太陽光発電と「羊の放牧」を組み合わせると維持コストが下がる

by Oregon State University

再生可能エネルギーの1つである太陽光を活用する発電方法である太陽光発電について、「ソーラーパネルを設置した場所に羊を放牧すると維持費を削減できる」という新たなアイデアが注目を集めています。

Sheep, ag and sun: Agrivoltaics propel significant reductions in solar maintenance costs | Utility Dive
https://www.utilitydive.com/news/sheep-ag-and-sun-agrivoltaics-propel-significant-reductions-in-solar-main/581879/

再生可能エネルギーを活用する太陽光発電は近年注目を集め続けており、アメリカ合衆国エネルギー省傘下の国立再生可能エネルギー研究所は、アメリカ国内におけるソーラーパネルの設置面積が2030年から2050年にかけて倍増すると予測しています。

国立再生可能エネルギー研究所のジョーダン・マックニック氏によると、ソーラーパネルの設置に適した広い土地を有する農家はソーラーパネルを設置して太陽光発電から収益を得たいと考えているものの、ソーラーパネルによって景観が悪化してしまうことに対して多くの反発を受けているとのこと。今後増え続けると予測されるソーラーパネルをどのように設置するべきかという問題は、農地の生産性を左右しうるそうです。

こういった流れの中、「ソーラーパネルを設置した場所に羊を放牧する」というアイデアが注目を集めています。ソーラーパネルと羊の放牧の組み合わせを推奨するAmerican Solar Grazing Association(ASGA)によると、羊を使った場合、ソーラーパネル周辺の植物を管理するためのコストが30％削減可能とのこと。さらに羊を使った植物の管理はミツバチなどの花粉媒介者にとって有益で、近隣に存在するリンゴなどの花粉媒介者を必要とする農業や養蜂などの収益を高めるそうです。

フロリダ州に本社を置くタンパ電力が行った太陽光発電の発注で、ASGAは従来の維持費よりも75％も安価な維持費を掲げて入札しました。タンパ電力はASGAを採用し、実際に2018年からソーラーパネルの設置地域での羊の放牧を実施しています。羊の放牧は草刈りによる植物管理よりも実際に安価とのことで、同社は羊の放牧の利用地域を順次追加。今では所有している12箇所の太陽光発電所のうち、8箇所で羊の放牧を実施しています。

ただし、タンパ電力によると「羊ならでは」の問題もあるそうで、吸気管に羊の毛が詰まったり、コヨーテやキツネ、アライグマなどが羊を襲ったりする問題があるとのこと。同社はこの種の問題の対策として数千ドル(数十万円)を投じましたが、「管理面積から考えれば割安」としています。

ミネソタ州の太陽光発電所で羊の放牧を行っている再生可能エネルギー専門企業Enel Green Powerは、「コストはそれほど削減されていない」と語っています。しかし同社によると、芝刈り機による植物の管理には火災のリスクや機器が損傷するリスクが存在しているため、羊の放牧と置き換えることでそういったリスクが減少することがメリットになっているとのこと。また、同社は近隣の大豆やリンゴのような花粉媒介者に依存している農業について調査しており、「羊の放牧が花粉媒介者を必要とする農業の収穫量を高める」という説を証明しうる有望な結果が得られていると説明しています。

分散型太陽光発電事業に取り組むNexampの事例では、羊の放牧は特に岩棚などの起伏のある地形で効果を発揮することもわかっています。Nexampの場合、平地での羊の放牧は従来の方法に比べて通常19％ほどのコスト削減効果がありますが、岩棚などではコスト削減効果が38％まで上昇するとのこと。

以上のように、ソーラーパネルを設置した場所に羊を放牧することは、数々の利点が認められていますが、それゆえに「羊飼い不足」が深刻になりつつあるとのこと。拡大する需要に対して、羊飼いになりたがる人の数が少ないことが問題になっているそうです。