サイエンス

3Dプリンターで血管や内臓などの生体細胞を透明ゲルの中に出力、ムービーで見るとこうなる


3Dプリンターで本物の心臓を作る研究が進められている中、従来の3Dプリンターでは出力することが難しいとされていた、複雑で小さい形の構造物を作るために、「生体細胞を透明のゲルの中で出力する」という技術の開発が進められています。

Writing in the granular gel medium | Science Advances
http://advances.sciencemag.org/content/1/8/e1500655

Gel scaffold paves way for 3D printing of biological organs | New Scientist
https://www.newscientist.com/article/dn28252-gel-scaffold-paves-way-for-3d-printing-of-biological-organs/

ゲルの中に3Dプリンタの針を差し込んで複雑な構造物を作っている様子は、以下のムービーで見ることができます。

3D-printing needle creates intricate objects in soft gels - YouTube


透明のゲルが入った容器の中に、3Dプリンタの細い針が差し込まれ、ゲルの中で物体が出力されていきます。容器右側に表示されている目盛りと比べてみると、物体の横幅は約2mm程度と非常に小さいことが分かります。


3Dプリンターの針から出てくる物体をゲルが足場となって支えることで、ぐねぐねとカーブした複雑な構造体ができあがっていきます。ゲルはアクリル酸ポリマーで作られていて、手のひら用の消毒ゲルのような粘度があるとのこと。


従来の3Dプリント技術では、複雑な構造物は印刷が完了する前に壊れてしまうという問題がありました。しかし、今回発表されたゲルの内部に出力する方法では、構造体がたわんだりゆがんだりするのを防ぎ、紙2枚分の薄さで従来の10分の1サイズの物体を出力可能とのこと。この技術は、内臓器官や血管などの生体組織を3Dプリンタで作成する際の活用が期待されています。


容器の上部まで針が移動して、出力完了。ゲルは透明なので、まるで空中に物が出力されているかのようです。


次は大きさ約20mmほどの物体を作っていくようです。


出力した物体の内側にさらに出力していくという入れ子構造。


4層重ねの物体を作り、続いて容器の上半分を出力していきます。


上下の継ぎ目は、目視できないほどなめらか。


マトリョーシカ風の物体が完成。


他にも、ゲルの中で物体を作り出すことで、小さく複雑な形の構造物を出力可能です。研究チームのリーダーであるフロリダ大学のトマス・アンジェリーニさんは、「ゲルは本質的に個体であるため、出力物を支えることが可能なのです」と語っています。ただし、規定のサイズ以下の小さな物体は、ゲルの中ですべってしまうため出力できないそうです。


研究チームでは実際にこの技術を使って、生体細胞を出力して人間の血管やイヌの腎臓の細胞を作ることに成功しています。また、シリコンやヒドロゲルなどを出力して脳のレプリカモデルを作ることにも成功しているとのこと。


アンジェリーニ氏は「生体器官の3Dプリント技術に新たな道が開けたと確信しています」とコメントしています。目下の問題は、ゲルが有機物ではないため3Dプリンタで出力した生体組織を生きたまま保っておくことができない点で、ゲルを使った生体組織の出力が医療現場で活躍するまでにはまだまだ研究を進める必要があるそうです。

なお、過去には3Dプリンターで液状の樹脂をゲルの中に出力してUV光で固めるという機械も登場しています。

Printing in gel takes 3D printing freeform and enables an undo function
http://www.gizmag.com/suspended-deposition-3d-printing/28508/

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in ハードウェア,   サイエンス,   動画, Posted by darkhorse_log