Appleが退職後に新企業を設立して58億円を調達したiPhoneやiPadプロセッサの元開発者を訴える

by succo

iPhone・iPadのマイクロプロセッサ開発を担当した元チーフアーキテクトであるジェラード・ウィリアムズ氏は、2019年2月にAppleを退職し、同じく元Appleの開発者らとNuviaというチップ開発企業を設立しました。Nuviaは2019年11月に5300万ドル(約58億円)もの資金調達に成功したことを発表していますが、以前の勤め先であるAppleがウィリアムズ氏を「雇用契約に違反した」として訴えたと報じられています。

Apple sues iPhone CPU design ace after he quits to run data-center chip upstart Nuvia • The Register
https://www.theregister.co.uk/2019/12/09/apple_nuvia_ceo_suit/

Apple Sues Ex-Chip Designer, Who Says Apple Spied On His Texts
https://gizmodo.com/apple-sues-former-chip-designer-who-says-apple-also-sp-1840339300

ウィリアムズ氏は10年近くにわたってAppleの高性能マイクロプロセッサ開発に携わってきた人物で、iPhoneやiPadに搭載されているAシリーズチップの開発リーダーも務めていました。そんなウィリアムズ氏が、同時期にAppleに在籍していたジョン・ブルーノ氏、マニュ・グラティ氏らと共に新しく設立したのが、チップ開発企業のNuviaです。ブルーノ氏とグラティ氏は2017年にAppleを退社してGoogleへ転職しましたが、2019年の前半にGoogleを退職したとのこと。

Nuviaはすでに多数の投資会社などから合計5300万ドルもの調達に成功しており、従業員数も2019年11月の時点で60人を超えています。かつて半導体分野は新興企業にとって手を出しにくい分野でしたが、近年では扱うデータ量の爆発的な増大や演算速度向上の物理的な限界などの課題が山積みとなっており、新規参入者を増やしているそうです。

元Appleの開発者らを中心としてシリコンバレー全域にまたがる人材を集めたNuviaですが、なんとウィリアムズ氏の元勤務先であったAppleが、2019年8月にウィリアムズ氏を訴えていたことが判明しました。Appleは退職後に新企業を設立したウィリアムズ氏が、雇用契約および忠実義務に違反したと主張しています。

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カリフォルニア州のサンタクララ高等裁判所に提出された(PDFファイル)書類によると、Appleは「ウィリアムズ氏はAppleに勤務している最中に、自分のビジネスを開始するという計画を隠して準備を進め、新企業設立時にもAppleの同僚を引き抜こうと画策した」と主張しています。

また、ウィリアムズ氏はNuviaが将来的にAppleから買収されることを期待して新企業の設立に踏み切ったとAppleは述べており、「残念ながらウィリアムズ氏はAppleで取り組んでいたテクノロジーをAppleのために活用するのではなく、テクノロジーを活用してAppleから利益を得る機会を密かに検討していました」とAppleは指摘。ウィリアムズ氏はNuviaで開発されるテクノロジーがAppleにとって必要なものとなることを見据え、「AppleはNuviaを買収する以外の選択肢がないと信じていました」とAppleは非難しています。

Appleはウィリアムズ氏の行動が雇用契約および忠実義務に違反していると主張し、Nuviaの業務の差し止めや損害賠償を請求しています。ところが、ウィリアムズ氏が2019年11月に裁判所へ提出した(PDFファイル)書類でAppleに反論。Appleの主張には法的根拠がなく、雇用契約の条項はカリフォルニア州の法律の下では有効でないと主張しました。

また、ウィリアムズ氏はAppleが忠実義務違反の証拠として提出した、自分がほかのApple従業員やNuviaの設立メンバーと交わしたメッセージについて、「Appleによって違法に収集されたものです」と主張。「Appleは従業員のいずれかがテキストメッセージの記録に同意したことを示していません」と述べ、Appleのメッセージに証拠能力はないと抗弁しています。

The Registerはこの件についてAppleとNuviaにコメントを求めましたが、記事作成時点で回答はなかったとのこと。なお、両者の公聴会は2020年1月21日に開催される予定です。

by Stuart Maxwell