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アメリカ空軍パイロットはなぜ「Garmin」の腕時計を使うのか?


時計メーカーのGarminはGPSや多数のセンサーを搭載する時計を扱っており、ライトユーザーのほか、アスリートにも愛用者が多いブランドです。実はアメリカ空軍パイロットもGarminの時計を使っていることが多いのですが、これにはある「事件」が深く関わっています。

Update: Here’s Why We Saw So Many Garmin Smart Watches at MCAS Miramar – The Aviationist
https://theaviationist.com/2019/10/23/update-heres-why-we-saw-so-many-garmin-smart-watches-at-mcas-miramar/

ライターであり写真家、ジャーナリストとして活躍するトム・デメリー氏は「ミラマー海兵隊航空基地の戦闘機パイロットはどんな腕時計をつけているのか?」と疑問に思ったことから非公式の調査を実施しました。デメリー氏がパイロットの写真から分析した結果、最も人気のある時計ブランドはGarminG-SHOCKであるという結論が出ました。特に、GarminのGPS付きスマートウォッチの使用者は多く存在したとのこと。


2つの時計は耐久性があり、軍での使用に適しています。しかし、実はGarminの時計がパイロットに広く使われるようになったのには、ある理由がありました。

Garminの時計がパイロットに使われるようになったのは、2018年1月29日に行われた戦闘機「EA-18G」の飛行中に起こったある事件がきっかけです。ジャーナリストのジョゼフ・トレヴィック氏とデイビット・ラーター氏が、この事件について報じています。

Freezing Navy EA-18G Crew In Ice Filled Cockpit Navigated Home Using Their Smart Watches - The Drive
https://www.thedrive.com/the-war-zone/18762/freezing-navy-ea-18g-crew-in-ice-filled-cockpit-navigated-home-using-their-smart-watches

Flying blind and freezing: Navy investigating terrifying EA-18G Growler flight
https://www.defensenews.com/breaking-news/2018/02/23/flying-blind-and-freezing-navy-investigating-terrifying-ea-18g-growler-flight/


EA-18Gはウィッビー島海軍航空基地から中国湖海軍航空基地までの移動中、高度7.6kmを飛行している際に壊滅的なトラブルに見舞われました。機体トラブルが発生して数分内にコックピットの気温はカ氏0度(セ氏マイナス18度)以下になり、機内に発生した結露はまたたく間に氷の層へと成長しました。これによりパイロットの視界は悪化。また氷により操縦ができなくなるとともに、パイロットには低体温症の症状が出て来たとのこと。

このとき、計器パネルが氷の層に覆われていたため、航空管制の指示に対し、パイロットは進行方向と高度を確認するためにGarminの時計を使わざるを得ませんでした。


2人のパイロットは、その技術と航空管制官の指示の力で無事地上に戻ることができましたが、着陸した時には2人とも重度の凍傷を負っており、緊急用の酸素は尽きていたとのこと。

この事件をきっかけに、空軍はGarminのGPS付きスマートウォッチをF/A-18、EA-18G、T-45のパイロットに配布するようになりました。最初に配られたfēnix 3Jはもともとトライアスロンやレーサーといったアスリート向けに開発されたものでした。

パイロットたちがGarminの時計を使用しだしたことを受け、その後GarminはGarmin D2 BravoD2 CharlieD2 DeltaMARQ Aviatorといったパイロット向けの時計を登場させています。MARQ Aviatorは高度の高い場所で体の酸素レベルがどれほど空気に適応しているかをチェックできる機能がついているとのこと。

MARQ™ Aviator - Garmin Guatemala
https://garminguatemala.com/producto/marq-aviator/


2018年2月14日、Garminは「D2 Charlieがアメリカ空軍のU-2パイロットに採用されたことをうれしく思います。WAAS GPSが搭載されたD2 Charlieはグローバルナビゲーションやカラフルな地図など多数の機能を持ち、アメリカ空軍のパイロットにナビをバックアップする時計となっています」と発表しました。ただしGarminのマーケティング部は空軍への参入を大々的に宣伝していないため、このストーリーは「知る人ぞ知る」裏話となっているようです。

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in ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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