メモ

「億万長者になる方法」は時代と共にどう変化しているのか?


世界の経済状況は日々変化していますが、それと同様に世界の億万長者の傾向も変化しています。プログラマーであり、スタートアップの支援を行うY Combinatorの創立者であるポール・グレアム氏が、1892年と2020年の長者番付をもとに、「億万長者になる人」の違いを語っています。

How People Get Rich Now
http://paulgraham.com/richnow.html

経済紙のForbesは1982年以降、最も裕福なアメリカ人のランキングを発表しています。このランキングにリストされる上位100人を1982年と2020年で比較すると、大きな違いが見えてくるとグレアム氏は述べています。

まず、1982年の時点で最も裕福な100人のうち、富の源を「相続」とする人は60人いたのに対し、2020年時点では27人になりました。この理由の1つは「相続人の増加」にあるとのこと。相続人が増えることで一人あたりの相続額が減少したわけです。


2020年時点の長者番付上位100人の中で、相続以外の方法で富を得た73人のうち、56人は「企業の創設者」あるいは「スタートアップの初期従業員」とのこと。残り17人は投資によって財産を得た人々となっています。

なぜランキングの上位を起業家たちが席巻するようになったのかという理由には、市場の変化が関連しています。1982年において、富の源泉は「石油」と「不動産」が独占していました。しかし、2020年時点で富の源泉は「テクノロジー」に置き換わっています。テクノロジーというカテゴリは比較的新しく、一見異なるカテゴリである「自動車会社」であるテスラと「小売業者」であるAmazonを1つにくくることが可能です。


テクノロジー企業はベンチャーキャピタリストがたやすく投資できるという特徴を持ちます。これは、テクノロジー企業がCEOの取引ではなく、「優れた技術」によって大きな富を得ることができるためです。

一方で、1982年の石油および不動産会社は技術ではなく取引によって富を得ていました。取引によって富を得る手法の歴史は産業革命時代以前にまで遡り、16~17世紀の王族・貴族らは基本的に取引によって富を増やしていたとのこと。

社会的な格差を示すジニ係数をみるとアメリカは年々格差が大きくなっていますが、1982年の億万長者の多くが「自分以外の人間の富を相続することや取引によって富を得ていた」こと、これに対し2020年は億万長者の多くが「自分で起業し優れた技術を作り出すことで富を得ている」ことを鑑みると、一様に社会状況が悪化していると語れないことをグレアム氏は示唆しています。

厚生労働省が発表しているOECD主要国のジニ係数の推移は以下の通り。


実は1892年の時点でも、起業する人は多くいましたが、この時代に起業してその後大きな成功を収める企業はめったにありませんでした。というのも、19世紀終わりから20世紀初めにかけてJPモルガン・チェースといった金融機関が法のもと中小企業を買収していき、第二次世界大戦後までには「経済の主要なセクターは企業が支援するカルテルとして組織されるか、少数の寡占企業によって支配された」状態になったため。スタートアップが寡占を突破して市場に参入することはできず、人は自分の会社を立ち上げるのではなく、既存の会社の中で成功を収めるしかなかったとのことです。その後、経済の問題に気づいた政府が寡占を支える政策を撤廃することで、それまでの経済構造が崩れることになりました。

JPモルガンを中心とした経済の崩壊後、テクノロジー業界が台頭し、多くの人が会社を立ち上げることで富を得られるようになりました。そしてテクノロジーはそれ自体が、製品の構築と顧客獲得の両面でコストを削減したため、スタートアップの開始はより安く・簡単になりました。


かつて、スタートアップを開始することは工場を創設することを意味し、投資家を必要としましたが、2021年時点では投資家を必要とせずともスタートアップを開始することは可能。また、新しく創設された企業は、これまでよりも急速に成長する傾向にあるため、投資家たちにとって魅力的です。このような状況の中で、スタートアップが投資家を必要とする以上に、投資家がスタートアップを必要とする状況が存在するとのこと。

たとえば、1896年に設立されたIBMは10億ドル(約1100億円)の収益を得るために45年かかりました。しかし、1939年に創設されたヒューレットパッカードの場合、この期間は25年であり、1975年創設のMicrosoftでは13年、2021年時点で急成長している企業の標準は7~8年だとグレアム氏は語ります。

わずかな初期費用でスタートアップを始めることができ、かつ急速に企業を成長させることができるため、創業者や初期の従業員たちは数年で驚くほど裕福になることができるとのこと。スタートアップは20世紀に抑圧されてきましたが、この抑圧がなくなることで、世界長者番付の上位を創業者やスタートアップの初期従業員が占めるようになったわけです。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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