ハードウェア

Intel製チップとAMD製チップを搭載した別々のモデルが存在する稀有なノートPC「Surface Laptop 3」でベンチマークした結果、より優れたチップはどっち?


2019年10月にMicrosoftが開催したSurface Eventの中で、Surface Laptopの第3世代となる「Surface Laptop 3」が発表されました。このSurface Laptop 3には13.5インチモデルと15インチモデルの2モデルが用意されているのですが、それぞれIntelとAMDという競合企業のプロセッサを内蔵しているという稀有な事例になっています。これはIntel製プロセッサとAMD製プロセッサを比較する絶好の機会だということで、技術系メディアのAnandTechが徹底比較しています。

The Microsoft Surface Laptop 3 Showdown: AMD's Ryzen Picasso vs. Intel's Ice Lake
https://www.anandtech.com/show/15213/the-microsoft-surface-laptop-3-showdown-amd-picasso-vs-intel-ice-lake

Microsoft製のノートPC「Surface Laptop 3」は、GIGAZINEでもレビュー済み。見た目がどんな風になっているのかは、以下の記事をチェックすればよくわかります。

15インチのディスプレイ搭載のスリムなMicrosoft「Surface Laptop 3」フォトレビュー - GIGAZINE


2モデル用意されているSurface Laptop 3のスペックはそれぞれ以下の通りです。

◆13.5インチ
本体サイズ:308mm×223mm×14.5mm
ディスプレイ:13.5インチ PixelSense ディスプレイ
解像度:2256×1504(201ppi)
メモリ:8GB/16GB
プロセッサ:クアッドコア第10世代 Intel Core i5-1035G7/クアッドコア第10世代 Intel Core i7-1065G7
OS:Windows 10 Home
ストレージ容量:28GB/256GB/512GB/1TB(SSD)
バッテリー駆動時間:通常のデバイス使用時間は最大11.5時間
グラフィックス:Intel Iris Plus グラフィックス
ワイヤレス機能:Bluetoothワイヤレス5.0テクノロジー、Wi-Fi 6: 802.11ax 互換

◆15インチ
本体サイズ:339.5mm×244mm×14.69mm
ディスプレイ:115 インチ PixelSense ディスプレイ
解像度:2496×1664(201ppi)
メモリ:8GB/16GBRAM
プロセッサ:Radeon Vega 9 グラフィックス Microsoft Surfaceエディション搭載 AMD Ryzen 5 3580U/Radeon RX Vega 11 グラフィックス Microsoft Surface エディション搭載 AMD Ryzen 7 3780U
OS:Windows 10 Home
ストレージ容量:128GB/256GB/512GB/1TB(SSD)
バッテリー駆動時間:通常のデバイス使用時間は最大11.5時間
グラフィックス:AMD Radeon Vega 9 グラフィックス Microsoft Surfaceエディション/AMD Radeon RX Vega 11 グラフィックス Microsoft Surfaceエディション
ワイヤレス機能:Bluetoothワイヤレス5.0テクノロジー、Wi-Fi 5:802.11ac 互換

15インチSurface Laptop 3に搭載されているAPUは、Zen+アーキテクチャーをベースに12nmプロセスで製造されたPicasso世代のもの。プロセッサのコア数は2~4で、最上位モデルのピーク時の動作周波数帯域が4.0GHzです。Microsoftとの共同開発により誕生したオリジナルエディションということで、グラフィックスコアの数は通常モデルよりも1つ多くなっており、AMD Radeon Vega 9 グラフィックス Microsoft Surfaceエディションが「9」個、AMD Radeon RX Vega 11 グラフィックス Microsoft Surfaceエディションが「11」個搭載となっています。

なお、Radeon RX Vega 11 グラフィックス Microsoft Surface エディション搭載のAMD Ryzen 7 3780Uのスペックは以下の画像の通り。


AnandTechはPicasso世代のAPUについて、「Picassoは堅実な製品であり、AMD製プロセッサを積んだノートPCに焦点を当てた取り組みを大きく後押ししました。Picassoの前世代のAPUであるRaven Ridgeではアイドル状態での消費電力が非常に高いことに苦しんでいましたが、AMDはPicassoでこの問題をある程度克服することに成功しています」と記しています。

ただし、Picasso世代のAPUはメモリにおいてDDR4-2400しかサポートしていないものの、Intelは2019年に入ってようやくLPDDR4Xに対応したため、Intelプロセッサを積んだSurface Laptop 3ではメモリがLPDDR4Xに対応しているとのこと。

なお、MicrosoftはSurface Laptop 3の公式ページ上で、15インチモデルが搭載している「カスタム AMD Ryzen Microsoft Surface エディション」について、「市場に出回っている AMD Ryzen モバイル プロセッサよりも1つ多いグラフィックスコアが内蔵されています」と説明しています。また、AMD Ryzen 7 Microsoft Surface エディション プロセッサについて「15インチクラスで最速」、AMD Ryzen 5 Microsoft Surface エディション プロセッサについては「Laptop 2より2倍以上高速」と表現しています。

加えて、AMDとプロセッサを共同開発した経緯については以下のように説明しています。

15インチSurface Laptop 3に適したプロセッサを探していた時、タブやAdobe Premiere Rushのような創造性アプリ、またはRocket LeagueやLeague of Legendsのような人気ゲームをプレイできるレスポンシブ マルチタスクスのために、単一のプロセッサで最高のグラフィックス パフォーマンスが必要でした。デバイスを1542g(3.40ポンド)未満に保ち、長いバッテリー寿命を維持するには、プロセッサを15W未満にする必要がありました。

