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太陽をぐるりと取り囲み全エネルギーを回収する構造体「ダイソン球」の作り方

by Kevin Gill

恒星からエネルギーを効率的に取得するために恒星全体をぐるりと構造物で取り囲んでエネルギーを獲得する「Dyson sphere(ダイソン球)」という壮大な構造物が宇宙物理学者のフリーマン・ダイソン氏によって提唱されました。では、ダイソン球を実際に作るにはどうすればよいのか?という素朴な疑問を、科学に関するアニメーションを手掛けるYouTubeチャンネル「Kurzgesagt」が解説しています。

How to Build a Dyson Sphere - The Ultimate Megastructure - YouTube


人間の歴史はエネルギー消費の歴史です。最初は筋肉を動かすところから始め……


火を使うことを覚えました。


その後、石炭、石油と化石燃料の消費が続き……


原子力発電が登場。


こうして再生可能エネルギーの活用が活発化し、核融合の実用化を目指すところまできました。


運が良ければ地球を壊すことなく資源を完璧に使うことで、人類は進歩できるかもしれません。


その次のステージは、地球の外にエネルギーを求めることになりそうです。


幸いなことに、太陽系には太陽という無限のエネルギー源があります。


太陽のエネルギーは効率的な原子力発電所の10京倍というとてつもない量です。


太陽は1秒間に核爆弾の1兆倍というエネルギーを放出することで輝いています。


この太陽エネルギーをどうやってゲットするのか?、それも一部ではなくすべてのエネルギーを獲得する方法はないのでしょうか?


その一つの答えが、太陽全体を取り囲んでエネルギーを取り出す「ダイソン球」です。


ダイソン球の発明は、かつて人類が火を使えるようになったことに匹敵する大いなる飛躍です。


ダイソン球によって、惑星内にとどまる生命は惑星間の生命へと飛躍することができます。


では、ダイソン球とはどのような形状をとるのでしょうか?


卵の殻のように固い構造体は、衝撃に対してもろくならざるを得ません。


衝撃で崩壊すれば、太陽に飲み込まれてしまい機能を果たしません。


そこで、太陽を取り囲むように漂う群れのような構造(衛星)が適格です。


太陽をあらゆる方向から取り囲む衛星の群れは、物理的に強いため適しているだけでなく、作りやすさという点でも人間に都合の良いものです。


しかし、太陽は地球に比べてはるかに大きな天体なので、その周りを取り囲むダイソン球の構築はとてつもなく壮大なスケールになります。


仮に、1キロメートル四方のサイズの衛星を使うならば、太陽の周りには3京機も必要という計算になります。


3京機の衛星を作るには、30京トンもの金属が必要です。


衛星を組み立てて太陽の周りに配置するには、それらを恒久的に作り続けるインフラを最初に宇宙空間に構築する必要があります。


この壮大なチャレンジに要求されるのは「材料」「設計」「エネルギー」の3要素です。


まずは「材料」の問題。宇宙で材料を調達して機械を組み立てるには「水星」が最適です。水星は太陽から比較的近く、金属が豊富に含まれた星だからです。


さらに、水星には大気がなく、重力も地球の3分の1と小さいため、作り出した衛星を太陽の周りに送り込むため打ち出しやすいという利点もあります。


次に「設計」の問題。衛星の群れはシンプルであればあるほど望ましいものです。


伝統的な太陽光パネルは複雑すぎる上に、寿命も短すぎます。


ダイソン球の衛星にはシンプルで修理する必要のない構造が求められます。宇宙レベルで長期間使え、さらに製造費用も小さいものという難しい条件をクリアする必要があります。


それらは「鏡」のような構造になる可能性が高そうです。


ダイソン球の衛星は、太陽を取り囲んでエネルギーを中心地に集めるような構造になるとのこと。


そして、材料を手に入れ設計も終われば、衛星を実際に製造し太陽に送り込むための「エネルギー」をどう調達するかという問題が残されます。


仮に、地球上の化石燃料やウランなどの核燃料をすべて費やしたとしても、せいぜいエベレストサイズの山を打ち出すことしかできません。


ダイソン球を作り出すには、ダイソン球から得られるくらいのエネルギーが必要だという「卵が先か鶏が先か」というような問題が横たわっています。


しかし、この問題は解決可能。なぜなら材料となる水星にも太陽光はさんさんと降り注ぎ、エネルギーを得ることができるから。


水星は人間にとって生活するのは難しい環境なので、機械を送り込んでできる限り自動で製造する仕組みを導入する必要がありそうです。


製造するべきは「太陽光収集機」「資源掘削機」「組立機」「打上機」の4種類。


太陽光収集機は1km四方のサイズで作られた後、打ち上げて結合し……


水星上の資源掘削機にエネルギーを送信。


このエネルギーで水星の地表を掘削して、次々と資源を取り出します。


組立機は掘削された資源からダイソン球となる衛星を製造します。


作り上げられた衛星をロケットで打ち上げるには、コストがかかりすぎ。


そこで、レールガンのような磁力を活用した打上機によって、衛星は次々と宇宙空間へと打ち出されることになるはずです。


レールガンで打ち出された細長い衛星は折り紙形状になっています。


その後、傘を広げるように宇宙で広がり、太陽のエネルギーを集めることができるように変形します。


衛星が打ち出され始めると、衛星によって作り出したエネルギーを活用できるようになるため、衛星の製造から打ち上げまでの速度は指数関数的に高まっていきます。


「1枚の衛星がもう1枚の衛星を作る」というような倍々ゲームが起こり始めると……


1サイクルごとに衛星の数は一気に増加。


60サイクル経過後には、太陽の周りを取り囲むダイソン球として要求される数の衛星がそろいます。


太陽エネルギーのたった1%であっても、人類が太陽系で行うすべてのプロジェクトのエネルギーを賄えるようになります。


すると、他の惑星を植民地として開発することも可能に。


他の惑星へ移動したり、巨大な構造物を建築したりできるようになります。


ついに、惑星を股にかける文明が誕生することになります。


ダイソン球は、惑星間に文明を広げる決定的な原動力になるというわけです。


広大な銀河系には、すでにダイソン球を実現した文明があるかもしれません。


地球はこの領域に達するまでには程遠い場所にあると言わざるを得ません。


なぜなら、人類は地球内の資源という目先の利益を争っている状況だから。


人類が自分たちで生み出した「長期的に見ればまったく重要ではない衝突」を生き延びて、もしかすると宇宙ではじめてダイソン球を作り出して活動領域を広げる存在になれるかどうかは、ひとえに「想像力」にかかっているのかもしれません。

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in サイエンス,   動画, Posted by darkhorse_log

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