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偽の「いいね!」が大量生産される裏側を暴く調査結果が公開中


Instagramの「いいね!」が買える自動販売機が登場したことからも、もはやSNSのいいね!の数は必ずしも正しいわけではないことが知られています。しかし、どのような人がどのようにいいね!を売買しているのかはあまり知られていないところ。そんな中、「Inside the Fake Like Factories」(偽いいね!工場の内側)と題された調査結果が報告されました。

media.ccc.de - Inside the Fake Like Factories
https://media.ccc.de/v/36c3-10936-inside_the_fake_like_factories

以下のムービーからいかにフェイクアカウントが世の中に横行しているのかというプレゼンを見ることができます。


壇上に上がったのは、左からジャーナリストのSvea Eckertさん、セキュリティ研究社のDennis Tatangさん、インターネット活動家でありバンベルク大学学生のPhilip Kreißelさん。今回発表された調査は、この3人によって実施されました。


現代においてSNSのいいね!ボタンは人気や経済的成功の指標であり、Facebookのアルゴリズムにも影響を及ぼします。


しかし、Googleで「偽のいいね!を買う」といったワードで検索すると、その検索結果から世界中で偽のいいね!が売買されているのがわかります。多くの人は「いいね!を買う」という行為について「インドや中国の人々が大量のスマートフォンの前でボタンを押す」というようなイメージを持っているはずですが……


実際には異なります。画面左側のマリアさんはベルリン在住の元警察官で、金欠のためFacebookをクリックするというバイトをしています。1いいね!あたり2~6セント(約2~6円)を得ることが可能です。


これが実際にいいね!を売買することができるドイツのウェブサービス「Paidlikes」のトップページ。


いいね!を押してお金を稼ぎたい人がFacebookアカウントを使って「Paidlikes」にログインすると、以下のような画面が現れます。「いいね!&Button」の下には実際にいいね!を購入しているアカウントが並んでいますが、ここはプレゼンでは詳細が隠されていました。


インタビューに応じてくれた、「いいね!を押す」という行為を行う労働者「クリックワーカー」であるヘラルドさんは、「いいね!を購入する」という行為がもはやあらゆる分野で横行していることを語っています。


調査を行った3人は実際にFacebookアカウントを作り、いいね!を購入してみました。


「いいね!」を購入したのは以下の投稿について。真っ白な画像が何のキャプションも付けられずに投稿されていますが……


200人以上がいいね!を押しています。


クリックワーカーを調査した結果わかったのは、サービスを提供するPaidlikesには3万人以上の登録者がいること、登録には「本物の」アカウントが必要なこと、1いいね!あたり数円が発生すること、さまざまな男女が登録を行っていること、ほとんどの登録者が2つ以上のプラットフォームを用いていること、1カ月の稼ぎは15~450ユーロ(約1820~5万4500円)であることなどでした。


3人は、Paidlikesでいいね!を購入している人はどんな人なのか?ということで続いて調査を行いました。Paidlikesのログイン後のページには、購入者のキャンペーンがリスト化されていますが、それぞれのリンクにカーソルを当てると、ユニークIDが振られているのがわかります。Tatangさんはクローラーを実装し、0~9万までのIDを収集。それらすべてのリクエストをチェックし、リダイレクト先となるソースのURLを明らかにしました。


これが2012年から2019年までの間にいいね!を購入したキャンペーンのリスト。ほとんどがFacebookですがInstagramやYouTube、その他のページもいくつか見られます。


「AfD Gelsenkirchen」というFacebookアカウントもリストに含まれたアカウントの1つ。EckertさんはAfD Gelsenkirchenにインタビューを試みましたが、得られた回答は「AfD GelsenkirchenのファンページがどのようにFacebookのいいね!を購入したのかはわかりません。匿名の寄付の可能性がないわけではありません」というものだったとのこと。


AfD Gelsenkirchenだけでなく、政党もまたいいね!を購入していたことが示されています。


しかし、インタビューへの回答はいずれも「わからない」「私は何もしていない」「説明できない」というものだったそうです。


一方で、起業家であり市議会議員のTanja Kühneさんは……


「いいね!を買ったからといって、それを詐欺と言えるでしょうか?私はこれを詐欺ではなく、コミュニケーションの1つだと思っています」と語りました。


より大局を見てみます。Facebookは「我々はフェイクアカウントと戦っており、多くのアカウントを削除してきた」と報告しています。


Facebookの主張によればFacebookはプラットフォームを完全にコントロールしているとのこと。


しかし、NATO StratComが発表したレポートから、300ユーロ(約3万6000円)あれば3530コメント、2万5750個のいいね!、2万ビュー、5100フォロワーを購入することが可能だと明らかになっています。偽の評価はより安価かつ手の届く存在になっているわけです。


また別のレポートではIoTデバイスを使って自動的にフェイクアカウントが作られていることも明らかになっています。


FacebookのユーザーIDの増加をグラフにすると、2018年以降、特にアカウント数が急増していることがわかります。2020年時点では400億アカウント近くにまで数が膨れあがっています。


次に、いいね!を売買するサービス別に、利用アカウントの作成日を割り出すとこんな感じ。左上の「A」や、右上のPaidlikesでは比較的古いアカウントが使われていることから、正規のアカウントがいいね!の購入に使われていることがわかります。一方で別のサービスである「B」は2017年以降のアカウントが多く、これはボットであるとみられるとのこと。Cはボットとクリックワーカーによる正規のアカウントのミックスだと考えられます。


ある庭園家具店のFacebookアカウントでは、100万以上のいいね!が押されていましたが、どこにでもある庭園家具店が100万いいね!のために大金を払うことは難しいはず。この事実は、「いいね!を買う」という行為がより手軽に、より安価になっていることを示しています。


Facebookは「フェイクアカウントをコントロールしている」と主張していますが、これまでの状況を鑑みると、これは真実とはいえません。


これまでに作られた400億にも上るFacebookアカウントから現存する登録アカウントの数を推定したところ、計算上は2019年7月時点で100億人が登録していることになったとのこと。これは地球人口よりも多い数です。


実際のところ、2019年に作成されたアカウント数と新規のMAUをグラフ(左)にすると、その数がかけ離れているのがわかります。また、2019年に削除された新規アカウントと古いアカウントの数のグラフ(右)からは、削除対象のほとんどが新規アカウントであることが示されています。ここからも、「Facebookはフェイクアカウントを統制している」とはいえず、フェイクアカウントが次々に作られていることがわかります。


調査からいえるのは、「いいね!の数が人気の測定基準としてもはや機能していないこと」「何者かによる操作が行われ、『人気のアイテム』と勘違いさせることによる支出・損失が生まれていること」「人々の信頼がむしばまれていること」だと3人は結論付けました。


このような状況を脱するために人々が今すぐ行えることとして、まず「自覚すること」、そして「このような状況を人々に伝えていくこと」、そして「より多くの知恵を付けること」が呼びかけられています。

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in ネットサービス,   動画, Posted by darkhorse_log

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