サイエンス

「タンパク質から音楽を創り出す」という研究が進行中

By Rawpixel

タンパク質の分子構造から音楽を創り出し、得られた知見をニューラルネットワークを使って解析し、AIによって新たなタンパク質を創り上げるという研究がMITで行われています。

A Self-Consistent Sonification Method to Translate Amino Acid Sequences into Musical Compositions and Application in Protein Design Using Artificial Intelligence | ACS Nano
https://pubs.acs.org/doi/pdf/10.1021/acsnano.9b02180

Amino acids make beautiful music to design novel protein structures | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2019/06/amino-acids-make-beautiful-music-to-design-novel-protein-structures/

アメリカ科学協会による今回の研究の解説ムービーがこれ。

Making Music from Proteins - Headline Science - YouTube


実際に不溶性のタンパク質の一種であるアミロイドから生成したという曲が以下。


卵白などに含まれるリゾチームから生成された音や、複数のタンパク質を基に機械学習によって生成された音を組み合わせて作ったという「楽曲」はこんな感じ。


MITの建設環境工学科マーカス・J・ビューラー学科長率いる研究チームは、タンパク質の構造に関する理解を深めるため、「音」を活用しています。

タンパク質は20種類のアミノ酸が鎖状に多数連結した物質です。


研究チームは20種類のアミノ酸に、それぞれの固有振動数に基づいた「和音」と、アミノ酸分子の3D構造に基づいた「音の長さ」を割り当てました。


アミノ酸のそれぞれの音によって、アミノ酸が連結したタンパク質は「曲」として表現されるというわけです。

研究チームによると、タンパク質の分子構造の持つ「規則性」は、音楽におけるピッチ・音域・強弱法・テンポなどに似通った部分があるため、タンパク質の規則性を正しく音楽に変換すれば、音楽からタンパク質の構造やメカニズム、特性などを理解することが可能とのこと。


研究チームはタンパク質と音の類似性を厳密にするために、ニューラルネットワークを用いたAIを活用しているとのこと。さらに、このAIは得られた知識から、「新しいタンパク質」を設計することも可能になったそうです。新しいタンパク質は今までに知られていないものながら、タンパク質特有のパターンを表現できていたとのこと。


タンパク質の構造についての研究はいまだ発展途上であり、まだまだ可能性が残されている分野といえます。一例を挙げると、クモやカイコが作り出すシルクタンパク質抗張力がほぼ鋼鉄と同じ強さで、防水性や伸張性も兼ね備えた素材です。シルクタンパク質などが「このような性質を持つ理由」を構造から理解できれば、他の物質に技術が転用可能になる可能性があります。研究チームはこのようなタンパク質の構造の理解のため、音楽を活用しようとしているわけです。

また、研究チームはアミノ酸の音で「作曲」ができるAndroidアプリも開発しました。


このアプリはGoogle Playで公開されています。

Amino Acid Synthesizer - Google Play のアプリ
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.synth.aminoacidplayer

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in サイエンス,   動画,   アート, Posted by darkhorse_log

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