「卵の食べ過ぎが心臓病などにつながることはない」という研究結果

by wenping wang

卵には多くのコレステロールが含まれているため、過剰に摂取すると心臓疾患などの発症リスクが高まると指摘されてきましたが、3つの長期研究を分析した最新の研究結果から、卵の摂取量と心臓病の発症リスクにはつながりがないことが明らかになっています。

Association of egg intake with blood lipids, cardiovascular disease, and mortality in 177,000 people in 50 countries | The American Journal of Clinical Nutrition | Oxford Academic
https://academic.oup.com/ajcn/advance-article-abstract/doi/10.1093/ajcn/nqz348/5713417?redirectedFrom=fulltext

Moderate egg intake not linked to heart disease | 2020-01-29 | Baking Business
https://www.bakingbusiness.com/articles/50211-moderate-egg-intake-not-linked-to-heart-disease

卵と心臓病のつながりについて分析したのは、カナダのオンタリオ州ハミルトンにある7つの病院とがんセンターによる病院ネットワーク・Hamilton Health Sciencesと、マクマスター大学の公衆衛生研究所の研究者たち。研究結果をまとめた論文は、アメリカの臨床栄養学関連の学会誌・The American Journal of Clinical Nutrition上に掲載されています。

by 青 晨

同研究に参加した、マクマスター大学の公衆衛生研究所で働くマシッド・デフガーン博士は、「ほとんどの人にとっての『適切な卵の摂取量』は、1日約1個です。心血管疾患や糖尿病の既往歴がある人であっても、卵を摂取したからといって心血管疾患の発症率や死亡率が増加するということはありませんでした」と語っています。

また、「卵の摂取量と『血中コレステロール値』『卵の成分』『その他の危険因子』といったものとの間に関連性は見つかっていません。この研究結果は堅固なものであり、健康な人や血管疾患を患う人など、広範に当てはめることが可能です」とデフガーン博士は語っています。

by Miguel Andrade

デフガーン博士ら研究チームは、6大陸・50カ国にまたがる約17万7000人を対象とした3つの調査を統合的に分析しています。

分析対象となった調査のひとつは、21カ国・14万6011人の被験者を対象とした大規模疫学前向きコホート研究(PURE)です。PUREの分析結果から、週に1個未満の卵しか食べない人と、週に7個以上の卵を食べる人、7個未満の卵を食べる人などを比較したところ、卵の摂取量と血中脂質・死亡率・心血管疾患といったものの間に有意な関連性はみられませんでした。

また、血管疾患を患う患者3万1544人を対象とした、ONTARGET調査とTRANSCEND調査を分析したところ、前述の分析結果と同様に、卵の摂取量と心血管疾患の発症率や死亡率とのつながりはみられなかったとのことです。

by Sarah Boudreau

研究チームは、「卵は栄養豊富で優れたタンパク質源でもあり、ルテインやゼアキサンチンといった生物活性化合物が含まれている」と指摘。

一部の心血管疾患に関するガイドラインでは、「卵は高コレステロールな食べ物であるため、食べ過ぎると血中脂質に悪影響を与えるので、摂取量を制限すべき」と推奨されているケースがありますが、研究チームは「最近の無作為化試験や動物試験などから、食品から摂取する食事性のコレステロールは血中脂質にほとんど影響を与えないことが明らかになっています」と指摘しています。

なお、アメリカの農務省と保健福祉省が発行している食事ガイドラインでは、2010年以前は1日あたりのコレステロール摂取量を300mg未満にするよう推奨されていましたが、「アメリカ人のための食生活指針 2015-2020」ではコレステロールに関する項目が削除されています。代わりに、2015-2020版では魚介類・赤身肉・鶏肉・卵・豆類(豆とエンドウ豆)・ナッツ・種子・大豆製品などの、さまざまなタンパク質食品を食べることが推奨されています。