1つのプロセッサが際立っていました。AMD Ryzen モバイルプロセッサです。このプロセッサ設計の選択肢は、MicrosoftおよびAMDとの確立された複数年にわたるパートナーシップに基づいていて、Xbox Oneカスタム プロセッサを使用して、世界クラスのグラフィックス パフォーマンスとエクスペリエンスを数千万にまで引き上げました。その結果、創造的なアプリケーションとグラフィックスのパフォーマンスにおいて、カテゴリ初の(超薄型ラップトップ)が誕生したのです。


これに対して、13.5インチモデルに積まれているIntel Core i7-1065G7のスペックは以下の通り。第10世代Intel CoreプロセッサであるIce Lakeが採用されています。CPUコアには次世代CPUアーキテクチャ「Sunny Cove」が採用されており、「Ice LakeはSkylakeよりもIPCが18%向上した」とMicrosoftは主張しています。なお、製造プロセスは10nmです。


AnandTechは「10nmプロセスは14nmプロセスほど最適化されておらず、最上位のIntel Core i7-1065G7のターボ・ブースト利用時の最大周波数はわずか3.90GHzで、Intelの14nmプロセスで製造されたプロセッサの最上位モデルよりも20%も低い」と指摘。そのため、「Intelの最新CPUは古いCPUより高速ではあるものの、その数字はそれほど明確なものではありません。IPCが18%向上しますが、最大周波数は20%も低下しているため、全体的な向上点はそれほど大きくありません」とも記してます。

IntelのGPU統合型のチップは、これまでかなりの期間ノートPCで使用するには十分ではあるものの、AMDのグラフィックスと比較するとはるかに能力不足なものが多かったのが事実です。しかし、第10世代Intel Coreプロセッサでは、パフォーマンス改善のためにGen 11グラフィックアーキテクチャを採用。さらに、チップ内にGPU用のスペースをこれまでよりも多く確保しており、これにより大幅な改善がみられるそうです。

さらに、前述の通り第10世代Intel CoreプロセッサではLPDDR4Xに対応しているため、より多くのメモリ帯域幅(最大60.6GB/s)を確保できるだけでなく、省電力性能も高め。また、Thunderbolt 3の幅広いサポートや「タブレットのようなスタンバイ状態からの復帰」などもサポートしているため、「これまでのIntel製品よりもはるかに優れた製品になっている」とAnandTechは記しています。


2つのチップセットのパフォーマンスを比較するために使用されたのは、SPECのベンチマークである「SPEC2017-ST」。

シングルスレッドのパフォーマンスは以下の通り。青がSurface Laptop 3に採用されているIntel Core i7-1065G7、赤が同じくSurface Laptop 3に採用されているAMD Ryzen 7 3780U。なお、水色はデスクトップ向けのIntel i9-9900K、オレンジ色がデスクトップ向けのAMD Ryzen 9 3950Xのスコアを示しています。スコアは数値が高いほど優れているということを示しており、あらゆるテストにおいてIntel Core i7-1065G7がAMD Ryzen 7 3780Uを圧倒。Intel Core i7-1065G7はデスクトップ向けのチップセットにも比肩するスコアを叩き出しているのに対して、AMD Ryzen 7 3780Uはデスクトップ向け製品とはかなり明確にスコアに開きが出ています。

整数演算のベンチマーク結果。


浮動小数点演算のベンチマーク結果。519.lbm_rのスコアはAMD Ryzen 7 3780UがIntel Core i7-1065G7よりも2倍以上遅いということを示しています。これについてAnandTechは、ベンチマークテストにはメモリ帯域幅とサブシステムに制限があることから、「AMD Ryzen 7 3780Uの低速なDDR4-2400メモリがボトルネックになっている可能性がある」と記しています。


以下のグラフは整数演算のベンチマーク平均(上)と浮動小数点演算のベンチマーク平均(下)をまとめたスコア。


続いてマルチスレッドパフォーマンスを比較した結果が以下のグラフ。青色がIntel Core i7-1065G7、赤色がAMD Ryzen 7 3780Uのスコアを表しています。

整数演算のベンチマーク結果では、シングルスレッドパフォーマンスよりも明らかに差が埋まっており、テストの内容によってはAMD Ryzen 7 3780Uがスコアで上回ることも。ただし、基本的にはIntel Core i7-1065G7が優勢といったところ。


浮動小数点演算時のベンチマーク結果では、Intel Core i7-1065G7がさらに優勢に。


以下のグラフは整数演算のベンチマーク平均(上)と浮動小数点演算のベンチマーク平均(下)をまとめたスコア。


Intel Core i7-1065G7よりもAMD Ryzen 7 3780Uの方が消費電力は少ないそうですが、ベンチマーク結果では明らかにIntel製チップセットが好成績を出しています。そのため、ユーザーからは「まだまだ現状のAMDのモバイル向けチップではIntelと競争するのは難しい」といった声や、「IPCだけでなくメモリ帯域幅の差も大きい」などといった声が挙がっていました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
15インチのディスプレイ搭載のスリムなMicrosoft「Surface Laptop 3」フォトレビュー - GIGAZINE

Surface Pro XやSurface Laptop 3など「Surface Event」で発表されたMicrosoftの新製品まとめ - GIGAZINE

第10世代Intel Coreを搭載したMicrosoftの2in1ノートPC「Surface Pro 7」フォトレビュー - GIGAZINE

Microsoftが折りたたみ式デュアルディスプレイWindowsPCの「Surface Neo」を発表 - GIGAZINE

Microsoftの折りたたみスマホ「Surface Duo」がAndroid搭載で登場 - GIGAZINE

in ハードウェア, Posted by logu_ii

You can read the machine translated English article here.