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インターネット誕生50周年に振り返る「インターネットの誕生秘話」とは?

By geralt

1969年10月29日、インターネットの前身となるARPANETが開発されました。テクノロジーに関するビジネスマガジンFast Companyがインターネットの50周年を記念して、「ARPANETが誕生するまでの経緯」について報じています。

The 50th anniversary of ARPANET, the internet’s predecessor
https://www.fastcompany.com/90423457/50-years-ago-today-the-internet-was-born-in-room-3420

ARPANETの誕生の背景には、アメリカとソビエト連邦間の冷戦の存在がありました。1957年10月4日、ソビエト連邦が世界初となる人工衛星「スプートニク1号」の打ち上げに成功。アメリカ国内に「科学技術においてソビエト連邦に対して遅れをとっている」という衝撃が走ります。後年では、この衝撃は「スプートニク・ショック」と呼ばれています。


1958年1月、アメリカはソビエト連邦の躍進への対抗策として、最先端科学技術を短期間で軍事技術に転用させるための組織「高等研究計画局(Advanced Research Projects Agency、ARPA)」を打ち出しました。ARPAは1996年に改称を行い、以降は「アメリカ国防高等研究計画局(DARPA)」として知られています。

1960年代、ARPAは研究の一環としてコンピューター開発に資金を投じていましたが、当時のコンピューターは「コンピューターごとに言語が異なる」という問題を抱えていました。この問題に直面したのがインターネットのパイオニアとも呼ばれるロバート・テイラー氏です。テイラー氏のオフィスには3種の異なるコンピューターが存在しており、「ある大学と通信中、別の大学と通信する必要が出た場合、別の端末の前までわざわざ移動し、ログインして連絡する必要があった」とのこと。テイラー氏はこの煩わしさを改称するため、「3つの端末で別個に通信するのではなく、1つの端末でそれぞれ別の言語を備えた3つの端末と通信する」というアイデアを考案しました。

By Mark Sullivan

また、実務的な側面からも端末同士のネットワークの必要性が高まっていました。タイラー氏は各大学の研究者から「もっと高性能なコンピューターが欲しい」というリクエストを受けていましたが、その一方で「各大学ごとにコンピューターの能力を無駄にしているケースがある」という事実も知っていたとのこと。

この無駄の原因の1つが時差です。アメリカは広大であるため、アメリカ西海岸に位置するカリフォルニア州のスタンフォード研究所ではコンピューターの性能をフルに使っていても、東海岸に存在するマサチューセッツ工科大学(MIT)では営業時間外でコンピューターを使っていないという場合がみられました。そのため、アメリカ国内に置かれたコンピューターを総計してみると「こちらでは性能が不足しているが、あちらでは余っている」という状況になっていたとのこと。もう1つの原因は、コンピューターが備えるソフトウェアです。当時の状況では、ユタ大学が最先端のグラフィックソフトを開発したとしても、そのグラフィックソフトを使うには新しいコンピューターを購入するようにARPAに申請するか、ユタ大学に向かうしかありませんでした。こういった問題を解決してくれるものが、コンピューター同士の相互接続だったわけです。

By stokkete

1966年、ARPAの情報技術処理局長に就任したタイラー氏は、離れた場所にある異なるコンピューター同士が接続してコンテンツやリソースを共有するネットワーク言語とプロトコルである「ARPANET」の開発を試みます。この研究は、「破壊によってもダウンしない破壊不可能なネットワークを開発するため」という理由で、ARPAの弾道ミサイル開発資金の一部が割り当てられたとのこと。

ARPANETはカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で計算機科学を教えていたレナード・クラインロック氏の「キューイング理論」に基づいて開発されました。キューイング理論は、さまざまな通信セッションからのデータパケットに動的なリンクを構築する方法を数学的に分析したものでした。

1969年、クレインロックが率いる研究チームは、ルーターの原形となったネットワーク間のパケット転送を制御する「Interface Message Processor(IMP)」を開発。IMPとコンピューターを接続するインターフェイスも開発され、IMPはUCLAに置かれたSDS Sigma 7というコンピューターと、スタンフォード研究所SDS 940というコンピューターに接続されました。


「ARPANETを使って最初の通信を行う」というプロジェクトの締め切りは1969年10月31日に設定されていました。研究チームは毎日15時間に及ぶ労働を続け、締め切り2日前の10月29日にプレアルファ版のテストにこぎつけます。

ARPANET初となるメッセージが送信されたのは、1969年10月29日午後10時30分のこと。UCLAの学生プログラマーだったチャーリー・クライン氏がARPANETで「login」というコマンドを送信し、受信側のスタンフォード研究所のSDS 940が「login」というコマンドを認識、特定のモードが起動することを確認する目的で実験が行われました。クライン氏が実験を開始して、「l」と「o」という文字を送信、SDS 940上で受信が確認されます。しかし、「lo」を送信した段階でスタンフォード大学側のSDS 940がクラッシュ。その結果、ARPANETで初めて送信されたメッセージは「lo」となりました。

ARPANETは初のメッセージを送信した後の1カ月ほどの間にUCLA、スタンフォード研究所、カリフォルニア大学サンタバーバラ校、ユタ大学との相互接続を確立させます。そして1970年代と1980年代を通して政府、大学、その他の研究機関を通してネットワークは拡大し続けました。


1969年、ARPANETの誕生に際してUCLAは、「コンピューターネットワークはまだ初期の段階にあります。しかし、将来的に技術が成熟して、電気や電話のように、どこの家庭やオフィスにまで普及するでしょう」とクラインロック氏の言葉を引用して宣伝しました。今日では、スマートフォンの普及と無線通信技術の発達により、インターネットは家庭やオフィスだけでなく、世界中のほとんどどこにいても利用できるようになっています。

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in ネットサービス, Posted by darkhorse_log

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