放出される熱を自動調節してサーモグラフィーから身を隠せる熱迷彩デバイスが開発される
「周辺温度に合わせて温度が自動で変化する」という機能を持つウェアラブルデバイスをカリフォルニア大学サンディエゴ校の研究チームが開発しました。研究チームは、この機能を使えば暗視装置などに使われるサーモグラフィーに検出されなくなると述べています。
An Adaptive and Wearable Thermal Camouflage Device - Hong - - Advanced Functional Materials - Wiley Online Library
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/adfm.201909788
This Wearable Device Camouflages Its Wearer No Matter the Weather
https://ucsdnews.ucsd.edu/pressrelease/wearableheatcamouflage
研究チームは、このデバイスが周辺温度に即座に対応して温度を変化させるということがよくわかるムービーも公開しています。以下のムービーは、赤外線サーモグラフィで遠距離から温度を計測できる「FLIR」で、このデバイスを装着した腕を撮影しています。
This wearable device camouflages its wearer no matter the weather - YouTube
以下の画像の赤枠部分が問題のデバイス。色で温度を表すことができるFLIRの映像で、腕以外の空間と色が一致していることから、このデバイスが周囲の空間と同じ温度になっていることがわかります。
次第に周辺温度を上昇させた場合の変化も記録されています。周辺温度が上昇して色が変化すると、デバイスの色も同様に変化しており、デバイスの温度が周辺に合わせて変化していることが見て取れます。
この素材は、10℃から38℃までの温度に1分以内で対応可能とのこと。皮膚と接触している部分は皮膚の温度に対応するため、付け心地が良いそうです。
このデバイスは、研究チームが2019年5月に発表した「コンパクトかつ簡単に温度調整が可能な冷却装置」と融点が30℃の特殊素材を連動させたもの。「コンパクトかつ簡単に温度調整が可能な冷却装置」は伸縮性ポリマーシートの間に複数の半導体材料を埋め込むことで、簡単に温度調節が可能という装置で、以下を読むとその全容を理解できます。
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特殊素材は30℃に達すると溶けて液化することで断熱材のような能力を有するようになりますが、30℃以下では徐々に固化して絶縁層になる特徴を持っています。この特殊素材によって「冷却装置」の設定温度を変更するというのが今回の試みです。
研究チームによると、今回開発されたデバイスはまだ概念実証段階にあるとのこと。研究チームは現段階ではこの機能が組み込まれたジャケットを作成することを目指しているそうですが、試験的に作成されたジャケットの重さは重さは2kg、厚さは5mm、連続駆動時間は1時間しかないとのこと。研究チームは「重さを2分の1から3分の1にできるように努力を重ねている」と述べています。
この研究を発表したカリフォルニア大学サンディエゴ校は、「(記事作成時点で)最先端の熱迷彩技術はあらかじめ設定した温度でしか機能せず、周辺温度が設定温度より高くなったり低くなったりすると機能しなくなります」と記して、研究チームが発明した「周囲に合わせて温度変化を行うデバイス」がいかに画期的なのかを強調しています。
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