ハードウェア

脳信号を読み取り「考えるだけで動く」外骨格が開発される


グルノーブルアルプス大学の研究チームが、患者の頭に貼り付けた電極から脳の信号を読み取って無線で操作可能な外骨格を開発しました。この外骨格によって、四肢麻痺(まひ)で体の不自由な患者が思い通りに歩くことができるようになると期待されています。

An exoskeleton controlled by an epidural wireless brain?machine interface in a tetraplegic patient: a proof-of-concept demonstration - The Lancet Neurology
https://www.thelancet.com/journals/laneur/article/PIIS1474-4422(19)30321-7/fulltext


The Lancet Neurology: Pioneering study suggests that an exoskeleton for tetraplegia could be feasible | EurekAlert! Science News
https://eurekalert.org/pub_releases/2019-10/tl-pss100219.php

実際に四肢麻痺の患者が研究チームの開発した外骨格を動かす様子は以下のムービーでみることができます。

Exoskeleton Controlled by a Brain-Machine Interface - YouTube


以下の場面で、28歳のフランス人男性の患者が装着しているのが、開発された外骨格です。被験者は肩から下が麻痺しており、上腕二頭筋と左手首がわずかに動くだけで、普段は左手で操作できるジョイスティックのついた電動車椅子に乗って生活しているそうです。


患者は頭部に外骨格の制御用ワイヤレスセンサーを2つ埋め込んでいて、外骨格の始動・停止を脳で指示することができます。これまでにも「脳の信号で車椅子などを操作する」という同様の研究は存在していましたが、脳に直接電極を埋め込むという大がかりな手術が必要なものがほとんどでした。しかし、今回グルノーブルアルプス大学の研究チームが開発したセンサーは、脳と皮膚の間に埋め込む半侵襲的なもの。


患者は手術を受けたあと、「脳で操作する」という特殊な技術を習得するため、外骨格を使う前にまずは仮想空間で訓練を行います。


仮想空間内でアバターの手足を動かし、ゲームをプレイしたりキャッチボールを行ったりしながら、患者は手を動かしたり関節を動かしたりするシミュレーションを行います。被験者が外骨格を操作できるようになるまで合計で約1カ月半かかり、さらにアバターとゲームを使った自宅トレーニングはおよそ3カ月行われたとのこと。


以下の場面は、「棒に取り付けられたライトが光ったら手でタッチする」という訓練を患者がこなすところ。被験者の患者はセンサーを埋め込む手術を受けてから16カ月で両手で物を持てるようになったそうです。


外骨格の駆動部は14カ所。24カ月にわたって行われた実験で外骨格は終始安定した動作をみせており、最大で7週間は再キャリブレーションの必要もなかったとのこと。ただし、外骨格にはオートバランサーがまだ搭載されていないため、実験では外骨格を天井から吊り下げながら歩く必要があったそうです。研究チームは、今後の研究の課題は「支えがなくても患者が自律的に歩行できるようにすること」としています。


グルノーブルアルプス大学の脳神経外科医であるStephan Chabardes教授は「四肢麻痺の患者が脳の信号だけを使ってコンピューターを操作する未来に一歩近づくことでしょう。たとえばジョイスティックの代わりに脳の活動を利用して車椅子を運転することからスタートして、運動能力を高める外骨格の開発が進むかもしれません」と語りました。

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in ハードウェア,   サイエンス,   動画, Posted by log1i_yk

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