ジンベエザメの目にはおびただしい数の「歯」が生えている、その理由とは?
全長18メートルを超えることもあるジンベエザメは、すべての魚類の中で現生最大の種とされています。そんなジンベエザメの眼球表面に歯のような形をした突起がびっしりと生えていたことが判明しました。
Armored eyes of the whale shark
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0235342
眼に鎧!?ジンベエザメに新事実 | プレスリリース | 一般財団法人 沖縄美ら島財団
http://churashima.okinawa/pressrelease/1593736601/
研究を発表したのは、沖縄美ら島財団総合 研究センター動物研究室の冨田武照氏らの研究チームです。同財団が運営する沖縄美ら島水族館は日本最大級の水族館で、世界で初めてジンベエザメの長期飼育に成功しています。研究チームによれば、水族館でのジンベエザメの管理と維持が成功したことにより、生きている標本へのアクセスが容易になり、ジンベエザメの目が研究できるようになったとのこと。
最初に調査対象となったのは、2017年に沖縄美ら海水族館のスタッフが解剖したジンベエザメの眼球で、その前後径は65.0mmもあったそうです。この眼球は沖縄科学技術大学院大学のマイクロCTスキャナーでスキャンされ、3Dモデル化されました。その結果、虹彩の周囲、すなわちジンベエザメの白目部分の表面に多数の歯状突起が分布していることがわかりました。
以下の図のうち、Aが実際の眼球の写真で、Cが歯状突起部分の3Dモデルを正面から見たもの、Dが同じ3Dモデルを横から見たものです。
そして、分布している歯状突起を拡大したものが以下。Aが凝集した歯状突起の拡大図で、B~Dが歯状突起1つの3Dモデル、Eが体表上にある突起です。B~DとEを見比べると、眼球上の突起と体表の突起は形がまったく異なることがわかります。
さらに、生きているジンベエザメ3体を対象に、ダイバーがカメラを持って近づき、眼球の動きを観察。すると、ダイバーなど物体が近づいた時、眼球が頭蓋骨の穴の奥に引っ込むような動作をしたことが判明しました。
並んで泳ぐダイバーのカメラで捉えられたジンベエザメの眼球の動きは、以下のリンク先からムービーで確認可能です。なお、ジンベエザメは単に眼球を奥に引っ込ませるだけではなく、同時に眼球を回転させていることもわかりました。この機能はごく少数のサメで確認されていますが、ジンベエザメで確認されたのは初めてだとのこと。
S2 Video. Eye retraction of Specimen A.
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0235342.s002
研究チームは、ジンベエザメにはまぶたがなく、眼球は他の脊椎動物と同様に角膜と結膜が露出していることから、表面の真皮組織が歯状突起に変化して眼球の機械的損傷のリスクを減らすことに役立っているのではないかと推測しています。
ジンベエザメは目の直径が全長の1%未満とかなり小さく、視覚情報の処理を行う中脳も比較的小さいことから、視覚に頼らない生態であると考えられてきました。しかし、ジンベエザメには「目を保護するための高度な機能」が備わっていたと今回の研究で判明したことから、研究チームはジンベエザメはやはり視覚情報を重要なものとしているのではないかと指摘。ジンベエザメが3~5メートル離れて泳ぐダイバーを目で積極的に追跡していたことから、ジンベエザメは近くのものを知覚するために視覚を使っているのではないかと推測しています。
研究チームは「今後の研究では、ジンベエザメの視覚システムのうち、視野や視力、色の範囲、感度など、光学的感覚能力に焦点を当てる必要があります」と述べました。
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