サイエンス

プラスチックごみを減らすためになぜキノコが役立つのか?

by Егор Камелев

既に生産されてしまったプラスチック製品のごみが環境を破壊しないようにする試みとして、プラスチックを分解可能な酵素を生み出す極限微生物イモムシに着目した研究が進められています。そんな中、ニューヨークを拠点とするバイオテクノロジーベンチャーのEcovative Designが、キノコを利用してプラスチックごみを減らす取り組みをスタートさせました。

Ecovative Design
https://ecovativedesign.com/

This company is replacing plastic packaging with the root structure of mushrooms - CNN
https://edition.cnn.com/2019/11/13/tech/ecovative-mission-ahead/index.html

Ecovative Announces $10 Million in Capital for Launch of launch of Mycelium Foundry - vegconomist - the vegan business magazine
https://vegconomist.com/companies-and-portraits/ecovative-announces-10-million-in-capital-for-launch-of-launch-of-mycelium-foundry/

キノコというと、多くの人がスーパーに売られているシイタケのように傘や柄がある子実体を思い浮かべますが、Ecovative Designが注目しているのは植物における根に相当する菌糸体です。Ecovative Designはキノコの菌糸体を自由な形状にすばやく成長させる技術により、プラスチックに代わるキノコ由来の素材を開発することに成功しました。

これが、Ecovative Designがキノコを使って作った梱包材であるMycoCompositeで、発泡スチロールにように使用することができます。MycoCompositeの製造に必要なのは、廃棄物になるような木材チップと、わずかな水と電力だけ。しかも、耐水性かつ難燃性というキノコならではのメリットもあります。


MycoCompositeの最大の特長は、最終的には焼却して埋め立てるしかないプラスチック製品とは違って、土の上に置くだけで簡単に分解されて土に返ることです。Ecovative DesignのCEO兼共同設立者であるEben Bayer氏は、「プラスチック廃棄物は環境を汚染しますが、キノコ由来の素材は土壌を汚染するのではなく栄養素になります」と話しました。


キノコが持つ可能性は梱包材だけではありません。菌糸体を繊維化させた「MycoFlex」も開発されています。


MycoFlexは本物の革製品のように加工できるので、植物由来のバッグやジャケットを作ることができます。


また、Ecovative Designの食品部門から独立したAtlast Foodは、100%植物由来のベーコンであるAtlastの開発を進めています。


Ecovative Designは目下、1000万ドル(約11億円)の研究費を投じて、キノコの育成速度を10倍に加速できる研究を進めているとのこと。Bayer氏はアメリカのテレビ局CNNの取材に対し「キノコは無限の可能性を秘めています。私の夢は、いつか菌糸から毛細血管を形成して、人間の細胞を使った人工肺などの臓器を作り出すことです」と話しました。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1l_ks

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