高齢者の間で大量のお酒を飲む「ビンジ飲酒」が急増している
by Pressmaster
1日で大量のお酒を飲み、翌日ひどい二日酔いになる……という「Binge drinking(ビンジ飲酒/むちゃ飲み)」と呼ばれる飲み方は、大学生などが行いやすいというイメージですが、新たな研究で、近年はビンジ飲酒する高齢者の数が急激に増加していることが示されました。
Data show binge drinking has been steadily rising in older adults — Quartz
https://qz.com/1678651/data-show-binge-drinking-has-been-steadily-rising-in-older-adults/
この研究は、ニューヨーク大学の研究者が実施したもの。研究者は、何千人もの被験者にアルコールと薬物の消費を毎年尋ねる「National Survey on Drug Use and Health」というアンケート調査を分析しました。研究者は調査対象を「65歳以上」に絞り、「ビンジ飲酒」の定義を「女性の場合は一度に4杯のお酒を飲むこと」「男性の場合は一度に5杯のお酒を飲むこと」としました。研究者は2005年から2014年までの調査結果を2018年に発表しており、この結果と合わせて、2005年から2017年までの推移を観察しました。
調査の結果、2005年から2017年までのビンジ飲酒を行う高齢者の割合は以下のように推移しており、2005~2006年には8.1%だったものが、2016~2017年には10.6%にまで上昇しています。2005年から2014年までは割合が減ったり増えたりを繰り返していますが、2015年-2017年の期間にいきなり10%の壁を突破しています。
アメリカの65歳以上の人口は2005年には3660万人でしたが、2016年には4920万人にまで増加しています。上記の調査結果を当てはめると、ビンジ飲酒を行う高齢者の実数は300万人から500万人へとアップしたことになり、約1.7倍も増加したといえます。
一般的に「適度な飲酒は健康によい」といわれますが、2018年に「中程度のアルコール飲用の健康への影響」を調査する臨床試験を行う研究者に、アルコール飲料業界が便宜を図った疑いがあると報道されました。2019年には「適量」の飲酒であっても脳卒中のリスクは高まるという研究結果も発表されており、がん発症リスクも高まるとして、問題視されています。また1日でたくさんのお酒を飲むことは、同量を数日にわけて摂取するよりも肝臓に大きな負担をかけることになります。
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ただし、高齢者のビンジ飲酒が結果として健康にどう影響しているのかは、この研究では示されていません。同調査で示された、高齢者が緊急治療室に運ばれた割合は通常よりも少し高い程度であり、また高血圧や糖尿病といった慢性疾患を患っている割合は低い傾向にあったとのこと。
さらに、高齢者をビンジ飲酒に走らせる原因についても、この研究では明らかにされていないところ。飲酒には社会的な要因が関係していることがありますが、この研究でビンジ飲酒していると答えた高齢者が一人で飲んでいたのか、友人や家族と飲んでいたのかはデータから明らかではないとのこと。ただし、ひどい飲酒癖を持つ人は孤立しやすく、それが人を孤独にし、ビンジ飲酒をもたらすという可能性は十分に考えられると専門家は述べています。
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