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「初のデュアルレンズを採用した第4世代iPad Proのカメラはどれだけ進化したのか」を専門家が解説


2020年3月25日に発売された第4世代iPad Proは、2018年に発売された第3世代からカメラモジュールが大きく進化しており、特に背面に搭載されるリアカメラが2つに増えたほか、LiDARセンサーが搭載されています。実際に第4世代でカメラモジュールがどれだけグレードアップしたのか、プロのデザイナー兼写真家で、カメラアプリのHalideの開発者であるセバスティアン・デ・ウィズ氏がスペックを比較しながら解説しています。

LIDAR: Peek Into The Future With iPad Pro - Halide
https://blog.halide.cam/lidar-peek-into-the-future-with-ipad-pro-11d38910e9f8

◆フロントカメラ
第4世代iPad Proのフロントカメラは7メガピクセル・焦点距離32mm(35mm判換算)・F値2.2の広角カメラで、第3世代と同じ性能となっています。

◆広角リアカメラ
第4世代iPad ProはiPadシリーズで2基目のカメラを背面に搭載した初のモデルです。第4世代iPad ProのリアカメラモジュールはiPhone 11/11 Proと同じように四角く出っ張った形になっており、カメラを2基搭載しています。そのうち片方は、12メガピクセル・焦点距離29mm(35mm判換算)・F値1.8の広角カメラで、第3世代と同じものが採用されています。

しかし、ウィズ氏によれば、第4世代ではセンサーの感度の幅がやや広くなっているとのこと。第3世代のA12X Bionicプロセッサには7コアのGPUが搭載されていたのに対して、第4世代iPad ProのA12Z Bionicプロセッサには8コアのGPUが搭載されていることから、カメラそのもののISO感度が変わったのではなく、ソフトウェアによる画像処理が改善されたのではないかとウィズ氏はみています。


なお、第3世代・第4世代のiPad Proに搭載されている広角カメラは、iPhone 11/11 Proに搭載されている12メガピクセル・焦点距離26mm(35mm判換算)・F値1.8の広角カメラよりもやや画角が狭くなります。

◆超広角リアカメラ
第4世代iPad Proには広角カメラに加えて、超広角カメラが新たに追加されています。超広角カメラはiPhone 11/ 11 Proにも搭載されていますが、そのスペックは少し異なります。


iPhone 11/11 Proの超広角カメラは12メガピクセル・焦点距離13mm(35mm判換算)・F値2.4で、ISO感度21~2016・シャッタースピード4万5000分の1秒~1秒・画像サイズ4032ピクセル×3024ピクセルというスペック。


一方、第4世代iPad Proの超広角カメラは10メガピクセル・焦点距離14mm(35mm判換算)・F値2.4で、ISO感度19~1824・シャッタースピード6万2000分の1秒~1秒・画像サイズは3680ピクセル×2760ピクセル。第4世代iPad Proでは超広角カメラの焦点距離が1mm長くなっており、広角カメラと同様にiPhone 11/11 Proと比べると画角はやや狭くなりますが、普通に使う分にはあまり目立たない差といえます。

実際にiPhone 11 Proの超広角カメラで撮影した写真(左)と第4世代iPad Proの超広角カメラで撮影した写真(右)を並べて比較したところが以下。ウィズ氏は「焦点距離の違いよりも、カメラの解像度が2メガピクセル下がっていることの方が興味深く感じます」とコメントしています。


◆LiDARセンサー
第4世代iPad Proで最も新しい機能の1つが、リアカメラモジュールに搭載されたLiDARセンサーです。LiDARセンサーがAppleデバイスに搭載されたのは第4世代iPad Proが初であり、ウィズ氏は「新しいイメージキャプチャテクノロジーが、iPhoneよりも先にiPadに搭載されたのは初めてのことで、驚きました」と語っています。


LiDARとはLight Detection and Ranging(光の検出と測距)の略で、センサーから非常に短い光を発射し、それが跳ね返ってくるまでの時間を計測することで、対象との距離を正確に測ることができる技術です。この正確な距離測定によって、第4世代iPad Proではより精度の高いAR体験が可能になりました。デバイスを振り回してキャリブレーションを行うことなく、正確に人の身長や部屋の間取りを測定することが可能。


また、家具サイズであれば、その形を3DスキャンしてCGモデルに起こすこともできるそうです。ウィズ氏は、まだ概念実証段階であるものの、カメラとLiDARセンサーを組み合わせることで、リアルタイムに3Dキャプチャする「Esper」というアプリを開発しています。


しかしウィズ氏によれば、第4世代iPad ProのLiDARセンサーの精度は、リアカメラのポートレート撮影には応用されていないとのこと。電子機器修理企業のiFixitが、LiDARセンサーの投影する光のドットパターンを調査したところ、iPad ProのLiDARセンサーによるドットパターンは以下のように粗いものであることがわかりました。


そして、Appleデバイスの顔認証システム「Face ID」用の赤外線センサーのドットパターンが以下。LiDARセンサーよりもFaceID用の深度センサーの方がかなり広範囲・高密度で赤外線を投影して計測していることがわかります。


ウィズ氏によれば、「LiDARセンサーのドットパターンは基本的に部屋内の構造をスキャンするために最適化されており、人の顔を精密に判別するほどのものではありません」とのこと。ただし、Appleのニューラルエンジンによる機械学習を組み合わせれば、深度データが粗くてもポートレート撮影が可能になるため、ウィズ氏は「第4世代iPad Proのリアカメラはポートレート撮影ができない」ではなく、あくまでも「第4世代iPad Proのリアカメラはポートレート撮影をサポートしていない」という言い方にとどめています。

ウィズ氏は、「第4世代のLiDARセンサーはまだ従来の写真撮影機能を補強するものではありませんが、LiDARセンサー自体が強力でクリエイティビティを現実のものにする新しいアプリケーションへの扉を開くでしょう」と述べました。

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in モバイル,   ハードウェア, Posted by log1i_yk

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