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再生可能エネルギーを利用した発電システムの発展に伴う4つの段階とは?


電力は人間の生活や文明の進歩にとって欠かせない存在ですが、石炭や石油といった化石燃料を用いた発電方法は、地球温暖化の原因となるとして懸念されています。そこで、近年では太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを用いた発電方法が発展しており、化石燃料を用いた発電に取って代わるのではないかと期待を集めています。アメリカの技術者、SFライターであるRamez Naam氏は、そんな再生可能エネルギーの発展には4つの段階があると主張しました。

The Third Phase of Clean Energy Will Be the Most Disruptive Yet – Ramez Naam
http://rameznaam.com/2019/04/02/the-third-phase-of-clean-energy-will-be-the-most-disruptive-yet/

Naam氏によると、人間が再生可能エネルギーによる発電を通じて地球温暖化対策に取り組む段階には、およそ4つの段階があるとのこと。再生可能エネルギーの技術や規模が発展するにつれて段階が変化し、全体を取り巻く環境も変わっていくそうです。

◆1:政策によって推進される段階
1980年代から2015年ごろまでは、再生可能エネルギーが「政策によって推進される段階」に当たっていたとNaam氏は考えています。太陽光や風力などを用いた発電は現実のものとなっていましたが、石油や石炭を用いた発電の方がコスト的に安く、再生可能エネルギーによる発電は赤字状態でした。

この段階では誰も利潤を求めて再生可能エネルギーを導入することはなく、あくまでも環境問題に取り組む政府の補助金などで推進されており、再生可能エネルギーの成長も緩やかなものでした。この段階の中で太陽光発電は世界の発電量のうち1%、風力発電が4%を占めるようになりましたが、数千億ドル(数十兆円)もの資金が費やされたにしては進歩がないようにみえます。


◆2:既存の発電方法との競争段階
政策によって再生可能エネルギーが推進されていた時代、発電方法のシェアに占める再生可能エネルギーの拡大は微々たるものでした。その一方でNaam氏は、政府が再生可能エネルギーを推し進めたことで発生した最も重要な進歩とは、再生可能エネルギーによる発電コストの低下だったと指摘しています。

1980年代から続く政府や研究者らの努力により、再生可能エネルギーによる発電コストは急速に低下しており、初期と比較して発電コストは10分の1にまで下がっているとのこと。2015年ごろからは政府による補助金なしでも、石油や石炭による発電施設を建設するよりも太陽光や風力による発電施設を建設する方が、低価格に抑えられる時代になっているそうです。

by Johan Bos

◆3:再生可能エネルギーによる発電が化石燃料による発電を脅かす段階
再生可能エネルギーによる発電が低コストとなったことで、今度は既存の化石燃料による発電産業が脅かされる事態となります。太陽光・風力発電施設の建設を進める電気事業者NextEra EnergyのCEOであるJim Robo氏は、2020年代初頭までに太陽光・風力発電施設を新たに建設する方が、既存の化石燃料発電施設を運営するよりも安価になると予測しています。

また、電気事業者のFlorida Power and Lightは老朽化した天然ガスプラントを閉鎖し、新たに太陽光発電施設と世界最大規模の電力貯蔵施設を建設することを発表しました。太陽光発電とバッテリーを組み合わせることにより、電力需要が高まる夕方のピーク時にも電力を供給することが可能となります。

ロンドンのシンクタンクであるCarbonTrackerは、2020年代半ばまでにアメリカ・中国・インドにおいて、既存の化石燃料発電施設を運用するコストよりも再生可能エネルギーによる発電施設の建設コストの方が低くなると算出しています。Naam氏によると、再生可能エネルギーを用いた発電における第2段階から第3段階への移行は、第1段階から第2段階への移行よりも迅速に発生するとのこと。第2段階の時点で、再生可能エネルギーによる発電は既存の化石燃料を用いた発電と同等の競争力を手にしており、競争力のある市場における進歩のスピードは非常に速いとNaam氏は述べています。


◆4:成長が停滞する段階
第3段階を過ぎれば、後は世界中に広まっていくだけにも思える再生可能エネルギーによる発電ですが、Naam氏はやがて再生可能エネルギーによる発電が課題に直面するかもしれないと指摘。発電にうってつけの場所が枯渇したり、季節による発電量の変動だったり、エネルギーを効率的に貯蔵する手段がなかったりといった問題は、一時的に再生可能エネルギーに対する逆風となるかもしれません。

しかし、これらの問題が大きくなるのは非常に遠い未来だそうで、太陽光発電が世界の発電量に占める割合が20~30%、風力発電が40%を超えたころになるとNaam氏は考えています。記事作成時点では、太陽光発電が世界の発電量に占める割合は2%ほど、風力発電は6%ほどであり、第4段階に至るまでにはかなりの時間がかかるとのこと。そのため、問題が表面化する前に解決策が生み出される可能性も低くないとNaam氏は考えています。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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