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リモートワークではオフィスで勤務する時と違い「リアルタイムのコミュニケーションを放棄するべき」との指摘


新型コロナウイルスの流行によって多くの企業がリモートワークを導入しており、物理的に遠く離れた従業員らが円滑に勤務できるように、チャットツールやビデオ会議ソフトウェアを導入した企業も多いはず。ところが、ソフトウェア開発者のSnir David氏は、「リモートワークの作業環境はオフィス勤務と根本的に異なるため、コミュニケーションの方法を根本的に変えて『非同期的なコミュニケーション』を導入するべき」と主張しています。

Written communication is remote work super power - Snir David Blog
https://snir.dev/blog/remote-async-communication/

David氏は「私たちはオフィスでお互いに会話し、仕事のチャットでもすぐに返事が来ることを期待し、1日中会議をすることに慣れていました。そのため、私たちは自宅でもZoomやSlackを使ってこの状況を再現しようとします」と述べて、多くの企業がビデオ会議ソフトウェアを導入したことを指摘。しかし、すぐに返事が来ることを期待しながらSlackでやり取りしたり、複数のZoom会議を毎日設けるといったやり方では、長期的にはリモートワークに失敗してしまうとのこと。


SlackやMicrosoft Teamsといったチャットツールを使用したコミュニケーションは、オフィスで隣に座っている同僚との会話とは違ったものになるそうです。David氏が指摘するチャットツールの問題点が以下。

・チャットで話しかけることは、オフィスで隣に座る同僚に話しかけるよりも手間がかかる。
・1つ目の問題点とは対照的に、会社内で遠く離れた部署にいる従業員に話しかけることが容易過ぎる。通常、別の部署に問い合わせをする際は自分たちの部署内で問い合わせ内容をチェックするケースが多いが、チャットツールではこうした障害がないため、本来であれば問い合わせるまでもないちょっとした内容でも他部署の従業員を煩わせてしまう危険がある。
・チャットでは誰もが即座のレスポンスを期待しているため、緊急でない要件でも急かされてしまう。
・チャットでは誰かと会話した内容が埋もれてしまうため、同じ説明を数回にわたって繰り返さなければならないケースがある。
・多くの人は自分の「恥」を見せたくないため、プライベートチャットやプライベートルームを使ってやり取りの内容を非公開にしがち。


また、David氏はビデオ会議ツールにも以下のような問題があると指摘しています。

・1度に話すことができるのは1人だけであり、実際の会議のように複数人が活発に発言することが難しい。
・大きな会議ではメインの会話の他に、隣同士に座ったメンバーで細かいやり取りをできるが、ビデオ会議ではこれが不可能。
・ビデオ会議は話し手の入れ替わりが頻繁ではないため、まるで「講義」のような内容になりがち。
・ビデオ会議は常にカメラを見つめていなければならず、同時に多くの人が自分の顔を見つめているため、精神的に疲弊してしまう。


以上の問題点を踏まえ、David氏は「リモートワークにおいて、同期的コミュニケーションには問題がある」と主張しています。他の参加者が自分の問いかけに対してすぐに対応することを期待する同期的なコミュニケーションは、自分が詰まっている疑問を自分の頭を悩ませて解決するのではなく、誰かに聞いて即座に解決できるという利点もあります。しかし、「誰かに聞けばわかること」を文書化するモチベーションが低下してしまうため、業務にとって重要な内容が文書化されていないという弊害ももたらしがちだとのこと。

また、疑問点を誰かに尋ねる社内文化がある場合、多くの従業員は事前に綿密な計画を立てずに業務をスタートし、「何か問題が起きれば誰か知ってそうな相手に尋ねる」というやり方で仕事を進めます。これにより、組織の中に「業務が中断されることは当たり前」という文化が生まれてしまい、仕事の柔軟性が損なわれてしまうとDavid氏は指摘しています。

リモートワークの大きな利点には「自分の好きなスケジュールで仕事を進めることができる」というものがありますが、疑問点をすぐに誰かに尋ねる社内文化がある場合、相互の従業員が働く時間を同期させなければなりません。オフィス勤務から解放されたことを機に、「午前中に仕事を行い、正午から夕方にかけて子育てや家事を行い、夜になってから仕事に戻る」というスケジュールを実行したくても、夜に仕事をしている同僚がいなければ自分の疑問を誰かに解消してもらうことは不可能です。同様の問題は、世界各地の従業員が異なるタイムゾーンで働いている場合にも発生します。


これらの問題を解決する方法としてDavid氏が提案するのが、「伝達したい情報を文章にして記述・保存する非同期的なコミュニケーション」です。非同期的なコミュニケーションではチャットと同様に文章で情報を伝達しますが、コミュニケーションがその場限りのものにならない点が大きく違います。

チャットの場合、せいぜい1人か2人を相手にコミュニケーションをしているため、全員が問題に関する文脈を共有しています。しかし、非同期的なコミュニケーションでは情報を文章として残すものの、その文章を誰がどのタイミングで読むのかわからず、相手がどれほど自分と文脈を共有しているのかわかりません。そのため、非同期的なコミュニケーションとして文章を記す場合、相手が文脈を共有していなくても情報が伝わるように記述する必要があります。

たとえば社内のデータベースに問題が発生し、その原因がメモリ不足によるMySQLインスタンスの不具合だったとします。このデータベースの修正を行う場合のコミュニケーションは、すでに情報を共有している社内のメンバーとの間であれば「今日、データベースを修正します」だけでOKです。相手はデータベースに問題があることやその原因などを理解しているため、これだけの記述でもコミュニケーションが取れます。

しかし、文脈を共有していないメンバーにも広く伝達したい非同期的なコミュニケーションの場合、記述するべきなのは「今日、メモリ不足によるMySQLの不具合があるデータベースを修正します」という詳細です。それほど長い文章を書く必要はありませんが、「修正はいつ行われるのか」「どのデータベースに問題があるのか」「不具合の原因は何なのか」といった、部外者が知りたいであろう内容を記述しておくことが、非同期的なコミュニケーションには必要だとのこと。


そもそもリモートワークの現場で使われているチャットツールやビデオ会議ツールは、オフィスの環境を模倣しようとする「劣った」方法であるとDavid氏は指摘。リモートワークでも無理に同期的なコミュニケーションを実現しようとすれば、柔軟な勤務や遠隔地とのコラボレーションに支障が発生し、せっかくのリモートワークの利点を損ねてしまうという意見を述べています。

リモートワーク時の同期的なコミュニケーションはデメリットを生む一方、非同期的なコミュニケーションはメリットを生み出すとのこと。業務において重要な情報が文書で保存されており、誰でも適切な順序で探すことができる場合には自分で調べられる環境が生まれるため、チャットや通話などの同期的なコミュニケーションで「あの問題について教えて」「あの資料はどこにある?」といった問い合わせをする必要がなくなります。

このような場合には業務が誰かの問い合わせで中断されることが減り、自分の仕事に集中することが可能となって生産性の向上が見込めます。また、「質問に答えてくれる誰か」を必要とせずに仕事ができるため、リモートワークの利点である勤務時間の柔軟性も実現可能。必要な情報が文書で保存されることにより、誰かに知識を教える従業員の時間も削減できるとDavid氏は主張しました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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