「お酒を飲むことは総合的に見て健康に悪い」という研究報告

by Maria Eklind

「酒は百薬の長」ということわざがある通り、お酒は健康にいいという研究が数多く報告されています。一方で、アルコールの摂取には重大な健康リスクがあるという研究も多く存在します。ワシントン大学の研究チームがこれまでに行われた飲酒についての膨大な研究データをまとめた結果、アルコールの摂取はメリットよりもデメリットの方が上回ると報告しています。

Alcohol use and burden for 195 countries and territories, 1990–2016: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2016 - The Lancet
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(18)31310-2/fulltext

Alcohol is associated with 2.8 million deaths each year worldwide - Scimex
https://www.scimex.org/newsfeed/alcohol-is-associated-with-2.8-million-deaths-each-year-worldwide

ワシントン大学保健指標・評価研究所のマックス・グリスワルド氏は、何百万もの研究論文と約2800万人分データを調査しました。

世界的には女性の25％、男性の39％が飲酒をたしなんでいるとのこと。これは世界人口のおよそ3人に1人が日常的にアルコールを摂取していることを意味します。また、平均的なアルコールの摂取量は男性の方が多く、女性のおよそ2.5倍を飲んでいるということが判明しました。

by Becky Wetherington

さらに、毎年280万人もの人がアルコールに関連する死因で亡くなっていることが判明しました。アルコールに起因する死亡率は女性が2.2％で、男性が6.8％でした。特に50歳以上の年齢層を対象に調べると死亡率はさらに上がり、女性は27.1％、男性が18.9％とのこと。アルコールに関連する死因は肝硬変や脳卒中の他に結核・交通事故・自殺が多く、低所得国では結核で亡くなる人が多く、高所得国では脳卒中が主なアルコール関連の死因だったそうです。

先行研究ではアルコールが健康にいい影響を与えることも指摘されていましたが、がん発症のリスクなど、飲酒によって得られるデメリットがメリットを上回ってしまうため、アルコールの安全性は皆無であると研究チームは報告しています。グリスワルド氏は「これまでの研究から、特定の状況であればアルコールには虚血性心疾患への予防効果があるということが判明しましたが、一方でアルコールが増加すればそれだけ健康へのリスクも増加することがわかりました」と述べています。

by Imagens Evangélicas

なお、研究チームによると、15歳未満の飲酒データ・密造されているアルコールの消費量・認知症や乾癬(かんせん)に対するアルコールが与える影響が正しく見積もられてはおらず、アルコールを飲む人の数と健康リスクを過小評価している可能性があるとのこと。また、「アルコールを飲むことで暴力的になる」という部分については確実なデータがなく、アルコールと交通事故の関連を示すようなデータはアメリカだけのもので、世界全体に当てはまるとはいえないため、今後の研究の課題であると研究チームはコメントしています

ケンブリッジ大学のロビン・バートン医学博士は、グリスワルド氏の研究がこれまでのアルコールについての研究の中でも最も包括的なものであると評価した上で、「この調査結果は公衆衛生政策に用いられるべきです。株主に商業的利益をもたらすために、アルコール摂取によって世界的な健康問題が引き起こされています。酒への課税を増やし、児童がアルコールを摂取する機会を減らすべきです」と主張しています。