ハマグリの化石の中で発見されたガラス玉は隕石が太古の地球に衝突した証拠
500万年から1万2000年前の鮮新・更新世の地層「タミアミ層」で発見された二枚貝の化石の中から、ガラス玉のような奇妙なモノが発見されました。このガラス玉は太古の地球に隕石が衝突した証拠であると研究者たちが発表しています。
A first report of microtektites from the shell beds of southwestern Florida - Meyer - 2019 - Meteoritics & Planetary Science - Wiley Online Library
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/pdf/10.1111/maps.13299
Cosmic pearls: Fossil clams contain evidence of ancient meteorite – Florida Museum Science
https://www.floridamuseum.ufl.edu/science/fossil-clams-contain-evidence-of-ancient-meteorite/
Ethereal 'Pearls' in Fossil Clams Are Evidence of an Ancient Meteorite Hitting Earth
https://www.sciencealert.com/evidence-of-ancient-meteorite-impacts-have-been-found-in-clam-fossils
アメリカ・フロリダ州にあるタミアミ層は、鮮新・更新世の地層で、多くの化石が発見されています。この地層で発見された二枚貝の化石の中から発見されたガラス玉は、熱によって生成されるものであり、火山活動や産業活動の中で生成されるものと同じようなものだそうです。しかし、タミアミ層には火山岩が含まれておらず、付近に火山も存在していなかったと考えられています。
それではこのガラス玉はどうやって生成されたのかというと、研究者たちは地球に衝突した古代の隕石が原因ではないかと推測しています。隕石が地球に衝突した際、大気圏に突入して加熱された隕石の破片が大気中に飛び散り、これが地面に落下・冷却して微少のガラス玉(テクタイト)を生成したのではと研究者たちは考えているわけです。
二枚貝の化石の中から見つかった微少テクタイト
ハリスバーグ大学の地球科学者であるマイク・マイヤー氏は、有孔虫などの化石を収集していたところ、ハマグリの化石の中から小さなガラス玉が何度も現れるという事態に遭遇したそうです。
マイヤー氏はハマグリの化石の中から83個ものガラス玉を集めたそうですが、他の研究材料も存在していたため、このガラス玉は10年以上もただただ保管され続けてきたそうです。しかし、ついにこのガラス玉を調べるほどの時間の余裕を得て、マイヤー氏はより詳細な調査をスタートします。
ハマグリの化石から見つかったテクタイトを光学顕微鏡や走査電子顕微鏡(SEM)を用いて調べるために、マイヤー氏は小さなパッチの上にガラス玉を堆積させる必要がありました。テクタイトは非常に小さいため、つまむのが難しいそうです。このような場合、対象物を舌でなめて「のり」代わりにするという手法が多く取られるそうで、マイヤー氏もそれにならいテクタイトをぺろりとなめてパッチに積み上げていったそうです。この作業について、マイヤー氏は「私は間違えていくつかのテクタイトを食べてしまったよ」と語っています。
ハマグリの化石から見つかったテクタイトを、光学顕微鏡およびSEMを用いて撮影し、物理的性質を分析。組成を分析するために、研究チームはSEM・反射電子像・X線分光を用いたそうです。
テクタイトの物理的性質の分析結果を、火山岩や産業プロセスで生成されるガラス玉などと比較。フロリダ州に産業プロセスにより生成されたガラス玉が存在することは不可能ではありませんが、それがハマグリの化石に取り込まれる可能性は極めて低いです。ハマグリは死んだあとしばらくの間は貝殻を開いたままですが、その上に堆積物が積もり、最終的にしっかりと閉じられてしまいます。ハマグリが堆積物により埋もれるのは、人間が産業活動を始めるよりもはるかに昔の話であるため、化石の中で見つかったガラス玉が現代の技術で作られたものでないことは明らかです。
加えて、サイズや形状、化学組成も産業プロセスで生成されるガラス玉とは異なっていた模様。さらに、粒子の組成も火山から生成されるものとしてはあり得ないものだったそうです。よって、ハマグリの中で見つかったガラス玉は、宇宙から飛来した微小な隕石か、隕石が衝突して生成されたテクタイトのいずれかと考えられます。
そして、化学組成から大量にナトリウムを含んでいることが判明し、ここから微小隕石である可能性も排除され、ガラス玉はテクタイトであることが明らかになりました。なお、微小隕石にナトリウムが大量に含まれない理由は、隕石が大気圏に侵入した際に、表面が過熱されほとんどのミネラルは蒸発してしまうためだそうです。
なお、ハマグリの中から発見されたテクタイトには多くのナトリウムが含まれていたため、太古の昔に地球に衝突した隕石は、岩塩鉱床や海の近くに落下したものと推測されています。
・関連記事
6600万年前に小惑星が地球に衝突し恐竜が絶滅した際の化石が発見される - GIGAZINE
「ハリウッドのセレブが恐竜の化石を買いあさるために古生物研究が進まない」と学者が規制を要求 - GIGAZINE
化石をわずか1日で作れる方法が見つかる - GIGAZINE
「私たちが化石になる方法」について専門家たちがレクチャー - GIGAZINE
・関連コンテンツ