鉄道会社を経営して開拓時代のアメリカを蒸気機関車で発展させる「レイルウェイ エンパイア」プレイレビュー
1830年代から約100年からにわたってアメリカの鉄道会社を経営するというゲームが「レイルウェイ エンパイア」です。「鉄道系経営シミュレーター」と聞くと「A列車で行こう」シリーズのようにダイヤグラムを組んだりするような「鉄道」そのものがテーマに思えますが、本作は経営がメイン。敵対する鉄道会社とシェアを奪い合いつつ、開拓時代のアメリカの発展に貢献していきます。
Railway Empire - レイルウェイ エンパイア | Ubisoft
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レイルウェイ エンパイアの舞台は1830年~1930年のアメリカ。現代でこそアメリカは「自動車産業の国」という印象ですが、アメリカ初期の発展を担ったのは機関車でした。機関車がアメリカに導入された当初は、輸送は設備の悪い有料道路を馬車で行くか、ゆっくりとしか進まない汽船しかありませんでした。
1830年に運行が始まった蒸気機関車は1900年を過ぎるまで路線の拡充を続け、一時は「アメリカ国内の輸送シェアの9割を占める」といわれるほどの隆盛を誇りました。そんな時代のアメリカで、「鉄道会社を経営する」というのがこのゲーム。主人公は都市から都市へと路線を繋いで、人や物の流通を強化し、各都市、ひいてはアメリカ自体を発展させます。
プレイヤーはアメリカの各地域、各時代で鉄道会社を経営することが可能。実在した歴史を元にした舞台で遊べる「シナリオ」モードには、「1900年頃のアメリカ東海岸で勃興してきた自動車産業を支える資源を輸送する」という設定も。
今回解説するチュートリアルモードを兼ねる「キャンペーン」のシナリオ2は、1830年のアメリカ東海岸が舞台。ワシントンやニューヨークなどは現代ではアメリカきっての大都市ですが、当時はそれほど人口が多くなかったことがマップ上で表現されています。実際のゲーム画面はこんな感じで、上空から地上を見下ろすような俯瞰視点でプレイします。なお、今回はNintendo Switch版をプレイしています。
Switch版はZRボタンでメニュー画面が表示されます。メニューの選択肢はリング上に表示されており、内側のリングには施設を建設する「建物建設」、機関車の購入や路線を管理する「新しい電車」、線路を建設する「線路建設」、クリア条件やボーナス取得条件を表示する「タスク」などのコマンドを選べます。
Xボタンを押すと外側のリングの選択肢に切り替わります。外側のリングは新技術や新車両の開発を行う「研究」や従業員の雇用を行う「従業員」など経営に関するコマンドです。
鉄道経営者としての才覚を発揮して、この東海岸を発展させるというのが今回の目的です。そのためには都市と都市、都市と資源を繋ぐ必要があります。今回はワシントンとニューヨークを鉄道で結ぶことにします。その第一歩としてワシントンとニューヨーク、そして中間にあるボルチモアに駅を建設しました。
続いて、ニューヨーク~ボルチモア~ワシントンを結ぶ線路を引きます。線路建設は、始点と終点を選択するだけで自動的に「建設予定図」が表示されます。問題ない線形だと思ったら決定ボタンを押せば、予定された路線がただちに建設されます。膨大な労働者が駆り出されているものと思われます。
ボルチモア~ワシントン間は距離が近かったため問題はありませんでしたが、ニューヨーク~ボルチモア間に線路を引こうとすると、すでに存在する畜産農場と山をぶち抜くルートが提案されました。以下の画像では、ミルクのアイコンで示されている畜産農場の箇所は「線路建設不可能」示す赤色で示されています。右上側の赤枠は緑色になっていますが、山岳をぶち抜くトンネルを建設するという計画です。
現代でも山岳をくりぬいて路線を通すことは困難で、1830年当時に必要な労力がどれほどのものだったかは想像すらできません。本作ではトンネルを建設することも可能ですが、莫大な必要がかかります。今回のルートは、169マイル(約272km)で約93万7000ドルかかるとのこと。なお、1830年の1ドルは現代の価値に換算すると約24ドルに相当するため、約93万7000ドルは現代の約2280万ドル(約25億3000万円)に相当します。
