熱を効率的に光に変換するデバイスを研究者が開発、太陽光発電の効率上昇に役立つ可能性
by haraldbecker2
地球温暖化などの気候変動に対処するため、世界中で太陽光や風力といった再生可能エネルギーを利用した発電が推進されています。新たに開発された「熱を光に効率的に変換するデバイス」は、太陽光発電の効率をこれまで以上に上昇させるために役立つと研究者らは考えています。
Rice device channels heat into light
https://news.rice.edu/2019/07/12/rice-device-channels-heat-into-light-2/
Macroscopically Aligned Carbon Nanotubes as a Refractory Platform for Hyperbolic Thermal Emitters | ACS Photonics
https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acsphotonics.9b00452
Harnessing heat for 80% theoretical efficiency – pv magazine International
https://www.pv-magazine.com/2019/07/29/harnessing-heat-for-80-theoretical-efficiency/
太陽光発電においてしばしば問題となるのが、太陽光をいかに電力へと効率的に変換するかという点。発電効率によって同じ量の太陽光でも発電量が変わってきますが、記事作成時点で市場に出回っている太陽電池モジュールの変換効率は、高くても20%ほどです。
太陽光発電の過程で発生する廃熱は、太陽光発電の出力や設備の寿命などにも関わってくるため、太陽光発電の研究者らが大きな注目を寄せているとのこと。洗練された冷却システムを導入したり、廃熱による発電設備を組み合わせたりすることで、研究者らは廃熱の課題に対処してきました。
by skeeze
そこでアメリカ・ライス大学の研究者らは、「廃熱を光に変換し、もう一度太陽光発電の資源として利用する」という方法を提案しました。ライス大学の電気・コンピューター工学准教授であるGururaj Naik氏は、物体が熱を電磁波として放射する熱放射を利用し、熱を光に変換する仕組みを開発したそうです。
「あらゆる熱を持った物体の表面は熱放射として光を発しています」「問題は、熱放射は広帯域で行われるのに対し、光を電気に効率的に変換するには放射が狭い帯域で行われる必要があるという点です」と、Naik氏は指摘。そこで、Naik氏らの研究チームはカーボンナノチューブを用いて、熱として放射された電磁波をより狭い帯域に絞り込むデバイスを開発しました。
研究チームが開発した概念実証デバイスは、電子が一方向にしか通過できないカーボンナノチューブフィルムを整列させて作られています。最大で700度もの高温に耐え、熱を太陽光発電に適した光に変換することが可能だそうです。熱を電力に変換する最も効率のいい方法はタービンを用いる発電ですが、Naik氏らのチームは可動部分を使わないコンパクトなシステムで、タスクを簡素化することを目指しているとのこと。
Naik氏は標準的な太陽電池に今回開発されたデバイスを追加することで、記事作成時点のピーク発電効率である約22%以上の効率を達成できると主張。「理論的な予測では、80%の発電効率を得られます」とNaik氏は述べました。研究の次の段階として、研究チームは太陽電池とデバイスを組み合わせ、実際に太陽光発電に伴う廃熱を光に変換し、再度発電に利用することを計画しています。
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