サイエンス

採血時の注射針の刺し直しを格段に減らす可能性を秘めた「人間と同じくらい採血がうまいロボット」が登場


静脈注射はアメリカ国内で年間14億回も行われる最も一般的な臨床処置の一つであり、経験したことがある人は多いはず。しかし、腕の血管が細い人は、健康診断や献血時に行われる採血に失敗されてしまい、何度も針を刺し直されて痛い思いをしたことがあるかもしれません。そんな採血や注射を人間よりも上手に行うことができるロボットが登場しました。

First-in-human evaluation of a hand-held automated venipuncture device for rapid venous blood draws | TECHNOLOGY
https://www.worldscientific.com/doi/abs/10.1142/S2339547819500067

New Robot Does Superior Job Sampling Blood | Rutgers Today
https://news.rutgers.edu/new-robot-does-superior-job-sampling-blood/20200204#.XkTzESNUtph

New Medical Robot to Take Blood Samples- Rutgers University Scientists
https://www.biotecnika.org/2020/02/new-medical-robot-to-take-blood-samples-rutgers-university-scientists/

静脈から薬物を投与したり、採血したりする際に静脈ライン確保を行います。しかし、血管が見えにくいと何度も針を刺してはライン確保に失敗するということがあり、そうすると針を刺した場所が静脈炎になったり、血栓ができたり、感染症にかかったりすることもあります。その結果、動脈やより血管の太い静脈といった、ライン確保時のリスクが高い血管を処置の対象としなければならなくなります。静脈への注射は患者と臨床医双方の負傷の主な原因の一つであり、ライン確保の作業遅れによる非効率はアメリカ国内で年間40億ドル(約4400億円)相当の損失を生み出しているとのこと。

そんな静脈のライン確保を容易にしてくれるロボットを開発したのはラトガース大学が主体の研究チーム。ロボットは超音波を用いた画像誘導装置を搭載しており、血管を流れる血液の様子が皮膚の上からわかるとのこと。医師や看護師の注射針による採血に代わる新しい採血手法として期待されています。

医師や看護師が成人に採血を行う場合の成功率は(PDF)74%~88%という報告があります。それに対して研究チームの開発した採血ロボットを用いた場合、血管の浮き出た腕での採血成功率は97%、血管の浮き出ていない腕を含めても成功率は87%と人間と同等の数値を記録しました。将来的には人工知能を用いてロボットを改良し、静脈カテーテルや動脈ラインの確保時にも使用できるように研究を重ねていくそうです。


研究チームの一員であるJosh Leipheimer氏は、「針の刺し直しによる痛みや合併症は、私たちのロボットを使えば防ぐことができます。医師や看護師にとっても、血液のサンプルを確実に、安全に、迅速に採取することができる機器なのです」と語っています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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