「いくらなんでも高すぎる!」というわけで、山を迂回するルートをとることに。線路の一部にカーソルを合わせて決定ボタンを長押しすると、建設予定状態の線路をぐねっと曲げることが可能。以下のムービーを見ると、線路をぐねっと曲げて山を迂回するルートをとると、右上に表示された建設費用からトンネル分の61万6000ドルがなくなって大幅に値下がりし、最終的には約37万9000ドル(現代価格で約10億円)と元の半額以下になったことがわかります。
「レイルウェイ エンパイア」で線路の建設予定図をグニっと動かして山を迂回すると費用が半額以下に - YouTube
高低差のある地形に線路を敷設すると機関車の速度が落ちたり、機関車の出力によっては走行が不可能になったりするため、できる限り高低差を避けて線路を敷くことも大事なポイント。賢く線路を引くと、お金を節約できるというわけです。さらに、線路や建物は取り壊せば資金が全額戻ってくるという親切設計。
線路でつなぐのは、都市と都市だけではありません。牛やミルクなどの、その地方の特産物を示す「資源」と都市を繋ぐことも重要。資源の近くに駅を建てると、駅まで資源が自動的に運ばれます。
駅や資源を結ぶように鉄道網を敷いたら、機関車を購入して……
「停車駅」を設定すれば、後の列車運行は自動で行われます。本作はダイヤグラムなどの構築は不要で、かなりサクサク鉄道を敷設&運営できます。
鉄道によって接続された駅と駅では資源や乗客の運搬が行われるため、都市や資源を産出する施設は徐々に発展していきます。
各都市にはそれぞれ工場があり、それぞれ素材を一段階上の製品に加工してくれます。例えば、ピッツバーグにある製織工場は綿を布に加工し、ボルチモアにある仕立屋は布を服に加工してくれます。つまり、綿をピッツバーグに運んで布に加工してもらってから、その布をボルチモアに運べば服が完成。大もうけできるということ。
しかし、実際に大もうけするためには「需要」の理解が大切。たくさん資源を運んでも、需要がなければ意味がありません。各都市のデータ画面は、以下のように「都市の貯蔵量」「週間需要」「週間生産量」「週間需要(全都市)」「週間生産量(全ビジネス)」が記されており、Switch版ならZLを長押しすることでカーソルを使って詳細をチェックすることもできます。この中でも「週間需要」を満たすように都市に物品を運べば会社は大もうけ、都市は発展とお互いにWIN-WINの関係を構築できるというわけです。
また、「技術の発展」の概念もあります。1830年に登場した蒸気機関車はまだまだプロトタイプといえるもので速度も遅く、故障も多いものでした。しかし時代を経るごとに速度も安定性も向上したことが本作にも反映されています。本作では以下のようなツリー形式で新技術の開発が可能。一定期間ごとにもらえる「イノベーション・ポイント」で、線路上の障害物を排除して機関車の動力を増加させる「排障器」などの技術が開放可能。
「サンタフェ」「ジョン・ブル」「ミカド」などの機関車もイノベーション・ポイントでアンロック可能。それぞれの機関車は速度やけん引力、貨物輸送/旅客輸送のどちらに優れるかなどの性能に差があり、そして何より見た目が違います。作中には、実在する機関車41種類、貨車34種類が登場します。
自分の路線に配備した機関車に乗車して、自分が構築した鉄道網を主観視点で堪能することもできます。
「レイルウェイ エンパイア」で自分の鉄道に乗って眺めるニューヨーク近郊の街並み - YouTube
機関車の最大速度を上げる「エンジニア」や「機関員」などの機関車の能力を底上げできる鉄道員や、機関車の購入価格を下げる「会計士」などの経営をサポートする事務員を雇うことも可能。
各従業員にはレベルの概念があるだけではなく、従業員同士の相性もあり、同じ車両に乗る従業員の仲が悪いと人災が発生して走行中の車両が止まってしまうことも。
