属資源をカプセルで覆って地球に直接投下するという手法で地球に輸送します。


アステロイドマイニングは、太陽系の植民地化の最初の1歩といえる行為です。


我々のインフラが拡大し、経験が積み重なるにつれてアステロイドマイニングの技術は洗練されると考えられます。技術革新が進んだ場合には、「アステロイド上に建設した工場でロケットと燃料を生産し、採掘した金属資源を地球に送る」ということすら可能になるかもしれません。


ひとたびアステロイドマイニングを実行できれば地球上で貴重な鉱物資源を多量に得られるため、技術革新が進みます。そのため、アステロイドマイニングは初回よりも2回目のコストがガクッと下がり、3回目のコストはさらに下がるという、好循環が続くと予想されます。


そうやってアステロイドマイニングのコストが下がり続ければ、地球での採掘を完全にやめられる可能性があります。将来的に、地球での採掘は囲炉裏(いろり)のように、普段は見かけることのできない時代錯誤な存在になるのかもしれません。

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in 動画, Posted by darkhorse_log

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