牛乳の賞味期限を従来の4倍に伸ばす新技術の実用化に科学者が成功
By Pixabay
牛乳の新たな低温殺菌方法が研究者によって実用化され、従来の低温殺菌方法と比較して牛乳の賞味期限が4倍に伸びたと発表されました。ニュースメディアのQuartzによると、今回実用化された新技術のもととなったアイデアは冷戦下のソ連で開発されたものだそうです。
The effect of a novel low temperature-short time (LTST) process to extend the shelf-life of fluid milk | SpringerPlus | Full Text
https://springerplus.springeropen.com/articles/10.1186/s40064-016-2250-1
New technology quadruples milk shelf life in Puerto Rico — Quartz
https://qz.com/1683974/new-technology-quadruples-milk-shelf-life-in-puerto-rico/
プエルトリコの酪農会社Tres Monjitasは、次世代の低温殺菌技術を開発するMillisecond Technologiesと共同で、牛乳の賞味期限を4倍にする新たな低温殺菌方法を開発しました。2社が共同開発した低温殺菌方法とは、牛乳に圧力を加えながら低温殺菌を行うというもの。Millisecond Technologiesの技術部主任であるフィル・フレチェット氏によると、液体の牛乳に圧力を加えることにより、雑菌などの微生物を液滴の外縁側に押しやることが可能になり、低温殺菌が効率化されるとのこと。
この技術は2016年に発表されたアメリカ・インディアナ州パデュー大学の研究を元にしていますが、Quartzによると、パデュー大学の研究はソビエト連邦が冷戦時代に開発したアイデアを元にしているとのこと。冷戦における厳しい資金繰りのために研究を停止させられたソビエト連邦の研究チームは、新たな研究の場を求めて渡米することを選択。渡米したメンバーがアメリカでパデュー大学と共同で研究を継続し、今回の技術開発につながったそうです。
By Chalabala
パデュー大学の論文によると、この低温殺菌技術は牛乳の劣化を引き起こすバクテリアを効率的に殺すそうで、牛乳の賞味期限は最大で57日間にまで伸びたそうです。従来の低温殺菌技術で殺菌した牛乳の賞味期限は14日とのことで、新技術で殺菌した牛乳の方が4倍も長持ちします。パデュー大学の研究チームはブラインドテストによる牛乳の味の調査も行っており、新型殺菌技術による牛乳と通常の低温殺菌牛乳に味の差はなかったと記しています。
By Engin Akyurt
Tres Monjitasはこの新技術を活用した牛乳を2019年10月に発売する予定で、この牛乳の賞味期限は40日と設定される予定。Tres Monjitasはアメリカ領 ヴァージン諸島からこの新たな牛乳を販売開始して、最終的にはドミニカ共和国全域での販路を拡大する予定です。
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