メモ

Appleのアンテナ問題でジョブズが踊った「iPhone アンテナの歌」の真実

by Brian Fitzgerald

ユニークなPRを行うことでも有名なAppleですが、iPhone 4発売時にアンテナ感度の問題でメディアから激しい非難を浴び、プレス・カンファレンスで「メディアは成功者がしくじると大喜び。iPhone 4が欲しくないなら買わなきゃいい。気に入らないなら、Apple Storeに持っていけばいい」という「iPhone アンテナの歌」を流してからスティーブ・ジョブズが登場したと話題になりました。このアンテナの歌がどうして流れたのか?という経緯をミュージシャンのJonathan Mannさんが語っています。

Steve Jobs Danced To My Song — Where You Lead I Will Follow — Medium
https://medium.com/where-you-lead-i-will-follow-indeed/9e805c0f482d



2009年、失業中だったMannさんは1日1曲の歌を作成する「Song A Day」というプロジェクトに取りかかりながらフリーランスで曲を書いたり演奏したりして日々を食いつないでいました。

プロジェクトの開始から2カ月たった時、彼はOnline Video Contestsというウェブサイトを発見。Online Video Contestsはインターネット上で音楽に関するさまざまなコンテストを開催しており、全米中から集まった何千人もの参加者たちが毎週自らの音楽の優劣を競っていました。Online Video Contestsに興味を引かれたMannさんはウェブサイトに登録し、12日間で計12個のコンテストに参加したところ、12のうち2~3のコンテストに優勝し、かなりのお金をゲットできたとのこと。

Mannさんが参加したコンテストのうち1つは当時公開されたばかりだったマイクロソフトの検索エンジン「Bing」に関するものでした。コンテストの内容はシンプルで、Bingのコマーシャルソングを作成し、優勝すれば500ドルのギフトカードをゲットできるというもの。賞金は多くないものの、Mannさんは参加に関して「期日が間近であること」「勝者が投票ではなく審査員によって決められること」を条件としており、Bingのコンテストは条件を満たしていました。そこでMannさんはわずか数時間のうちに作った曲とムービーを投稿したのです。

以下が実際にMannさんが投稿した「Bing Goes The Internet」

Song A Day #202: Bing Goes The Internet - YouTube


1週間後、コンテストでの優勝がMannさんに知らされたのですが、これは彼にとって驚くべきことでした。というのも、Mannさんは「You’ve got to Bing it Bing it, You’ve got to Bing it Bing it.(君はBingで見つける、Bingで見つける)」とカメラを見つめて歌われたムービーを酷いものだと考えていたためです。

そしてさらに1週間経過すると、曲はTechCrunchによって取り上げられます。

Bing Has Succeeded… In Finding The Worst Jingle Ever | TechCrunch
http://techcrunch.com/2009/08/05/bing-has-succeeded-in-finding-the-worst-jingle-ever/


記事の見出しは「Bingは史上最悪のCMソングを発見することで成功した」とあり、かなり痛烈なもの。Mannさんはインターネット上でバカにされることに慣れており、いつもなら無視するのですが、この時は違いました。TechCrunchは名の知れたウェブサイトであり、記事を書いたMG Sieglerというライターもかなり有名だったからです。「これはコメントをすべきだ」と感じたMannさんは「これは君の頭から離れないだろう。まるでアザラシの鳴き声か死にかけの牛のようなサウンドだ」という記事中の文章を引用してMG Siegler氏に向けた曲をYouTubeに投稿し、Siegler氏に向けてメールを送ります。Siegler氏はこのジョークを気に入り、以来MannさんがTechCrunchに関する曲を作ってSieglerさんに送ると記事として使われる、という関係が続いています。

そして2010年、Appleの行うプレス・カンファレンスの前日にそれは起こります。当時Appleはアンテナ感度問題についてメディアから激しく批判されており、この問題はウォーターゲート事件をもじって「アンテナゲート事件」と呼ばれていました。そこで、アンチAppleの動きを馬鹿げたものだと思っていたMannさんはApple擁護のための曲を作ろうとを決意します。「もしAppleを擁護した曲がTechCrunchに取り上げられれば多くの人の目に触れることとなるはず」と考えたMannさんは約2時間で作りあげた曲のムービーを投稿。Siegler氏にメールを送って眠りにつきました。

翌朝、メールをチェックしていたMannさんはTechCrunchからではないメールを発見します。それはAppleからのメールでした。


Mannさんはメールを読み、「誰かが自分を釣ろうとしている」と考えていたのですが、彼がシャワーを浴びている時に電話のベルが鳴ります。驚くべきことに、電話はAppleの広告担当からでした。曲の使用を快諾したMannさんがインターネット中継されたプレス・カンファレンスの様子を見守っていると、開始時間にまず「The iPhone Antenna Song」がステージで流され、ムービーが終わるとスティーブ・ジョブズが「来てくれてありがとう。今日の朝YouTubeでこのムービーを見つけてね。シェアせずにはいられなかったんだ」と言いながら登場しました。

以下がプレス・カンファレンスで実際に流された「The iPhone Antenna Song」

Song A Day #561: The iPhone Antenna Song - YouTube


この時のことを「人生の内でもっとも超現実的な時間だった」とMannさんは語ります。広報担当は後に「曲が流れている時、ステージの裏でスティーブは踊っていました」とMannさんに語っており、実際にカンファレンスを記録したムービーでは、登場の際に軽く飛び跳ねているジョブズを見ることができます。なお、下記画像をクリックするとジョブズが飛び跳ねている様子のGIFアニメーションを見ることが可能。


Mannさんはその後スティーブ・ウォズニアックのためにバースデー・ソングを作って60歳の誕生日パーティーに招待されたり、パーティーで出会ったTEDMEDの共同設立者に頼まれてTEDの創立者であるリチャード・ソール・ワーマンのバースデー・ソングを作ったりと忙しい日々を送っています。無職の日々から始まり、1日1曲を作るという試み、TechCrunch、そしてAppleとキャリアを積み上げてきたMannさんですが、「すべての始まりは作品を作り、インターネット上で自由気ままにシェアしたことだった」と語っています。

なお、2013年11月でAppleの創設者スティーブ・ジョブズが亡くなって2年が過ぎましたが、オランダではスティーブジョブズスクールが開講し、日本ではスティーブ・ジョブズの霊を降霊させ、その言葉が出版されるなど、あらゆる意味でその影響力は健在です。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
ジョブズのメールが示すハードな交渉のやり方と勝ち方 - GIGAZINE

21世紀の教育革命「スティーブジョブズスクール」とは? - GIGAZINE

20年前のジョブズにインタビューした未公開映像が公開中、「私の仕事は何百年にもわたって評価される絵画とは違う」 - GIGAZINE

「ジョブズの映画は間違っているところがたくさんある」とAppleの共同創設者ウォズニアック氏が指摘 - GIGAZINE

NeXTを設立したばかりのスティーブ・ジョブズを追った「Steve Jobs building NeXT」 - GIGAZINE

in メモ, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.