43連勝の記録を持つ「じゃんけんプロ」が語る「運に頼らずに勝つ方法」とは?
「じゃんけん」は道具を用意する必要がない上に短時間で決着が付くため、「給食で余ったプリンをゲットできる人を決める」といった、勝ち負けを決める際の簡便な手段として広く用いられています。そんなじゃんけんを追求し、世界大会まで開催している「World Rock Paper Scissors Association(世界じゃんけん協会、WRPSA)」のワイアット・ボールドウィン会長が、じゃんけんに賭ける愛情と「運に頼らずに勝つ方法」について語っています。
The best rock-paper-scissors players know how to win without luck
https://www.inverse.com/mind-body/rock-paper-scissors-not-sports
2015年に設立されたWRPSAは、じゃんけんを競技レベルでプレイするための協会です。同協会はじゃんけんが魅力的な理由として、「年齢制限が存在しない」「ウェイトトレーニングが必要ない」「生まれつきの才能に左右されない」「事前準備が要らない」「試合終了後の後始末が要らない」「年齢や性別に結果が左右されない」といった点を挙げて、じゃんけんの持つ公平性や利便性などを強調しています。
そんなWRPSAを設立したボールドウィン会長は、43連勝という記録を持つ筋金入りのじゃんけんマニア。同協会を運営する傍らに、古今東西のじゃんけんのルールや戦略について網羅した「The Rock Paper Scissors Handbook(じゃんけん公式ハンドブック)」や、擬人化された石・紙・ハサミの友情を描いたじゃんけん学習用絵本「The Rock Paper Scissors Story(じゃんけん物語)」を出版するなど、じゃんけんの普及に精力的に取り組んできた人物です。
ボールドウィン氏は「競争できるものはスポーツであるため、じゃんけんはスポーツです」と言い切ります。そんなボールドウィン氏は、じゃんけんで勝利するためのコツについて、「先出ししない」「ランダムな手を出す」「対戦相手の読みを理解する」の3点が重要だと語りました。
ボールドウィン氏によると、じゃんけんについて上達するための最初のステップは、勝負の前に出そうとしている手が分かってしまうような動作である「先出し」をしないことです。初心者はグーを出す直前に手を握りしめすぎていたり、チョキを出す直前に人差し指を少し開いていたりする傾向があるため、これから出す手を相手に教えてしまっている場合があります。そのためボールドウィン氏は「先出しは最悪で、これをすると心理的駆け引きに弱い素人だとバレてしまう」と指摘。じゃんけんに挑む際には、タイミングにピッタリ合わせて手を出すように促しました。
じゃんけんの中核を成す「出す手の選択」に関しては、「ランダムが最強」とのこと。グー・チョキ・パーそれぞれを3分の1の確率で出すという戦略は、相手にとって次の手を予測することができなくなるため、ゲーム理論における「ナッシュ均衡」の状態になっているそうです。しかし、人間にとって「ランダムに手を出す」ことは、困難であることも研究でわかっています。
被験者354人にそれぞれ300回じゃんけんをしてもらうという(PDFファイル)浙江大学の実験によると、被験者が出す手には2つの傾向が認められたとのこと。1つ目の傾向は、「勝っていると手を変えない」というもの。被験者は勝っている場合はその手に固執し、負けていると手を変えるという傾向がみられました。2つ目の傾向は、「一定の法則で手を変える」というもの。手を変える場合には、「グーからパーに」、「パーからチョキに」、「チョキからグーに」手を変え、逆向きにはあまり手を変えませんでした。
さらに、WRPSAの調査によると、統計的にはグーを出す確率が35.4%で、パーを出す確率は35%、チョキを出す確率は29.6%とのこと。ボールドウィン氏は、「最高のじゃんけんプレイヤーは、こういった差異を理解しています」と語っています。
「対戦相手の読みを理解する」というポイントについて、ボールドウィン氏は、「じゃんけん界のマイケル・ジョーダン」と呼び名が高い、2002年と2003年の世界大会を連覇したチームに所属していたケン・ワトソン氏の戦略について解説しました。ワトソン氏は、PEPSI JAPANの企画「#本田とじゃんけん2020」で、本田圭佑氏と真剣勝負を繰り広げた人物です。
【白熱勝負】本田圭佑、“じゃんけん元世界王者”と真剣勝負 PEPSI『#本田とじゃんけん2020』 - YouTube
本田圭佑氏との対戦前に、ワトソン氏は「例えば君を観察してみると…… 強い男で、マッチョだ。ってことは、グーを出しそう」と、自身の推理について語っています。ボールドウィン氏によると、「この手の推測は常に上手くいくとは限らないものの、重要」とのこと。
経験豊富なプレイヤーには、対戦相手の影響を避けるために、自分の目を閉じたり、ランダムな手を出せるように3~5手先まで決めたりする人もいます。ボールドウィン氏が、競技としてのじゃんけんに挑む場合に重要だと位置づけているのが、「対戦相手の人間的なバイアスを突きつつ自分のバイアスを抑えること」です。ボールドウィン氏は勝利の決め手について、「じゃんけんの戦略をよく知っているプレイヤーは、自分のやっていることを知り尽くしているので、じゃんけんに強いといえます」とコメントしました。
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