子どもに「文字の書き方」を効率的に教えるロボットが開発される
By Pressmaster
ソフトバンクロボティクスの人型ロボット「NAO」に、「文字の書き方」を教える教育システムを組み込むという実験が行われました。教育システムが組み込まれたNAOは、子どもたちの筆記技術を改善しただけでなく、NAOを使った授業を受けた子どもの9割以上が「ロボットを使った授業は楽しい」と回答しました。
Children Teach Handwriting to a Social Robot with Different Learning Competencies | SpringerLink
https://link.springer.com/article/10.1007/s12369-019-00589-w
A social robot to enhance children's handwriting skills
https://techxplore.com/news/2019-10-social-robot-children-skills.html
PCやスマートフォンの普及によって、文字を手書きすることの必要性は低下しています。しかし、「文字を手書きすると、書いたものの内容をよく覚えることができる」という複数の研究結果が存在します。
子どもに文字を手書きさせる必要はあるのか? - GIGAZINE
by Green Chameleon
しかし、「文字を手で書く」という行為には認知能力・運動機能・知覚力などの複数の能力が要求されるため、かなりの量の練習が必要です。そして、その練習をチェックするには、教える側がかなりの労力を割かなければなりません。
文字の書き方を教えることを自動化するため、スイス連邦工科大学ローザンヌ校のCHILI研究所とポルトガルのリスボン大学のGAIPS研究所の共同研究チームは、ソフトバンクロボティクスの人型ロボット「NAO」に、インタラクティブに文字の書き方を教えるシステムを組み込みました。
NAO | ソフトバンクロボティクス
https://www.softbankrobotics.com/jp/product/nao/
このシステムは、「線のつながり方やパーツの大きさの比率などに間違いを含む文字をNAOがモニターに書き、その間違いを被験者に正してもらう」という、「間違い探し」のような形式の教育システムで、NAOが文字の書き方を教えるというよりは「子どもがNAOに文字の書き方を教える」というもの。NAOが書く文字は、4歳から8歳の子どもが犯しやすい間違いをあえて含むように設定されています。
研究チームは開発したシステムの効果を検証するために、ポルトガルの小学校で検証実験を2回行いました。各検証実験は、まず最初に子どもの運筆スキルを測定するテストを受けてもらってから、NAOを使った授業で子どもたちの運筆スキルがどれだけ改善されたかを測定するというもの。実験に使用されたNAOは、結果から自己学習を行う「連続学習モード」、自己学習を一切行わない「非学習モード」、子どもごとの能力に応じて問題の難易度を変える「個人学習モード」という3種類の学習モードを備えており、それぞれの学習モードが運筆スキルをどれほど改善させるかについて調査が行われました。
By Besjunior
NAOを使った授業は合計4回行われました。一連の授業を終えてから子どもたちに運筆スキルを測定するテストを再度受けてもらった結果、「連続学習モード」と「個人学習モード」では、子どもの運筆スキルが大幅に改善されました。一方で、「非学習モード」では運筆スキルには大幅な改善がみられませんでした。
また、研究チームによると、NAOを使った一連の授業を行うことによって、1回目の実験に参加した子どもの92%が、2回目の実験に参加した子どもの100%が「自分は教え方が上手だ」と自信を持ち、「NAOに文字の書き方を教えるのは楽しく、これからもNAOを使った授業を継続したい」と回答したとのこと。今回開発された教育システムは、子どもの運筆スキルを改善するだけでなく、運筆スキルに自信を付けることにも役立つことが示唆されています。
・関連記事。
子どもに文字を手書きさせる必要はあるのか? - GIGAZINE
人間の脳は成人してからでも「読み書き」の訓練を行うことで深い部位を再構成する柔軟性を持つ - GIGAZINE
子どもには「文章を書く喜び」を与えてリテラシーを向上させることが重要 - GIGAZINE
手書きのメモを残すことで本当に頭が良くなるものなのか? - GIGAZINE
・関連コンテンツ