サイエンス

太陽光を利用して汚染水を迅速に飲料水に変える超高速殺菌剤が誕生、世界人口の30%が救われる革命的進歩


スタンフォード大学とSLAC国立加速器研究所の科学者が、太陽光エネルギーを用いて水媒介性感染症の原因になる細菌を殺す消毒剤を開発しました。この消毒剤は低コストかつリサイクル可能なので、安全な飲料水が利用可能な状態にない20億人の人々を助けるものとなる可能性があります。

Solar-driven efficient heterogeneous subminute water disinfection nanosystem assembled with fingerprint MoS2 | Nature Water
https://doi.org/10.1038/s44221-023-00079-4


New technology uses ordinary sunlight to disinfect drinking water | Stanford News
https://news.stanford.edu/2023/05/18/new-technology-uses-ordinary-sunlight-disinfect-drinking-water/


水を消毒するための技術としては、有毒な副産物が発生する化学物質を用いる方法や、比較的時間がかかり電源も必要な紫外線を用いる方法などがあります。

スタンフォード大学とSLAC国立加速器研究所の科学者たちが新たに開発したのは、無害な金属粉末を用いた方法です。


粉末は酸化アルミニウム、硫化モリブデン、銅、酸化鉄からなり、太陽からの紫外線と可視光の両方を吸収することで機能します。論文著者の1人・Yi Cui氏によれば、材料は少量でよく、また安価で、希少でもないとのこと。

この粉末を水に混ぜて太陽光に当てると、過酸化水素ヒドロキシルラジカルが生成されます。過酸化水素とヒドロキシルラジカルは、細菌の細胞膜に深刻なダメージを与え、細菌を速やかに死滅させます。

一方で、過酸化水素とヒドロキシルラジカルは酸化させる細菌が見つからない場合、水と酸素に分解されて、数秒でなくなってしまいます。


論文の共同著者であるBofei Liu氏によると、スタンフォード大学のキャンパス内で、実際に汚染水に粉末を混ぜて太陽光に当てたところ、細菌は60秒以内に死滅したとのこと。

さらに、殺菌に使用した後の粉末は普通の磁石で集めることが可能。実際に、同じ粉末を何度も集めることで、汚染水のサンプルを30種類処理したとのこと。

この粉末は、UVランプで殺菌を行っている廃水処理施設でも有用である可能性があります。日中なら太陽光を利用することで、紫外線よりも早く機能し、エネルギーの節約にもなると、研究に携わったCui氏は述べています。また、粉末そのものも簡単に作ることができ、1トン単位でスケールアップすることができるそうです。

今後、研究チームはウイルス、原虫、寄生虫など、水を媒介にして感染する他の病原体に対しても、この新しい粉末を試す計画だとのことです。

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in サイエンス, Posted by logc_nt

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