1年強で価格が2倍になり金よりも高価になった貴金属「パラジウム」とは?
by kschneider2991
パラジウムという金属は金・銀・プラチナなどと共に貴金属に分類され、歯科治療の銀歯(インレー)に使われる金銀パラジウム合金や、金やプラチナの割金として使用されています。そんなパラジウムの価格が急激に上昇しており、金の価格を上回ってプラチナの2倍近い価格になったことが話題となっています。
Why Palladium Is Suddenly a More Precious Metal: QuickTake - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2019-10-28/why-palladium-is-suddenly-a-more-precious-metal-quicktake-k2ap4ryc
Palladium climbs to $US1,800 an ounce peak - 9Finance
https://finance.nine.com.au/business-news/palladium-climbs-to-us1-800-an-ounce-peak/3c2d8032-4ade-4577-8e29-07ebbd365429
パラジウムの価格は、2018年8月の時点では1トロイオンス(約31.1g)あたり900ドル(約9万9000円)を下回っていましたが、2019年10月には1オンスあたり1800ドル(約20万円)近くまで上昇。金の価格は1オンスあたり1490ドル(約16万円)ほど、プラチナは1オンスあたり920ドル(約10万円)ほどであるため、パラジウムは金の価格を上回り、プラチナの2倍近い価格となっています。2019年10月28日には1オンスあたりのパラジウム価格が1800ドルを突破し、2019年だけでも43%の値上がりを記録しているとのこと。
産出されたパラジウムの多くは貴金属としてではなく、自動車の排気ガス浄化システムの触媒として用いられています。パラジウムを用いたシステムは、自動車が排出する有毒化学物質を毒性の低い二酸化炭素と水蒸気に変換するとのことで、主にガソリン車に好んで搭載されています。同じ貴金属のプラチナもディーゼル車向けの排気ガス浄化システムに使われますが、こちらは近年の排ガス規制強化によるディーゼル車の減産を受け、需要が減少傾向にあるそうです。
パラジウムの主要な産出地はロシアと南アフリカで、年間産出量はおよそ200トンと、金と比較して10分の1以下に過ぎません。また、パラジウムは基本的にプラチナやニッケルの副産物として産出されるため、産出量は主産物の産出動向によっても左右されてしまいます。モントリオール銀行の貴金属取引専門家であるTai Wong氏は、「パラジウムは持続的かつ継続的に不足しています」と、近年の高騰についてコメントしました。
by Wikimedia Commons
Bloombergはパラジウムの高騰について、需要と供給のバランスが合っていないことが一因だと指摘。各国で自動車の排気ガス汚染を取り締まる政府の動きが活発化し、自動車メーカーは排気ガス浄化システムに使用するパラジウムの量を増やす必要に迫られています。
その一方で、副産物として産出されるパラジウムは2019年まで8年連続で需要を下回る量しか産出されないため、価格が急激に上昇しているとのこと。2018年8月以来は投機的な動きも活性化しているものの、取引後に素早く購入者のもとへ輸送される取引におけるパラジウムの価格は、輸送が遅い取引よりも高値がついていることから、製造業者がパラジウムを奪い合っていることも間違いないそうです。
自動車メーカーで使用される希少な金属の需要が供給を上回った場合、価格が急上昇するというケースは過去にもみられ、プラチナは1998年からの10年間で500%もの値上がりを記録しました。Bloombergは、自動車メーカーがパラジウムを用いた排気ガス浄化システムに見切りを付け、別の触媒を用いたシステム開発に乗り出す可能性もあると述べていますが、新システムの開発には時間がかかるため、自動車の値上がりとして消費者に影響が及ぶかもしれないと指摘しています。
by Life Of Pix
Wong氏はパラジウムの高騰傾向について、「急激な価格上昇はある程度の段階で反発する可能性を示唆していますが、見通しは堅調です。道のりはスムーズではないかもしれませんが、パラジウムは2020年に2000ドル(約22万円)かそれ以上の価格になることもあり得ます」と述べました。
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