SNSを1年やめてみて何が変わったのか、という実際の記録
by Mika Baumeister
SNSが人のメンタルに悪影響を及ぼしている……という研究結果やニュースはそこかしこに存在します。「SNSをやめて、人間関係が良好になりました」という発言や「100万ドルの価値があるスタートアップを創設することができました」という主張を耳にした開発者のJosh C. Simmonsさんも「SNSをやめるのはきっといいことのはずだろう」と考えて、2018年にSNS断ちを決意した1人。実際にSNS断ちを行うことでどのようなことが起こり、どのような利点を得られたのかという記録をSimmonsさんが公開しています。
I Quit Social Media for a Year and Nothing Magical Happened | Josh C. Simmons
https://joshcsimmons.com/2019/09/10/i-quit-social-media-for-a-year-and-nothing-magical-happened/
SNS断ちを始めるにあたってSimmonsさんが行ったことはまず、FacebookやInstagramといったアプリの削除でした。アプリが手元にあると、つい魔が差してSNSを触ってしまうに違いないと考えられたためです。ただ写真に関しては、忘れたくない思い出もあるということで、Facebookからダウンロードしたとのこと。Instagramはダウンロードオプションがなかったため、Pythonで簡単なスクリプトを作成してプロファイルから全ての画像をダウンロードした、とSimmonsさんは語っています。
◆0~90日目
Matthew T Rader
最初の90日、特に15~40日目はかなり辛かった、と語るSimmonsさん。特に理由もないのに憂うつな気分になることがあり、この理由を「SNS断ちによりドーパミンの放出量が少なくなったからだろう」とSimmonsさんは考えています。最初のうち、Simmonsさんは1日に50回も意味もなくスマートフォンを手に取ってアンロックし、ありもしないアプリを探して指をさまよわせました。
またSimmonsさんはミュージシャンとしても活動していたため、SNSをやめて最初の数カ月間は、「Facebookなしでどうやってコンサートの告知をすればいいのか」と頭を抱えました。しかし何度かコンサートを終えてみて気づいたのは、「Facebookの告知だけを見てコンサートに来た」という人はいなかったのだということ。コンサートに来る人は、Facebookがなくともなんらかの方法でコンサートの存在を知って来てくれたそうです。
◆91~365日目
91日を経過すると、SNS断ちは非常にスムーズに進むようになったとSimmonsさんは述べています。しかし、ここにきて「なぜ自分は写真を撮るのだ?」ということが大きな疑問として湧き上がってきたとのこと。
Simmonsさんは2004年に高校生でSNSを始めて以来、15年間ずっと、「SNSで写真を共有するために」写真を取り続けてきました。しかし、SNSをやめると、写真を撮ることの必要性が感じられなくなりました。「なぜ写真を撮るのだ?」という疑問をきっかけに、「なぜ高画質・高品質のカメラが必要なのだ?」「なぜ写真を撮ってSNSで共有するためによいスマートフォンが必要なのだ?」という疑問が次々に湧いてくることに。Simmonsさんは2019年9月時点でiPhone XRを持っていますが、SNS断ちに成功したことで、最新スマートフォンを持つ必要性を感じなくなったそうです。「もし買い替えることになっても、今後は型落ちモデルを購入するだろう」とSimmonsさんは語っています。
◆SNS断ちによって得られたこと
by Austin Schmid
・メンタルヘルスの向上
SNS断ちを1年続けることで得られた大きなメリットの1つが、集中力の向上。Simmonsさんは1000日連続で瞑想(めいそう)を続けているため、集中力の向上にはその影響もありますが、SNS断ちも助けになっているとみられています。
また人は場面によって自分を使い分けているものですが、多くの人が「SNSでの自分」というペルソナも持っているはず。しかし、「友人と一緒の時の自分」「仕事の時の自分」は場面が切り替わることで手放すことができますが、「SNSでの自分」は常に、永遠に、自分につきまといます。これがSimmonsさんにとってストレスを与えていたとのこと。
アメリカではSNSから取り残される感情を「FOMO」と呼びますが、このようなストレスはFOMOの一部だとSimmonsさんは語っています。SNSをやめることでストレスが大きく減ったことも、得られた利点の1つです。
・対人関係の強化
SimmonsさんはFacebook上に1000人の「友だち」がいましたが、実際に気にかけているのはそのうち2%だったとのこと。Instagramなどには友人の数が表示され、人よりも数が少ないと気分が落ち込むこともありましたが、SNSをやめることで本当に大切な友人だけを気にかけて、現実の、健康的かつ相互的な友情を保つことに専念できるようになったとSimmonsさんは述べています。
・現実に対する存在感の変化
by Austin Loveing
SNSをやめたことで、Simmonsさんは目の前の物事を「写真になるかどうか」という目線で見ることなく、ただあるがままに見ることができるようになりました。またアイデアが頭に浮かんだ時も、中途半端な状態でSNSに情報を更新したり、投稿を行いたいがためにアイデアを煮詰めたりするのではなく、ただ単に「ノートに書く」という行動に収まるようになりました。
◆結論
SNS断ちによって生活が大きく変化し、時に不便さを感じることもあるそうですが、基本的には「1年前に比べてSNSのない生活の方が好きだ」とSimmonsさんは語っており、SNSのある生活に戻ることは考えていないそうです。
「何百万という人間がデータを作り、それを巨大テクノロジー企業がむさぼりお金を生み出す」という、SNSとユーザーの関係は「虐待的」だとSimmonsさんは表現しています。「SNS断ちが全ての人にとっていいものだとは言えず、私というたった一人にとって、SNSがQOLを下げていたことが言えるだけだ」と語るSimmonsさんの生活には「100万ドルの会社を立ち上げる」といった劇的なことは起こらなかったものの、生活の質を大きく向上させることはできたようです。
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