サイエンス

太陽光だけで海水を真水にする装置が開発される、副産物として塩も生成可能


「水」は人間の生命活動に不可欠です。しかし、水に含まれる塩分などの成分や雑菌などの問題から、人間が飲めない水も世界には多く存在します。そんな中、太陽光だけを動力にして海水から塩分を除外して飲用可能な真水に変える「海水淡水化」を行う装置が開発されました。

Spatially isolating salt crystallisation from water evaporation for continuous solar steam generation and salt harvesting - Energy & Environmental Science (RSC Publishing)
https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2019/EE/C9EE00692C#!divAbstract

Water solutions without a grain of salt - Monash University
https://www.monash.edu/news/articles/water-solutions-without-a-grain-of-salt

Hydrophilic disc uses solar power to separate salt from water
https://newatlas.com/solar-steam-generator-water-desalination/60726/

毎年8億4400万人がきれいな水を手に入れられず、水が原因で命を落とす新生児は毎分1人に上ります。また世界の総エネルギー消費量の約3%が水の処理に費やされていることからも、海水淡水化と廃水の再利用は世界的な課題といえます。


モナッシュ大学工学部化学科のシーワン・チャン教授が主導する研究チームが開発した海水淡水化装置は、水を引き寄せる性質を持つ超親水性のろ紙をカーボンナノチューブでコーティングしてディスク状にしたもの。この「蒸発脱水ディスク」に入った海水はカーボンナノチューブが吸収した太陽光の熱エネルギーを受けて蒸発。蒸発した水は蒸発脱水ディスクのろ紙部分にとどまって真水となり、塩分は結晶となって蒸発脱水ディスクの外縁部から排出されます。

モナッシュ大学が実際にこの海水淡水化装置が稼働する様子をムービーで公開しています。このムービーを見ると、海水が淡水化されて塩の結晶が生成されている過程が一目でわかります。

Supplementary Video 6 - YouTube


中央に置かれた黒い円盤が新開発された海水淡水化装置。公開されたムービーは1万8000倍で早送りされています。


蒸発脱水ディスクの外縁部から塩がドンドン生成されています。


100時間経過後、塩の結晶は蒸発脱水ディスクの横に積もるほどの量。


500時間経過後もまだ塩が生成され続けます。


発表によると、この海水淡水化装置は海水から塩分をほぼ100%除去可能なだけでなく、製塩にも活用できるとのこと。研究チームはオーストラリア南部のラセペード湾で海水淡水化装置の稼働試験をすでに終えており、蒸発脱水ディスクの1平方メートルあたり1日6リットルから8リットルの真水を生成可能だそうです。

今回の海水淡水化技術は、電力インフラの乏しい国や地域における飲料水の確保だけでなく、処理が困難な液体廃棄物を固体に変える無排水化や、汚泥脱水、さらに廃水からの資源回収などに転用されることが期待されています。チャン教授は「何百万人もの人々に対する飲料水の供給や廃水からの資源回収、さらには廃水が環境に与える影響の解明に今回の研究が役立てられることを願っています」とコメントしています。

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in サイエンス,   動画, Posted by darkhorse_log

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