大人に踏まれても壊れないゴキブリのような耐久力を持つ超薄型ロボットが開発される

ゴキブリといえば信じられないほどの生命力を持ち、小さな隙間から家の中に入り込んでくる困りもの。そんなゴキブリのような耐久性と機動性を兼ね備えた薄型ロボットが開発され、実際に動く様子のムービーも公開されています。

Insect-scale fast moving and ultrarobust soft robot | Science Robotics
https://robotics.sciencemag.org/content/4/32/eaax1594

You can't squash this roach-inspired robot
https://techxplore.com/news/2019-07-roach-inspired-robot.html

カリフォルニア大学バークレー校や清華-UCバークレー校深セン学院の研究者らのチームは、新たな昆虫サイズの薄型ロボットを開発しました。このロボットは切手ほどのサイズであり、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)という圧電性を持つ素材の薄いシートからできています。

圧電性のある材料は、電圧がかかると材料が膨張または収縮するという点が特徴的です。そのため、全体を伸縮性のポリマーで覆われているこのロボットも、電圧がかかるとシート全体が伸縮するとのこと。研究チームはこのPVDF製シートに「足」をくっつけることで、伸縮するたびに小さく跳ねて前方に進むロボットを開発しました。

実際に研究チームが開発したロボットが動く様子は、以下のムービーで見ることができます。

This robot has some eerie similarities to cockroaches - YouTube

地面の上をカサカサと移動するのは、カリフォルニア大学の研究チームが開発したロボット。薄型のシートに細いワイヤーがつながった見た目をしています。

上から人の靴が現れて……

ロボットを踏み潰してしまいました。しかし、このロボットは人間に踏み潰されても大丈夫なレベルの耐久性を持っているとのこと。

次は、体重計の上をカサカサと移動するロボットを……

また人が踏み潰します。

そのまま体重をかけると、体重計のパネルには59.5kgとの表示。大人1人ほどの体重がロボットにかかっています。

男性が足を離すと……

ロボットは壊れることなく、再び前進を始めました。ロボット本体の重さはわずか20～65mgしかないそうですが、実に100万倍もの重さである60kgの負荷に耐えきることが可能。

また、狭い試験管の中にロボットを置き、電圧をかけると……

少し気味が悪いほどのスピードで前進しました。このロボットは、1秒あたり最大で全長の20倍もの距離を進むことができるそうです。

さらに、前進するスピードこそ遅くなるものの、自身の6倍もの重さを持つピーナッツをのせて移動することもできます。

横からロボットが移動する様子を見ると、下部に配置された2枚の「足パーツ」があることにより、シート全体の伸縮を前進するエネルギーに変換していることがわかります。

また、試験管で道を作ってやれば、坂道を登ることもできるとのこと。

このように小さくて丈夫な上に機動性の高いロボットは、災害時の負傷者捜索や救助任務に有用だと研究チームは主張。人間や災害救助犬が入るには危険な場所へ送り込んで内部を捜索させるなど、多くの利用可能性が考えられます。

記事作成時点ではロボットに電圧を与えるため、細いワイヤーがつながっていますが、研究チームはロボットが独立して駆動できるようにバッテリーを搭載する試みを続けています。また、ガスを検出するセンサーを備えることで、潜入した場所に危険なガスがたまっていないかどうかを確かめさせることもできます。

カリフォルニア大学バークレー校で機械工学教授を務めるLiwei Lin氏は、「小さなサイズのロボットの多くは非常に壊れやすいものであり、人が踏んだら壊れてしまいます」「新たに開発されたロボットは極めて丈夫であり、人間が踏んでもまだ機能を保ち続けます」とコメント。今後は障害物などがあっても動き回れるように、研究チームはさらに改善を続けていくと述べました。