GoogleがAIでタンパク質の結晶を発見するシステムを開発、新薬開発のブレイクスルーに期待
Googleの人工知能(AI)を研究するBrain Teamは、デューク大学の研究者と協力して、AIを利用することでタンパク質の結晶化実験を自動化するシステムを開発したと発表しました。
Google AI Blog: Automating Drug Discoveries Using Computer Vision
https://ai.googleblog.com/2018/07/automating-drug-discoveries-using.html
Teaching a Machine to Spot a Crystal – Duke Research Blog
https://researchblog.duke.edu/2018/06/20/teaching-a-machine-to-spot-a-crystal/
タンパク質が持つ生体機能はその分子構造によって決まるため、効果的な新薬を開発するにあたって分子構造の解析が重要となります。そして、タンパク質の分子構造を解析するためには、タンパク質の結晶が必要です。ただし、タンパク質の結晶化についてはいまだ不明な部分も多く、現代の技術をもってしてもなお難しいものがあります。
by MARCO
タンパク質の結晶化の実験のうち、その準備や実験プロセスのほとんどは自動化が進んでいますが、結晶化実験の成果は人間が顕微鏡で目視確認するしかありませんでした。その場合、タンパク質結晶の発見は、実験を行う科学者の観察力と経験に依存する他なく、万が一結晶化を見逃したり見誤ったりしてしまうと、医学を進歩させるような重要な発見の機会が失われてしまう可能性すらあります。
デューク大学が率先しているMachine Recognition of Crystallization Outcomes(MARCO:結晶化成果物の機械認識)は、タンパク質結晶化の成果物をAIで自動認識することでこうしたリスクを軽減できるのではないかと考え、50万点を超えるタンパク質結晶化実験のラベル付きデータをGoogleに持ち込んで協力を要請。これを受けてGoogle Brain Teamは、深層たたみ込みニューラルネットワークによって結晶化の結果を自動分類できるシステムを開発しました。
MARCOが収集した膨大で多様的なデータを学習することで、AIはタンパク質の結晶を高い精度で視覚的に同定することができます。デューク大学のパトリック・チャーボノー教授によると、タンパク質の結晶の識別精度は、人間がおよそ85%ほどであるのに対して、Google Brain Teamによる最新のAIは95%だったとのこと。
チャーボノー教授は「タンパク質結晶の発見と分類をAIが自動的に行うことで、タンパク質結晶化の実験そのものをほぼ自動化することができるようになります。さらにタンパク質の構造解析が容易になり、新薬研究にかかる時間やコストの大幅な削減が期待できます」と語っています。
Google Brain TeamはこのAIモデルをGitHubで公開していて、Google Cloud Machine Learning(ML) Engineを利用することで、他の研究者もこのAIを自身の研究に利用できるようにしています。
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