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サイエンス

3Dプリンターでリチウムイオン電池を自由な形に出力する技術が誕生


電気自動車やスマートフォン、ノートPCといったあらゆる電子機器に使用可能なリチウムイオン電池を、3Dプリンターで自由な形に出力することが可能となる技術が誕生しました。従来はリチウムイオン電池の規格に合わせて機器のサイズや形状を設計する必要があったのですが、新しい技術により3Dプリンターで自由な形状に出力できるようになるため、バッテリーの規格にとらわれない電子機器のデザインが可能となります。

3D-printed lithium-ion batteries -- ScienceDaily
https://www.sciencedaily.com/releases/2018/10/181017111030.htm

従来のリチウムイオン電池は決められたサイズや形状のものが多いですが、リチウムイオン電池は理論上はあらゆる形のものが作り出せるはずです。研究者のBenjamin Wiley氏とChristopher Reyes氏は、そんな従来のリチウムイオン電池の問題を解決するために、安価な3Dプリンターでさまざまな形状のリチウムイオン電池を作り出すための方法を開発したいと考えていました。そこで問題になるのが、3Dプリンターで広く利用されるポリ乳酸(PLA)素材は「イオン伝導体ではない」という点。3DプリンターでPLAを出力してリチウムイオン電池を出力しようとすると、このPLAがイオン伝導体ではないためバッテリー化に際して大きな障害になるというわけです。

そんな中、Wiley氏とReyes氏の2人は3Dプリンターで自由な形状に出力可能なリチウムイオン電池を作り出す方法の開発に成功しています。この方法は学術誌のACS Applied Energy Materials上で公表されています。

Three-Dimensional Printing of a Complete Lithium Ion Battery with Fused Filament Fabrication - ACS Applied Energy Materials (ACS Publications)
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsaem.8b00885


2人は3Dプリンターでリチウムイオン電池を出力するために、2つの方法を編み出しています。ひとつは3Dプリンターで出力するPLAに電解液を注入し、PLAのイオン伝導度を高めるという方法の発明。もうひとつは、グラフェンまたは多層カーボンナノチューブをアノードまたはカソードに組み込むことで、リチウムイオン電池の電気伝導度を向上させるという方法です。この2つの技術を合わせることで、リチウムイオン電池を3Dプリントすることに成功しています。

以下の写真右に写っているのは、3Dプリントされたリチウムイオン電池を電源とするLEDブレスレット。


また、研究では3Dプリントしたリチウムイオン電池の性能を試すために、3Dプリントリチウムイオン電池をバッテリーとするLEDブレスレットを作成。3Dプリンターで出力したリチウムイオン電池は約60秒間作成したLEDブレスレットに電力を供給することができています。

なお、研究者によると、研究ではじめて作った3Dプリントリチウムイオン電池は商用のものよりも容量が約2桁も低いとのことで、まだまだ実用段階からはほど遠いできと言えます。しかし、バッテリーの容量を増やすためのアイデアはいくつか存在しており、PLAベースの出力素材を別のものに替えるなどが提案されています。

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in ハードウェア,   サイエンス, Posted by logu_ii