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「依存性がある鎮痛剤の処方を増やす電子医療システム」開発のため製薬企業がIT企業に金銭を渡していた

by lyulkamazur

アメリカでは強い依存性を持つ鎮痛剤である「オピオイド」の乱用が問題となっており、多くの人が中毒症状に陥って大量の死者が出ています。そんなオピオイドの乱用問題に関連して、「製薬企業が医療系IT企業のPractice Fusionに金銭を渡し、『オピオイドの処方を後押しする医療用システム』を開発させていた」ことが判明。Practice Fusionに対し、裁判所によって総額1億4500ドル(約158億円)もの支払いが命じられました。

ELECTRONIC HEALTH RECORDS VENDOR TO PAY LARGEST CRIMINAL FINE IN VERMONT HISTORY AND A TOTAL OF $145 MILLION TO RESOLVE CRIMINAL AND CIVIL INVESTIGATIONS | USAO-VT | Department of Justice
https://www.justice.gov/usao-vt/pr/electronic-health-records-vendor-pay-largest-criminal-fine-vermont-history-and-total-145

Practice Fusion allegedly weaponized EHRs in kickback scheme - MedCity News
https://medcitynews.com/2020/01/practice-fusion-allegedly-weaponized-ehrs-in-kickback-scheme/

Practice Fusion took kickbacks to push opioids to doctors, DOJ finds
https://www.cnbc.com/2020/01/28/practice-fusion-took-kickbacks-to-push-opioids-to-doctors-doj-finds.html


オピオイドの乱用問題はアメリカ全土に広がっており、2017年にはドナルド・トランプ大統領が衛生非常事態を宣言しています。アメリカ疾病管理予防センターの発表では、オピオイドの過剰摂取が関連しているとみられる死者は40万人にのぼると見積もられているとのこと。

多くの人がオピオイド中毒に陥ってしまった背景には、本来は強力な鎮痛剤が必要のない患者にもオピオイドが処方されたケースが多発したことがあります。医師が患者に対して過剰にオピオイドを処方してしまった原因として、「製薬会社から医師への利益供与があった」ことも判明しています。

鎮痛剤「オピオイド」の過剰投与による薬害問題の背景には製薬会社から医師への利益供与があった - GIGAZINE

by VCU CNS

製薬企業はオピオイドの乱用に関する訴訟に直面しており、ジョンソン・エンド・ジョンソンに対してはオクラホマ州の地方裁判所により、5億7200万ドル(約606億円)の支払い命令が言い渡されています。

依存性のある鎮痛剤「オピオイド」の乱用問題で600億円の支払い命令がジョンソン・エンド・ジョンソンに下る - GIGAZINE

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また、新たにオピオイド危機に関与したとして処罰を受けたのが、医師向けの電子医療記録システムを開発するIT企業・Practice Fusionです。Practice Fusionはシリコンバレーに本拠を置く医療系IT企業であり、有料の競合他社に対抗し、無料の電子医療記録システムを広告を表示することと引き換えに提供していました。

2020年1月27日、アメリカ法務省は「大手製薬企業からキックバックを受け取るのと引き換えに、ソフトウェアを使用してオピオイドの処方を後押ししたことをPractice Fusionが認めました」と発表。Practice Fusionは刑事事件の罰金刑および没収金として2600万ドル(約28億円)、民事訴訟の和解金として1億1860万ドル(約129億円)、総額で1億4500万ドル(約158億円)もの支払いに同意したとのこと。

by Maklay62

「Practice Fusionの行為は忌まわしいものです。オピオイド危機の最中に、Practice Fusionは100万ドル(約1億1000万円)以上のキックバックを受け取り、医師と患者の神聖な関係の間にオピオイド企業が割り込むことを許し、中毒性が高く危険なオピオイドをより多く処方できるようにしました」と、バーモント地区のアメリカ合衆国地方検事であるChristina Nolan氏は述べました。

Practice Fusionが開発したシステムは医療行為をサポートする「臨床決定支援」機能を搭載しており、患者に対してオピオイドを処方するように推奨するアラートを発していたとのこと。このアラートは2016年7月から2019年の春にかけて、Practice Fusionのシステム上で2億3000万回も表示されたとのことで、大量のオピオイド処方がアラートによって行われたと見られています。

なお、オピオイドの処方を推奨するアラートは特定の医療基準を満たしておらず、患者が重度でない痛みを報告した場合にもオピオイドの処方が勧められていたそうです。また、Practice Fusionが製薬企業との話し合いの中で、アラートによって製薬企業の利益が増加すると宣伝していたこともわかっています。

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オピオイド危機に関連する一連の捜査により、すでに製薬企業の幹部や医師、薬剤師などが起訴されていますが、今回のPractice Fusionにまつわる事例は電子医療記録システムベンダーによる史上初の犯罪行為である点で重要だとのこと。「これは完全に予想外です。製薬企業がオピオイドの処方を増やすために、どれほど多様な方法を模索してきたのかについて、私は過小評価していました」と、Mirick O’Connell法律事務所のMatthew Fisher氏は述べました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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