サイエンス

「ヴィーガンスパイダーシルク」など使い捨てプラスチックの代わりになる5つの新技術


レジ袋やペットボトルなどの使い捨てプラスチックを減らすための取り組みが世界規模で行われており、スターバックスなど一部の外食チェーンではプラスチック製のストローが廃止されています。スターバックスではプラスチックストローの代わりに紙ストローが採用されていますが、これ以外にもさまざまなプラスチックの代替品が登場しており、その中でも有力なプラスチックの代替候補を海外メディアのInverseが挙げています。

"Vegan spider silk" and 4 other sustainable alternatives to single-use plastics
https://www.inverse.com/science/sustainable-alternatives-to-single-use-plastics

プラスチックは温室効果ガスを排出する化石燃料を使用して作られるため、気候変動の一因とされています。研究者の推計によるとプラスチックの生産および輸送により、年間で1250万~1350万トンの温室効果ガスが排出されているそうです。

また、アメリカ科学振興協会のレポートによると、1950年代以降、全世界で累計91億トン以上のプラスチックが生産されており、その79%は埋立地あるいは自然環境に廃棄され、リサイクルされたのはわずか9%だそうです。2021年3月に発表された研究によると、2015年に生産されたプラスチックの総量は3億8000万トンで、その量は2050年までに2倍にもなると予想されています。

前述の通り、日常的に廃棄されるプラスチックのほとんどは最終的に埋立地で処分されます。しかし、プラスチックを自然環境で分解するには、約200年もかかります。このように自然環境でプラスチックが分解されないことも問題となっており、特にプラスチックが川や海を流れて微小なマイクロプラスチックとなり海洋汚染に影響していることが、近年問題視されています。

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そんな気候変動や環境汚染に多大な影響をおよぼしているプラスチックの代替品として期待されている5つの材料を、Inverseが挙げています。

◆1:ヴィーガンスパイダーシルク


ケンブリッジ大学の研究グループが、自然界で最も強力な材料のひとつである「クモの糸」の特性を模倣したポリマーフィルムを作成しました。このポリマーフィルムは植物性タンパク質を原料に、クモの糸を模倣したものであるため「ヴィーガンスパイダーシルク」と呼ばれています。

ヴィーガンスパイダーシルクは既存のプラスチックと同程度の強度を有しているだけでなく、退色のない構造色を追加したり、耐水性コーティングを付与したりすることも可能です。また、他のバイオプラスチック材料などは分解するのに堆肥化設備などを必要とする一方で、ヴィーガンスパイダーシルクは自然由来の材料に化学製品を加えることなく作成することができるため、家庭でも100%堆肥化することが可能です。

ヴィーガンスパイダーシルクはケンブリッジ大学発のバイオ企業であるXamplaにより、使い捨てプラスチックの代替品として商品化されます。Xamplaによるヴィーガンスパイダーシルクは、2021年後半には食器洗い機用のタブレットや洗濯洗剤用のカプセルといった、日用雑貨で使用されるプラスチックの代用品として市場に登場予定です。


◆2:食用植物包装


海藻は持続可能なスーパーフードとして人気がありますが、それだけでなくプラスチックの有望な代替品としても期待されています。

スタートアップのNotplaは、海藻やその他の植物を用いた「生分解性包装」を製造しており、この生分解性包装は4~6週間ほどで生分解可能。また、人間が食べることもできます。Notplaは生分解性包装に飲料やソースを入れて「Ooho」として販売しており、「食べられる水」として日本でも注目を集めました。

Scientists have created edible water - YouTube


◆3:次世代の生分解性プラスチック
生分解性プラスチックは微生物の助けを借りることで分解することが可能になるプラスチックです。すべての生分解性プラスチックがそうというわけではないものの、一部は堆肥化も可能、つまりは化学燃料ではなく有機材料から製造されます。

ただし、すべての生分解性プラスチックが完全な生分解性を有しているわけではありません。多くの生分解性プラスチックは巧妙なマーケティングにより生み出されたものであり、「完全に分解されるのに数十年かかるケースもある」とInverseは指摘しています。


そんな生分解性プラスチックの中でも特に有望なのが、2021年4月にカリフォルニア大学バークレー校の科学者たちが開発した、熱と水だけで分解することが可能な生分解性プラスチックです。

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◆4:コーヒーかす


2020年、横浜国立大学の研究者が、コーヒーかすからセルロースナノファイバー(CNF)を生成する方法を発表しました。セルロースナノファイバーは、植物を由来とする非常に小さなセルロース繊維で、軽量で強度が高く、温度変化による伸縮も小さく環境への負荷も小さいという特徴を有しています。

コーヒーかすからセルロースナノファイバーを生成する方法を編み出したのは、横浜国立大学大学院で生物物理化学・構造生命化学の研究を行う川村研究室の川村出准教授らの研究チーム。同研究チームへのインタビューが以下のページに掲載されています。

コーヒー粕からつくるセルロースナノファイバー。横浜国大発の循環型イノベーション | Circular Yokohama - 横浜のサーキュラーエコノミーを加速する
https://circular.yokohama/2020/08/07/y-kokudai-coffee/


◆5:キノコ由来の生体材料


キノコに関する技術を使用してパッケージングや建築材料を作成しているEcovative Designは、2006年にキノコの根の部分である「菌糸体」を使用して、プラスチックに代わる堆肥化可能な生体材料として「MycoComposite」を発明しました。

MycoCompositeはプラスチックだけでなくパッケージ内の緩衝材兼ケースとしても使用されています。

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in サイエンス,   動画, Posted by logu_ii

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