Googleが機械学習を用いて「物を投げること」を理解するロボット「TossingBot」を開発
人間は何気なく「物を投げる」という行為をしていますが、実は物を投げるという動作は非常に高度なものです。そんな物を投げるという動作を機械学習を用いて習得することが可能なロボット「TossingBot」が、Googleから発表されています。
Google AI Blog: Unifying Physics and Deep Learning with TossingBot
https://ai.googleblog.com/2019/03/unifying-physics-and-deep-learning-with.html
物を投げるという行為は非常に複雑な動作であり、投げるオブジェクトの状態やオブジェクトを離すタイミング、投げた後の物理学的な作用などが絡んできます。同じ物体を同じように投げることはロボットを正確に作り上げることで可能ですが、箱にランダムに入ったピンポン球や果物、工具などを拾って投げるというロボットをゼロからプログラミングすることは、非常に困難です。
そこで、Googleはプリンストン大学やコロンビア大学、マサチューセッツ工科大学の研究者らと協力し、機械学習を用いて「物を投げる」ことを学ぶロボットのTossingBotを開発しました。TossingBotは視覚的に投げるオブジェクトを認識し、実際に物体を投げる動作を繰り返すことで物体を投げた時にどのような結果が起こるのか、どのように投げれば望む結果が得られるのかといったことを学習するとのこと。
TossingBotがどのような機械学習を行うロボットになっているのかは、以下のムービーを見るとわかります。
Robots Learning to Toss
バナナの模型やボールなどが入った箱にロボットアームが突っ込まれ……
正確な動作でピンポン球をつかみます。
ロボットアームが箱からピンポン球を持ち上げて……
離れた場所にある箱へ、ピンポン球を投げ入れました。よく見ると箱もピンポン球の軌道に合わせ、位置をズラしています。
次にロボットアームがつかんだのは、ピンポン球とはまるで違う形状をしたバナナの模型。
アームがバナナを投げると、箱が位置を微修正して見事にキャッチしました。
Googleの学生研究員であるAndy Zeng氏は、物を投げるという行為をロボットに学習させています。
人々はゴミ箱にゴミを投げ入れたり……
洗濯物カゴに脱いだ服を投げ入れたりと、日常生活の中で何気なく物を投げています。
しかし、Zeng氏はこれらの「物を投げる」という行為が、非常にさまざまな要素の組み合わせであると述べています。
物を投げるにはまず、物体を正確に握り……
適切なスピードで腕を振り、ちょうどいいタイミングで指を離す必要があるとのこと。
また、投げる物体によっても投げる際の動作や投げた後の軌道が変化します。
人間は幼いころからさまざまな物を投げているため、自然とこれらの動作を身につけていますが……
ロボットに対して物を投げることを教えられるのかどうか、Zeng氏らは研究したそうです。
物を投げるという行為はそれほど多くのエネルギーを使わず、体の一部だけを使えば可能であり……
物理的に到達できない場所にも物体を移動させることができます。
また、いちいち物を持って移動して置くよりも素早くものを移動させることが可能なため、物を投げるのは物体を動かすという点でとても効率的だとのこと。ロボットアームが物を適切に投げられるようになれば、配送拠点におけるピッキングや工場、災害現場など、多くの場面で活躍する可能性があります。
TossingBotと名付けられたロボットは、さまざまな物体が入った雑然とした箱から物体を拾い上げ、実際に投げる行為を繰り返して物を投げるメカニズムを学習するとのこと。
何度も投げる動作を繰り返し、物体の形状ごとにどのようなアームの振り方をすればいいのか、物体を離す適切なタイミングはいつなのか、物体はどのように飛んでいくのかといったデータをTossingBotは蓄積していきます。
人間が物を投げる時と同様、TossingBotは物を拾い上げる前に視覚的な要素から物体の形状を判断しています。最初のうちは物をつかむことにも失敗を繰り返しますが、やがて正確に物をつかめるようになり、投げる動作についても学習を繰り返していきます。TossingBotはおよそ14時間にわたって1万回もの試行を繰り返すことが可能であり、1万回の学習を終えた後は87%の正確性で物体をつかみ、85%の精度で適切な場所に物体を投げ入れることができるとのこと。
TossingBotはあらかじめ設定された簡単な物理学的情報と機械学習を組み合わせて学習を行います。物理学的に世界がどのように動くのかというモデルをあらかじめ提供することで、機械学習による学習がよりスムーズになるそうです。
訓練を重ねたTossingBotは、これまでとは違う形状の物体を与えられても数百回の試行で対応できます。
実際にTossingBotを開発したエンジニアたちも物体を投げてみたそうですが……
意外と離れた場所にある箱に物体を投げ入れるのは難しかった様子。
学習を重ねたTossingBotは、人間よりも正確に物体を投げることができたとのこと。
Zeng氏はTossingBotの開発が非常に楽しいものであったと語りました。
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