ソフトウェア

世界中のPCをウイルスから守った「ノートン先生」は何者だったのか?

by Luigi Rosa

ノートンセキュリティ」はシマンテックがリリースするセキュリティスイートで、特に「ノートン アンチウイルス」は30年もの歴史を誇る老舗のアンチウイルスソフトとして知られています。ノートンシリーズのパッケージには、かつてメガネをかけたドクター風の男性の写真が掲載されており、その風貌からソフトと共に「ノートン先生(Doctor Norton)」という愛称で親しまれていました。しかし、2001年を境にメガネの男性はパッケージから姿を消してしまいました。技術系ブログのTechnologizerが、ノートン先生と呼ばれた男性について解説しています。

Where Have You Gone, Peter Norton? | Technologizer by Harry McCracken
https://www.technologizer.com/2014/06/05/where-have-you-gone-peter-norton/


シャツの袖をまくって腕組みをするノートン先生の写真はこんな感じ。ノートンシリーズのソフトウェアパッケージには、必ずといっていいほどノートン先生の写真が掲載されていました。

by Vera Perry

パッケージに写っている男性の正体はピーター・ノートン氏。ノートン氏はピーター・ノートン・コンピューティングというソフトウェア企業を立ち上げ、1981年に発表されたIBM PC向けのユーティリティソフト「ノートン・ユーティリティーズ」を開発し、大成功を収めた人物です。

ノートン氏はIBM PC向けプログラミングの教科書も出版しており、この本の表紙で既にノートン氏はおなじみの腕組みポーズを披露しています。


ピーター・ノートン・コンピューティングは1990年におよそ7000万ドル(当時のレートで約90億円)でシマンテックに売却され、ノートン氏はノートン・ユーティリティーズの開発から離れました。しかし、その後もノートン氏は「PCメンテナンスの生きたシンボル」として注目を集め、自身の名を冠するソフトのパッケージに写るのが定番となりました。


1991年に掲載されたノートン アンチウイルスの雑誌広告。


以下の画像の中央はノートン アンチウイルスのデスクトップアイコンで、ノートン氏がおなじみのポーズと共に再現されています。


しかし2001年以降、シマンテックはノートンシリーズのパッケージにノートン氏の肖像を載せなくなり、代わりにカラフルなシャツを着て笑顔を浮かべる男女がPCと共にパッケージに載るようになりました。なぜシマンテックがノートン氏の写真をパッケージに載せなくなったのかは公式には発表されていませんが、Technologizerに寄せられたコメントによると「シマンテックはノートン氏の写真を載せるために毎年ノートン氏に高額のギャランティを支払っており、このコストを削減するため」という説があるそうです。


2020年1月時点でリリースされているノートンシリーズのパッケージが以下。ソフトウェアを買い切りで販売するのではなく、ライセンスの年間契約方式での販売形態となったことで、実物のパッケージは消滅。イメージカラーは黄色のままではあるものの、パッケージイメージからは人物写真すら排除され、非常にシンプルなデザインとなりました。。


ノートン氏はシマンテックにピーター・ノートン・コンピューティングを売却した後、記事作成時点では、ソフトウェア業界からは引退し、ソフトウェア開発者としては公に出ていません。ノートン氏は会社を売却した資金で財団法人を設立し、慈善活動を行いながら、現代美術専門の美術商・コレクターとして活躍しているそうです。1999年には、ノートン氏は「ライ麦畑でつかまえて」で知られる作家のJ・D・サリンジャーの書簡を15万6500ドル(当時のレートで約1900万円)で落札し、「この手紙はサリンジャーに返還します」と述べて話題となりました。

Technologizerのライターであるハリー・マクラッケン氏は、「ノートン氏の名前は世界にとってはPCユーティリティと同義の存在だったかもしれませんが、ノートン氏自身は特にソフトウェア業界に固執していませんでした。ノートンシリーズのパッケージノートン氏の写真が消えた後、ノートン氏と話す機会がありました。ノートン氏は、自分がもう『ソフトウェアのパッケージに載る男』ではなくなっても幸せそうにしていました」と語っています。

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in ソフトウェア, Posted by log1i_yk

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