GitLabのポリシー変更は「従業員からの声を抹殺するものだ」と社内から批判の声が挙がる
Gitリポジトリホスティングサービス「GitLab」の開発元が社内ポリシーを変更し、潜在的な顧客を「道徳・価値観」でブロックしないこと、そして従業員が職場で政治について話し合うべきではないと宣言しました。
Blood money is fine with us, says GitLab: Vetting non-evil customers is 'time consuming, potentially distracting' • The Register
https://www.theregister.co.uk/2019/10/16/gitlab_employees_gagged/
GitLabの共同設立者でありCEOも務めるSid Sijbrandij氏が、「GitLabの価値観と相容れない価値観を持つ顧客」ともビジネスを行っていくための新しいポリシーを追加しました。新しいポリシーでは、「道徳・価値観」で顧客をブロックしないことおよび、従業員が職場で政治について話し合うことを禁止しました。
近年、テクノロジー業界で働く従業員は、自分の働く企業が行う不道徳な事業に対する反対の声を挙げることが増えています。そういった傾向に対する自社の方針を明確にするため、GitLabが新しいポリシーを追加したのではないかとThe Registerは指摘。
2018年にはGoogleが中国向けの検閲機能付きの検索エンジンを開発する「Dragonfly」というプロジェクトを推進していたことが発覚。従業員からの抗議を受け、最終的にプロジェクトは中止することとなりました。
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by Stock Catalog
また、Microsoftが買収したGitHubでは、国土安全保障省の移民・関税執行局(ICE)とのビジネスに従業員が反対し、Amazonが顔認証ソフトを警察に販売していることが発覚した際には、従業員から政府機関に技術を販売しないよう求める声が挙がりました。なお、Microsoftは最終的にICEとの契約は更新するものの、移民関連での取り組みを続けると説明しています。
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by Bill Dickinson
こういった従業員が自社ビジネスに対して抗議の声を挙げることを回避するため、GitLabは社内のポリシーを変更したのではないかと見られていますが、Sijbrandij氏は「効率はGitLabの価値観のひとつです。顧客審査は時間がかかる上に気が散る作業です」と説明しています。The Registerは、第二次世界大戦時にナチス・ドイツのユダヤ人絶滅計画をシステム面で支えていたのがIBMであることになぞらえ、「GitLabのポリシー変更がどのように受け取られるかは想像に易い」と記しています。
GitLabでエンジニアとして働くDrew Blessing氏は、同社がどのような相手ともビジネスを行うつもりであるという方針を示したことに戸惑っているとして、「(不適切な相手とは)ビジネスを行わないというシナリオを想定することはできませんか?」と経営陣に質問を投げかけています。これに対してSijbrandij氏は「GitLabは顧客に対する永続的なコミットメントを尊重するものの、戦略はいつでも変更できる」と述べています。
ポリシー変更に対しては社内から複数の批判の声が挙がっていますが、GitLabでクラウドコンピューティング部門のコンサルタントを担当しているBen Fellows氏は、「GitLabは単なるツールメーカーであり、サービスの使用方法について責任を負うべきではない」と主張しています。
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