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ドイツが2038年までに84基の石炭火力発電所すべてを停止し、再生可能エネルギーに置き換えていくことに

by Diana Parkhouse

世界最大の石炭消費国のひとつであるドイツが、2038年までに国内にある84基の石炭火力発電所すべてを閉鎖する予定であることが明らかになりました。この報道はヨーロッパ最大の国のひとつが近年問題視されている二酸化炭素排出量の削減にこれまでよりも大きな力を注いでいることの表れであり、他国にも大きな影響をおよぼすものとみられます。

Germany to close all 84 of its coal-fired power plants, will rely primarily on renewable energy - Los Angeles Times
https://www.latimes.com/world/europe/la-fg-germany-coal-power-20190126-story.html

Germany should phase out coal use by 2038: commission | ABS-CBN News
https://news.abs-cbn.com/business/01/27/19/germany-should-phase-out-coal-use-by-2038-commission

ドイツは国内で使用される電力の40%を石炭火力発電でまかなっている、世界有数の石炭消費国のひとつです。そのドイツの政府委員会が、温室効果ガス削減に関する国際的な取り決めを守るために、2038年までに国内で稼働中の石炭火力発電所をすべて閉鎖することで合意したことが明らかになっています。なお、政府委員会による合意がなされたことで、今後はドイツ政府の正式決定が待たれることとなります。


石炭火力発電所の閉鎖について明らかにした政府委員会のロナルド・ポファラ委員長は、ベルリンで行われた記者会見の中で「これは歴史的な成果です」「2038年までにドイツから石炭火力発電所がなくなります」と語り、約7カ月にわたって論争が繰り広げられてきた「石炭火力発電所の閉鎖」がついに決定したことに喜びを示しています。

石炭火力発電所の閉鎖により大きな影響を受けることとなる地域に対しての支援も計画されており、総額約450億ドル(約4兆9000億円)もの補助金が投入される予定です。ただし、石炭火力発電所の閉鎖により大きな打撃を受けることとなる4つの州の政府は、合計680億ドル(約7兆4000万円)の補助金を求めており、今回の政府委員会の合意には落胆の意を示しているとのこと。

ドイツ経済研究で働くエネルギー経済学の教授であるクラウディア・ケンフェルト氏は、「ドイツが気候変動問題に真剣に取り組もうとしていることは、世界にとっても重要なサインとなります。石炭に大きく依存している巨大な先進国がそれを止めようとしているわけですから」と語っています。

by Nick Nice

ドイツでは日本で2011年に起きた福島第一原子力発電所事故を受け、2022年までにすべての原子力発電所を閉鎖することが既に決定済みです。原子力発電所の停止を発表した当初、ドイツ国内の多くの企業から「外国の競争相手に対して競争力を失うことにつながる」と、厳しい批判の声が飛び交いました。また、主要な工業関連ビジネスがドイツ国内から撤退することにつながるのではとも推測され、既存の「環境に悪いが低コストな発電所」を「環境には良いが高コストな発電所」に置き換えることは一部から問題視され続けていました。しかし、2019年1月時点でドイツでは国内に存在する19基の原子力発電所のうち12基が完全に閉鎖されており、原子力発電所の閉鎖は順調に進んでいるといえます。

原子力発電所と同じく石炭火力発電所をすべて閉鎖することは、ドイツが2038年までに国の電力の65~80%を再生可能エネルギーでまかなうようになるということを意味します。なお、ドイツでは2018年に再生可能エネルギーが石炭由来の発電量を上回っており、国内で消費される電力の41%を再生可能エネルギーでまかなうことに成功しています。

ただし、ドイツでは公共事業と労働組合が石炭火力発電所の維持を強く支持しており、原子力発電所の閉鎖が決まった際には石炭火力発電所の数を増やす計画さえ登場しました。石炭産業に直接依存する労働者の数は約2万人、間接的に結び付く労働者の数は4万人と試算されており、石炭火力発電所を閉鎖するとなればこれらの労働力をどうするかという問題も浮かび上がってきます。

by Jackson Jost

ドイツは長らく気候変動に関する取り組みにおける世界的リーダーとしての地位を築いてきました。ドイツを含む世界の約200カ国が2015年に結んだ気候変動についての国際協定「パリ協定」には、世界の平均気温上昇を「2度未満」に抑えるための温室効果ガス排出削減に関する複数の目標が設定されています。ケンフェルト氏は石炭火力発電所の閉鎖が成功すれば、ドイツは2030年までに二酸化炭素レベルを1990年の数値から55%、2050年までには80%削減するという目標を達成できると語っています。

なお、ドイツにおける石炭火力発電所の閉鎖計画では、2022年までに12.5GWの発電量をまかなっている石炭火力発電所の4分の1を閉鎖することが求められており、これが計画通り行われれば最初の3年で約24基が閉鎖されることとなります。その後、2030年までに石炭火力発電所の数は約8基にまで減少し、計画が上手く進めば完全閉鎖を2035年までに完了させることも可能という計画となっています。

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in メモ, Posted by logu_ii

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