日本の「切り紙」から着想を得た「歩くとスパイクが飛び出る靴底」が開発される
「切り紙」は折りたたんだ紙をカットすることでさまざまな模様を作り出すという日本発の芸術です。そんな切り紙から着想を得たマサチューセッツ大学(MIT)とハーバード大学の合同研究チームが、「歩くとスパイクが飛び出る靴底」を開発しました。
Bioinspired kirigami metasurfaces as assistive shoe grips | Nature Biomedical Engineering
https://www.nature.com/articles/s41551-020-0564-3
Coatings for shoe bottoms could improve traction on slick surfaces | MIT News
http://news.mit.edu/2020/coatings-shoe-bottoms-improve-surface-traction-0601
「切り紙」は紙を折りたたんでからカットすることでさまざまな模様を作り出すというペーパーアートです。以下のムービーを見ると、切り紙がどんなものかが一目でわかります。
KIRIGAMI PAPER ART POP-UP CARD EASY - Tutorial - YouTube
そんな切り紙から着想を得て「歩くとスパイクが飛び出る靴底」を作ったというのが、MITとハーバード大学の合同研究チーム。この靴底の実物が以下。ヘビのウロコのような切れ込みが入ったプレートです。
各切れ込みは、曲げると浮かび上がってくるのが特徴。この曲げると立体的になる切れ込みが、切り紙から着想を得ているとのこと。
この靴底は着用者が立った状態では平らなままですが、歩行中は切り込みが浮かび上がってスパイクの役割を果たします。研究チームは、「特に高齢者の転倒などを未然に防ぐのに役立つ可能性があります」と説明しています。
研究チームは正方形、三角形、曲線、ひし形といったさまざまな形状の切れ込みの試作品を作成し、氷、木材、ビニール製の床、人工芝などさまざまな表面で剛性や確度、摩擦力などを測定しました。その結果、ひし形の切れ込みがスパイクとして最適だと判明したとのこと。
また、実際にスニーカーや冬用のブーツなどのさまざまな種類の靴にこの靴底を取り付けて厚さ1インチ(約2.5cm)の氷に覆われた摩擦力測定機の上を歩く実験を行ったところ、この靴底を取り付けた場合には摩擦力が20~35%向上することが確認されています。
研究チームは、この靴底の商品化に目を向けており、アイゼンのように必要に応じて靴に取り付けられるタイプのものにするか、靴と一体化したものにするかを検討しているとのこと。加えて、今回発表された研究では靴底の材質はプラスチックかステンレスに限られていましたが、研究チームは今後、「靴底自体はゴムのようなポリマーがベースだが、切れ込み部分は鉄製チップで補強する」というように、複数の材質を組み合わせて実験を継続する予定です。
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