サイエンス

日光だけで医薬品を合成する「人工葉」が開発される


植物の葉が行っている光合成のように、日光で薬を合成するすることができる「人工葉」が開発されました。人工葉はすでに2種類の医薬品を合成することに成功しており、光さえあればどんな場所でも薬を作り出すことが可能だとのことです。

Energy‐Efficient Solar Photochemistry with Luminescent Solar Concentrator Based Photomicroreactors - Cambié - - Angewandte Chemie International Edition - Wiley Online Library
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/anie.201908553

‘Artificial leaf’ produces medicine using sunlight for the first time
https://www.tue.nl/en/news/news-overview/artificial-leaf-produces-medicine-using-sunlight-for-the-first-time/

以下のムービーを見ると、人工葉が医薬品を合成する仕組みについての解説を見ることができます。

Artificial leaf as mini-factory for medicine - YouTube


これが今回新しく開発された人工葉です。


構造は単純で、アクリルガラス(ポリメタクリル酸メチル樹脂)製の樹脂の中に葉脈の役割を果たす細い管が通っているだけ。


薬品の原料となる液体を管に流し込んで日光を当てると、発光型太陽光集光器の役割を持つ樹脂部分が光のエネルギーを集中させ、化学反応が生じます。


化学反応の結果、人工葉をぐるりと巡る管のもう一方から医薬品が出てくるという仕組みです。


人工葉を開発したのは、オランダのアイントホーフェン工科大学のティモシー・ノエル氏が率いる研究グループです。ノエル氏らは既に、多薬剤耐性をもつ熱帯熱マラリアに効果が期待されている抗マラリア薬であるアルテミシニンと、線虫を駆除する駆虫薬であるアスカリドールの合成に成功しているとのこと。

ノエル氏は2016年にも薬品を創り出す人工葉の開発に成功していましたが、この時作られた人工葉にはシリコーンゴムが使われていました。シリコーンゴムでも薬の合成は可能ですが、光の屈折率が低いという欠点があったとのこと。


そこで、人工葉の樹脂部分をシリコーンゴムからアクリルガラスに変更した結果、樹脂部分が安価かつ大量生産が可能になり、さらに屈折率が改善して薬を効率的に合成可能になったとのこと。

ノエル氏は「最も重要な改善点は、アクリルガラスには光に反応するさまざまな種類の分子を添加することが可能だということです。そのおかげで、すべての波長の可視光を使って化学反応を起こすことができるようになりました」と話し、改良型の人工葉が効率的に医薬品を合成できることを強調しました。


また、薬剤の流量を光の量に応じて自動的に調節する機能により、天候や時間により日光量が変化しても問題なく医薬品を合成できるとのことです。

日光さえあれば薬を作ることが可能なので、密林に閉ざされたへき地でも医薬品を合成することができます。


ノエル氏は「人工葉は日光が必要なこと以外の制限を受けず、安価なのでスケールの拡大も容易です。製薬会社と提携することができれば、1年以内にも実用化が可能でしょう」と話し、太陽光だけで薬を大量合成できる未来がすぐそこまで来ているとの見方を示しました。

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in サイエンス,   動画, Posted by log1l_ks

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