生きてるだけでお金がもらえるベーシックインカムこそ「資本主義2.0」だとの主張、その理由とは?
所得や年齢に制限を設けず、すべての国民が所得を保障される「ユニバーサルベーシックインカム」は、競争や格差を前提としている資本主義とは違った概念にも思えます。しかし、起業家であり分散型ネットワーク開発に携わる技術者でもあるティム・ロビンソン氏は、「ユニバーサルベーシックインカムは資本主義2.0」と題したブログ記事で、資本主義とユニバーサルベーシックインカムは親和性が高いと主張し、その理由を語っています。
Universal Basic Income is Capitalism 2.0 | TimJRobinson
https://timjrobinson.com/universal-basic-income-is-capitalism-2-0/
ロビンソン氏は資本主義のメリットについて「最もハードコアな反資本主義者でさえ、資本主義とテクノロジーが世界を豊かにし、数世紀前まで王侯貴族しか享受できなかった安全で快適な暮らしが私たちのものになっているという事実に敬意を払わずにはいられないでしょう」と述べています。
しかし、その一方で、資本主義によって生産性や貿易経済が発達したアメリカでさえ近年はGDPの伸びが鈍化している点をロビンソン氏は指摘し、「これは、現代の資本主義が終わりを迎えつつあり、21世紀のための新しいパラダイムが求められていることを意味しています」と述べました。
以下は、1948年~2020年のアメリカのGDP年間成長率を表したグラフです。確かに、かなり大きな波があるものの、アメリカのGDPが一貫して右肩下がりの状況にあることが分かります。
ロビンソン氏によると、現代の資本主義が限界を迎えつつある背景には、拡大しすぎた格差によりサプライサイド経済学が機能不全となりつつある現状があるとのこと。
サプライサイド経済学とは、その名のとおり供給側を重視するマクロ経済学の一派です。この立場に立つと、製品は時間の経過と共に安くなっていくとのことですが、無限に安くなる訳ではないので、「これ以上安くするには膨大な額の投資が必要になる」という限界点が生じます。企業がこの状況に直面してしまうと、新規顧客を得るのに必要なほどサービスや製品の価格を下げることができなくなり、結果として需要も制限を受けることになります。
このことについてロビンソン氏は、「格差そのものは悪いものではありません。これまでの数世紀の間は、たとえトップの人が想像を絶するほどお金持ちになったとしても、経済発展のおかげでそれ以外の人も十分豊かになることができていました。しかし、経済がグローバル化し、ほとんどのお金がトップに集中するようになった結果、富のピラミッドの底辺にいる人は製品を購入するためのお金を持てなくなり、需要が不足するようになってしまいました」と説明しています。
こうした現状に対して、ロビンソン氏はいくつかの解決策を提案しました。最初の1つ目は、「ナショナリズム」です。これは、海外の製品やサービスに関税をかけるなどして、賃金が安い国に委託していた仕事や、海外で生産していた製品の生産拠点を自国に戻し、国内の経済を守るという考え方です。しかし、これを実行すると、製品が最も効率的に生産される場所で作れなくなるため全体的な富はむしろ減少してしまい、資本主義の肝心な要素が損なわれてしまうと、ロビンソン氏は指摘しています。
2つ目の解決策は、「社会主義」です。これは、政府が法制度などを駆使してお金をコントロールするという考え方です。しかし、政府が常に最適な分配ができるわけではないため、どうしても非効率的になってしまうという問題は、やはり資本主義の理念に反しています。
3つ目の解決策は、「放置する」というもの。とはいえ、これはロビンソン氏なりの冗談です。「過去の歴史を踏まえると、このままの調子でいけば何十年も経済が停滞するか、富のピラミッドの底辺にいる人が怒り出して暴力的な革命を起こすかのどちらかなので、これは避けた方がいいでしょう」とロビンソン氏は述べています。
そこで登場する4つ目の解決策が、「ユニバーサルベーシックインカム」です。全ての国民に一律にお金を給付するユニバーサルベーシックインカムにより、所得が低い人も一定の富を得ることができるようになり、結果として需要が発生するようになります。また、効率的なグローバル経済を妨げたり、政府がコストをかけて給付対象となる国民を選定したりしないため、ナショナリズムや社会主義の弊害も発生しません。
ロビンソン氏は記事の末尾で、「私たちが、富が急激に増大する新しい時代に足を踏み入れているのは明らかですが、グローバリゼーションと自動化により成長は鈍化しています。多くの解決策は結局とのところ、進歩を後戻りし、貧しかった過去に私たちを連れ戻そうというものですが、ユニバーサルベーシックインカムなら資本主義と両立が可能なので、成長の恩恵を誰もが享受することができるようになります」と締めくくりました。
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