スポーツ選手が試合中にうなり声を出す理由とは?
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「ウウゥ~!!」「ンンーッ!!」など、試合中に大声でうなるプロスポーツ選手も大勢います。「なぜ体を動かしたりかがんだりした時にうなり声が出てしまうのか?」という疑問について、オーストラリアのカーティン大学で運動生理学・理学療法の講師を務めるアンドリュー・ラベンダーさんが考察を述べています。
Why do I grunt when I bend over?
https://theconversation.com/why-do-i-grunt-when-i-bend-over-120976
試合中にうなり声を上げるスポーツ選手も多くいます。2018年のテニスの試合では、選手の大きすぎるうなり声を観客がまね、主審が警告を出すという事件が起きています。
選手の「うなり声」が再び物議、観客がまねる事態に 全豪OP 写真8枚 国際ニュース:AFPBB News
https://www.afpbb.com/articles/-/3158838
ラベンダーさんによると、運動の際にうなり声をあげるのはスポーツの世界ではごく一般的とのこと。ラベンダーさんはうなり声をあげるスポーツマンの例として、ラファエル・ナダルとセリーナ・ウィリアムズを挙げています。
ちなみに、ラファエル・ナダルのうなり声は以下。
Rafael Nadal - Top 10 Wild Extended Grunts after a Winner - YouTube
砲丸投げや円盤投げといった競技でも、競技中に大声を出す選手がいます。
Men's Shot Put Final - World Championships Berlin 2009 - 50fps - YouTube
スポーツ選手がうなり声を上げる理由には、体を動かすメカニズムが関係しています。人は比較的重たいものを持ち上げたり、速い動きを行ったり、座った状態から立ち上がったりする事前段階として、体全体を安定させるために体幹部分に力を入れます。力を入れるためには、胴体の筋肉に力を入れて背骨を安定させるため、息を吸って肺を満たす必要があります。
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その後、ボールを投げたりパンチをしたりするような素早い動きの場合には息を素早く吐いて、バーベルを持ち上げたりソファーから降りたりするようなゆっくりした動きではゆっくりと息を吐きます。息を吐く時に声帯を動かす筋肉が活性化されると、うなり声が出ます。これが運動時にうなり声が出てしまう原理なわけです。
うなり声とスポーツの関係はよく知られているため、「うなり声を上げるほうが身体能力が上がるのでは?」という研究がおよそ20年前から行われています。2014年の調査ではうなり声をあげるとテニスのサーブの威力が上がることが示されており、2011年の調査ではうなり声は握力を強化することがわかっています。しかし一方で、1999年に行われた調査によると、うなり声をあげてもウェイトトレーニングの一種である「デッドリフト」には効果がないことも判明しています。
By Zoë Reeve
ラベンダーさんはこれらの研究結果の食い違いについて「うなり声の効果があるかどうかは、運動の種類による」と分析。「ラファエル・ナダルはうなり声をあげるけど、ロジャー・フェデラーはうなり声なしでも超一流です」とコメントしています。
事実、2019年7月に開催されたウィンブルドン選手権の男子シングルス・準決勝ではロジャー・フェデラーがラファエル・ナダルを破っています。以下は当該試合の最終ポイントを巡るラリーで、奥がフェデラー、手前がナダル。フェデラーも声を出していないわけではありませんが、低く目立たない声なのがわかります。
Match Point: Roger Federer vs Rafa Nadal Wimbledon 2019 semi-final - YouTube
ちなみに、年を取るとうなり声が出やすくなってしまう理由は、ラベンダーさんによると「原因不明」。ただ、習慣的なものであり、無意識に親や友人などからコピーした学習行動の可能性があるため、「恥ずかしいので動くときに声を出したくない」という人は、努力すれば声は抑えられるとのことです。
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