紫外線は新型コロナウイルスを破壊できるのか?
紫外線により消毒・殺菌を行う方法は古くから利用されてきましたが、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染対策としても注目されています。しかし、ウイルスを殺すためには単純に「紫外線を照射すればいい」わけではなく、誤った使い方をすると逆効果になってしまうとのことです。
Does UV light kill the new coronavirus? | Live Science
https://www.livescience.com/uv-light-kill-coronavirus.html
紫外線は波長によってUVA・UVB・UVCの3つに分けることが可能です。太陽光に含まれオゾン層を通過し地上に到達するのは主にUVAで、UVBとUVCのほとんどはオゾン層に吸収されますが、特にUVCは波長が短くエネルギーが高いことから、殺菌・消毒に利用されてきました。
これまでにも、UVCはH1N1亜型インフルエンザやMERS・SARSといった他のコロナウイルスに対して効果を発揮することが判明しています。またいくつかの研究では、UVCがSARS-CoV-2を破壊することも示されています。
まだピアレビューされていない状態ではあるものの、2020年6月26日に公開された論文ではN95マスクの除菌方法としてUVCを利用することが提案されました。論文によると、波長254nmのUVCを十分に照射すると、生物のDNAやRNAが破壊されるとのこと。ヘンリー・フォード病院で働くインデルミート・コーリ氏は、UVCによってウイルスを破壊する方法は比較的安価で済み、また非接触という性質ゆえに感染対策として注目を集めていると述べています。
ただし、DNAに損傷を与えるUVCは人間の皮膚や目に照射されると危険であるため、取扱には注意が必要。このため、殺菌・消毒目的のUVC技術の導入はまず医療機関で行われ、光医学・光生物学の観点から専門家によって安全性と効率性が評価されるべきだとコーリ氏は考えています。
また、効果を発揮させるためにはUVCの照射量が重要です。SARS-CoV-2を殺すために重要なUVC-254のコントロールは難しく、家庭用のデバイスでは不可能だとのこと。このため、「UVCでSARS-CoV-2を殺せる」という考えを持ってしまうと、十分な機能を持たないデバイスを使用して物体にUVCを照射し、本当はウイルスを殺せていないにも関わらず、「これで安全だ」と信じ込んで物体を扱ってしまうという危険が考えられます。
UVCを使って個人防護具(PPE)を殺菌・消毒するという方法に向けて、医療機関では取り組みが始まっています。また、別の研究では施設の天井などからUVCを照射し空気中のウイルスを殺す方法や、人の目や皮膚にダメージを与えない222nmのUVCを利用する方法も議論されており、今後の進展が待たれるところです。
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