ゲーム中には競合他社も登場。プレイヤーと同じように鉄道会社を運営して商売の邪魔になるだけでなく、ときにはスパイを放って直接妨害してくることも。
プレイヤーも工作員を雇って妨害することもできますが、強豪相手の株式を取得して配当金を得たり、企業自体を買収したりという経営テクニックで相手を追い落とすこともできます。
投資で資金を得たり、四半期決済で自社の営業利益もチェックできたりと経営要素はかなり充実。
列車をどう運行するかという点がかなりカスタマイズできる「A列車で行こう」シリーズとは異なり、本作はダイヤグラムの設定ができません。このため、側線と信号機を駆使して1つの線路で複数台の車両を運行させることも可能ですが、基本的には「1線路1列車」で運用するほうが効率的。
1線路1列車になるように線路と列車の数を調整しても、複数の列車が同じ線路を走る設定になっていて、列車がお見合い状態で停止してしまうことも。そんなときは、路線(Yボタン)でその機関車の停車駅の一覧が表示されるので、線路を切り替えたい駅を選択して方向キーの右を押すと、以下のように「1番線」「2番線」と切り替えられます。
マップを読み込むときに「鉄道ネットワーク」の設定を「シンプル」にしておくと、列車同士が衝突しなくなります。この設定をオンにした車両に乗ってみると、車両同士がスーッとすり抜けるという怪現象を見ることができます。
「レイルウェイ エンパイア」で車両同士がぶつからない設定にするとこうなる - YouTube
しかし、列車の運行を任せておけるとはいっても、プレイヤーが目を配るべきポイントは多数あり、かなりの忙しさを感じるゲームです。その理由は、「絶えずゲーム内時間が経過していく」という点。線路建設モードなど時間経過が止まる場合もありますが、他の経営シミュレーションのように説明文などをじっくり読みながらプレイするというのは基本的にはできません。こちらが鉄道の運行を考えていようが、どの研究を取得しようか悩んでいようが常に時間が進行して、競合他社は栄え、自社は車両の経年劣化によるトラブルが発生、客足は遠のきます。
必須タスク(クリア条件)を達成できずに一定期間が経過するとゲームオーバーになってしまう、というのも忙しい要因の1つ。特定の製品を生産したり、特定の都市の人口を一定数まで引き上げたりといった目標が課されます。製品の生産は原料となる資源を対応する工場のある都市に輸送する必要があり、都市の人口を増やすにはその都市の需要を満たす必要があります。
とはいえ、プレイ時間を重ねてゲームを理解していくと効率的にプレイできるようになるため、都市をグングン成長させてどんどんタスクを達成できるようになります。タスクを効率的に達成するためにあれこれ考えるのは、パズルを解いているときの感覚に近いものがあります。一方で、鉄道網が発展するにつれて物資や人の運搬が盛んになって、開拓時代のアメリカが豊かになるわけです。そんな「街を発展させる」という楽しみはシミュレーションゲームそのものでした。
「レイルウェイ エンパイア」はNintendo Switch版が税込5280円、PlayStation 4が税込7260円、Steamで販売されている日本語対応のPC版が税込5448円でした。
Nintendo Switch|ダウンロード購入|レイルウェイ エンパイア Nintendo Switchエディション
https://ec.nintendo.com/JP/ja/titles/70010000021008
レイルウェイ エンパイア | 公式PlayStationStore 日本
https://store.playstation.com/ja-jp/product/JP0001-CUSA10166_00-RAILWAYEMPIREGMS
Steam:Railway Empire
https://store.steampowered.com/app/503940/Railway_Empire/
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