空軍史上最高推力の超音速燃焼ラムジェットエンジンが誕生、流量は従来の10倍以上

by DVIDSHUB

通常のターボジェットエンジンが機能しなくなる超音速領域で高いエンジン効率を出せる「超音速燃焼ラムジェットエンジン(スクラムジェットエンジン)」の開発で、従来のエンジンの10倍のフロー(空気流量)を出せるシロモノが誕生しました。アメリカ空軍によると、スクラムジェットエンジンとして「空軍史上最高推力」だとのことです。

AFRL achieves record-setting hypersonic ground test milestone > Wright-Patterson AFB > News
https://www.wpafb.af.mil/News/Article/1925549/afrl-achieves-record-setting-hypersonic-ground-test-milestone/

Air Force Reveals Tests Of Supposed Record-Setting Scramjet Engine From Northrop Grumman - The Drive
https://www.thedrive.com/the-war-zone/29307/air-force-reveals-tests-of-supposed-record-setting-scramjet-engine-from-northrop-grumman

アメリカの空軍研究所は2019年8月5日のニュースリリースで「ノースロップ・グラマン製の新型エンジンが1万3000推進ポンドの出力を記録し、空気吸入式超音速エンジンとしての最高記録を樹立しました」と発表しました。

以下の画像は、アーノルド技術開発センターで撮影された新型エンジンの空力および推進テストユニットの写真です。

実は、1万3000推進ポンドという推進力は、ジェットエンジンとしてはそれほど強力なものではありません。例えば、ゼネラル・エレクトリックが1980年ごろに開発したターボファンエンジンであるF110エンジンは3万推進ポンドほどの推力を持っています。

今回のエンジンの革新性は、超音速で動作するスクラムジェットエンジンでこのクラスの推進力を実現したという点にあります。

スクラムジェットエンジンとは、自力で大気圏離脱・再突入を行うスペースプレーンなどのエンジンとして開発されているラムジェットエンジンの一種。「超音速燃焼(Supersonic Combustion)ラムジェットエンジン」を略したもの。ラムジェットエンジンが、吸入した超音速の空気を圧縮して亜音速に減速したあと燃焼させるのに対し、スクラムジェットエンジンでは超音速の空気をそのまま燃焼させます。

by Emoscopes

スクラムジェットエンジンは構造自体は単純なものの、高高度の特殊な環境で動作することが求められるため、大きな推力を得るためにはクリアしなければならない技術的な課題が多く存在していました。たとえば、スクラムジェットエンジン試験機・X-51に搭載されるエンジンの推力は400～1000推進ポンドだったことからも、1万3000推進ポンドという推進力がいかに大きなものかが分かります。

B-52爆撃機に懸架されたX-51A。

by U.S. Air Force

また、空軍研究所は「マッハ4以上の条件下で問題なく動作した」と述べていますが、自動車関連技術などを扱うメディアThe Driveは「このタイプの極超音速エンジンは通常マッハ5以上で作動するもの」と説明し、新型エンジンが通常より極端な環境下でのテストにクリアしている可能性があると指摘しています。

空軍研究所の航空宇宙技術者のトッド・バーホースト氏は「世界最大の炭化水素燃料スクラムジェットの最初のテストが成功して、とても大きな充実感を覚えています。X-51の10倍のフローを持つ新しいエンジンにより、新しいクラスのスクラムジェット搭載機が実現可能になるでしょう」と述べました。